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34.訪れる疲労
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「これで、終わり……」
結果的に、闇の魔力は全て滅ぼすことができた。
だが、相当な量に大樹は汚染されていたらしく、それなりに骨が折れる作業だった。
多大な魔力を消費したため、私の体は疲労に襲われている。
「フェルーナ殿、大丈夫か?」
「あっ……」
倒れかかった私の体を、アグナヴァン様がゆっくりと受け止めてくれた。
少し恥ずかしかったが、私は彼に体を預ける。正直、結構辛かったからだ。
「どうやら、かなりの魔力を消費したようですね……」
「え、ええ……先生の方は、大丈夫ですか?」
「私は、結界を張っているだけでしたからね。まあ、もちろん、多少は疲れていますが」
そんな私の元に、先生がやって来た。
彼の顔にも疲労は見える。長時間結界を張っていたのだから、それは当然のことだ。
「さて、アグナヴァン様、申し訳ありませんが、フェルーナ殿を客室にでも連れて行っていただけますか? 私は、念のためにこの大樹がどうなっているかを分析しますから」
「分析?」
「大樹の魔力が、正しく国に伝わっているかどうかを確かめるのです。もしかしたら、根の一部などに異常があるかもしれません。フェルーナ殿の活躍で、闇の魔力は払えましたが、起こってしまった結果などは変わりません。完全に破壊された部分があるなら、それは確かめておくべき事柄です」
先生の言っている通り、大樹の分析は必要なことだろう。
大樹の一部が完全に破壊されている場合、今まで通りとはいかない。それは、確認しておかなければ今後困ることだ。
「パストマン教授、あなたも休むべきでしょう」
「私は問題ありませんよ。フェルーナ嬢に比べれば、疲労していませんから」
「その顔色で、大丈夫だとは思えません。三十分でもいい。休むべきです」
「おやおや……」
アグナヴァン様は、先生のことも心配していた。
彼は、中々に心配性である。それは、私だけではなく全ての人に向けられるものであるようだ。
「スウェンド王国の王子様は、慎重派のようですね……」
「む?」
「ええ、実はそうなんです」
「フェルーナ殿?」
私と先生は、顔を見合わせて笑い合った。
アグナヴァン様は、本当に優しい人である。それを実感したからだ。
「仕方ありません。ここは、あなたに従うとしましょう。私も倒れてしまう訳にはいきませんからね」
「え、ええ……」
先生の言葉に、アグナヴァン様は少し腑に落ちていないといったような表情をしていた。
恐らく、先程の笑みの理由がわかっていないからだろう。
こうして、私達は大樹の浄化を成功したのだった。
結果的に、闇の魔力は全て滅ぼすことができた。
だが、相当な量に大樹は汚染されていたらしく、それなりに骨が折れる作業だった。
多大な魔力を消費したため、私の体は疲労に襲われている。
「フェルーナ殿、大丈夫か?」
「あっ……」
倒れかかった私の体を、アグナヴァン様がゆっくりと受け止めてくれた。
少し恥ずかしかったが、私は彼に体を預ける。正直、結構辛かったからだ。
「どうやら、かなりの魔力を消費したようですね……」
「え、ええ……先生の方は、大丈夫ですか?」
「私は、結界を張っているだけでしたからね。まあ、もちろん、多少は疲れていますが」
そんな私の元に、先生がやって来た。
彼の顔にも疲労は見える。長時間結界を張っていたのだから、それは当然のことだ。
「さて、アグナヴァン様、申し訳ありませんが、フェルーナ殿を客室にでも連れて行っていただけますか? 私は、念のためにこの大樹がどうなっているかを分析しますから」
「分析?」
「大樹の魔力が、正しく国に伝わっているかどうかを確かめるのです。もしかしたら、根の一部などに異常があるかもしれません。フェルーナ殿の活躍で、闇の魔力は払えましたが、起こってしまった結果などは変わりません。完全に破壊された部分があるなら、それは確かめておくべき事柄です」
先生の言っている通り、大樹の分析は必要なことだろう。
大樹の一部が完全に破壊されている場合、今まで通りとはいかない。それは、確認しておかなければ今後困ることだ。
「パストマン教授、あなたも休むべきでしょう」
「私は問題ありませんよ。フェルーナ嬢に比べれば、疲労していませんから」
「その顔色で、大丈夫だとは思えません。三十分でもいい。休むべきです」
「おやおや……」
アグナヴァン様は、先生のことも心配していた。
彼は、中々に心配性である。それは、私だけではなく全ての人に向けられるものであるようだ。
「スウェンド王国の王子様は、慎重派のようですね……」
「む?」
「ええ、実はそうなんです」
「フェルーナ殿?」
私と先生は、顔を見合わせて笑い合った。
アグナヴァン様は、本当に優しい人である。それを実感したからだ。
「仕方ありません。ここは、あなたに従うとしましょう。私も倒れてしまう訳にはいきませんからね」
「え、ええ……」
先生の言葉に、アグナヴァン様は少し腑に落ちていないといったような表情をしていた。
恐らく、先程の笑みの理由がわかっていないからだろう。
こうして、私達は大樹の浄化を成功したのだった。
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