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4.入念な策略

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 牢屋に入れられた私は、見張りの兵士から話を聞いてみた。
 一体、どうしてこんなことになっているのか。それが知りたいと言ったら、兵士は意外にもすんなりと教えてくれた。

 どうやら、ホーネリアはとある主張をしているらしい。
 それは、私が悪魔の力を使い、彼女から魔力を奪ったという主張である。

 そんな素っ頓狂な主張は、にわかには信じられないことだろう。
 だが、その主張を証明するかのように、私の体からは魔力がなくなっており、ホーネリアの体には魔力が満ち溢れていた。
 彼女は、私から魔力を取り戻したと言っているそうだ。

 とはいえ、それだけでホーネリアの主張が通るはずはない。
 なぜなら、その理論に当てはめれば、彼女が私の魔力を奪ったという事象も考えられるからである。

「その点も既に、調査は終わっている。我々は、お前の自室から一冊の本を見つけた。専門家によると、それは魔導書であるらしい」
「魔導書……」
「その魔導書には、しっかりと記されていたさ。魔力を奪う方法がな……ふん、上手くやったつもりのようだが、油断したな」

 兵士の言葉に、私は考えることになった。
 魔導書というのは、魔法に関する事柄が記された本だ。そういった類の本は、確かに自室に置いてある。
 しかし、今回の件のような事象を引き起こせる魔法が書いてある本を私は知らない。つまり、私の部屋にそんな本はないということになる。

「それをホーネリアが置いたとは、考えられませんか?」
「なんだと?」
「彼女には、私と会ってから夕食の時間まで空白の時間があります。その時間内に、本を私の部屋に置いた。それも考えられるはずです」
「残念ながら、ホーネリア様はその時間、グラッセン様に事情を説明していた。彼女のアリバイは証明されている」
「なるほど……」

 今日、彼女が私の部屋に魔導書を忍ばせた。その可能性は、排除されているらしい。
 これは、思っていたよりも入念に計画が組み立てられていたと考えるべきだろう。

「まあ、どの道、お前はこの国にいられなくなる」
「いられなくなる……?」
「まだ正式に決定していないが、お前には国外追放の判決が下されるはずだ。まあ、命を奪われないだけ、感謝するべきだな。これも、ホーネリア様の計らいらしい」
「国外追放……」

 兵士は、私に対して下卑た笑みを浮かべていた。
 しかし、そんな彼のことは気にせず考える。これから、私に何が起こるのかということを。

 国外追放、それはこの国においてかなり厳しい罰だ。
 広大な森に放り出されて、国に戻ることが許されない。それが、国外追放の内容だ。
 そうなった場合、ほとんどの者は朽ち果てることになる。魔物が闊歩する森で生きていくことはまず不可能であり、祖国はもちろん、他国にも罪人であるため受け入れられない可能性が高いからだ。

「……失礼、手紙を出させてもらえるかしら?」
「なんだ? 弁護人でも呼ぶつもりか?」
「捕まっているとはいえ、その程度の自由は許されるはずです。罪人であっても、両親や友人に最後の手紙を書くことは許される。そうでしょう?」
「まあ、なんでもいいか」

 兵士は、私の要請を受け入れてくれた。
 これで、少しだけ希望が見えてきた。この状況を覆すのが難しい以上、私はこれからの対策をするべきだろう。
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