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21.王城を訪ねて
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私は再び、王城を訪ねていた。
私とアドルヴ殿下との婚約について、話し合うためである。
といっても、特に約束をしている訳ではない。お父様と伯父様はまだ話し合っているらしく、明確な答えが出た訳ではなさそうだからだ。
今日訪ねてみたのは、アドルヴ殿下の様子を確かめたかったからだ。
ただ、彼本人には会うことができそうにない。代わりに会えたのは、第四王子のエヴァンスと第一王女であり末っ子のオリヴィアだ。
「アドルヴお兄様が婚約について、どのような様子か、ですか?」
「ええ、エヴァンスは何か聞いていない?」
「もちろん、婚約の話についてはお聞きしています。アドルヴお兄様は、それについても対処しているのだとは思います。最近は何やら忙しくしていますから。どうやらイーヴェル兄上も協力しているようです」
「イーヴェル殿下も……」
第四王子であるエヴァンスは、ルドールとよく似て幼いながらも真面目な子である。
といっても、まだまだ甘い所があるといえるだろう。兄達の行動を割と赤裸々に伝えている所などは特に。
「あ、そういえば、この間リルルナ姉様が遊びに来ていたよ」
「リルルナが?」
「うん。なんか怖い顔して」
「それは割といつもの顔であるような気もしますけれどね……」
第一王女であるオリヴィアは、王族兄弟の中でも紅一点の末っ子だ。そういった事情もあってから、伯父様が特に甘やかしている。
といっても、特に驕ったりはせずに真っ直ぐに育っているといえるだろう。その辺りは叔母様や兄達の努力の賜物といえる。
そんな彼女の証言は、気になる所だ。
リルルナが王城を訪ねて来ていた。一体どうしたのだろうか。
もしかしたら、婚約の件でアドルヴ殿下と直接話し合ったとか、そういうことかもしれない。あの子ならば、そのくらいのことはしそうだ。
「エヴァンスお兄様、ひどい。リルルナ姉様は、すごく優しいよ?」
「そうかな? 僕は怖いと思っているんだけれど……」
私が色々と考えていると、二人がリルルナのことについて話し始めた。
オリヴィアの方は、妹によく懐いているようだ。彼女の根底にある優しさに、気付いているということだろう。
ただエヴァンスの方は怖がっているらしい。きっと表面上の少々刺々しい態度から、そう思うようになったのだろう。それは、仕方ないことともいえる。
「私の優しさが伝わっていませんか?」
「え?」
「エヴァンス、あなたのことを可愛がらないといけませんね……」
そんなことを考えていた私は、聞こえてきた声にひどく動揺した。
後ろを振り返って見ると、見知った顔がある。それは間違いなく、私の妹リルルナの顔だ。
そして私は、気付いた。隣にいるエヴァンスが額からとんでもない量の汗をかいているということに。
私とアドルヴ殿下との婚約について、話し合うためである。
といっても、特に約束をしている訳ではない。お父様と伯父様はまだ話し合っているらしく、明確な答えが出た訳ではなさそうだからだ。
今日訪ねてみたのは、アドルヴ殿下の様子を確かめたかったからだ。
ただ、彼本人には会うことができそうにない。代わりに会えたのは、第四王子のエヴァンスと第一王女であり末っ子のオリヴィアだ。
「アドルヴお兄様が婚約について、どのような様子か、ですか?」
「ええ、エヴァンスは何か聞いていない?」
「もちろん、婚約の話についてはお聞きしています。アドルヴお兄様は、それについても対処しているのだとは思います。最近は何やら忙しくしていますから。どうやらイーヴェル兄上も協力しているようです」
「イーヴェル殿下も……」
第四王子であるエヴァンスは、ルドールとよく似て幼いながらも真面目な子である。
といっても、まだまだ甘い所があるといえるだろう。兄達の行動を割と赤裸々に伝えている所などは特に。
「あ、そういえば、この間リルルナ姉様が遊びに来ていたよ」
「リルルナが?」
「うん。なんか怖い顔して」
「それは割といつもの顔であるような気もしますけれどね……」
第一王女であるオリヴィアは、王族兄弟の中でも紅一点の末っ子だ。そういった事情もあってから、伯父様が特に甘やかしている。
といっても、特に驕ったりはせずに真っ直ぐに育っているといえるだろう。その辺りは叔母様や兄達の努力の賜物といえる。
そんな彼女の証言は、気になる所だ。
リルルナが王城を訪ねて来ていた。一体どうしたのだろうか。
もしかしたら、婚約の件でアドルヴ殿下と直接話し合ったとか、そういうことかもしれない。あの子ならば、そのくらいのことはしそうだ。
「エヴァンスお兄様、ひどい。リルルナ姉様は、すごく優しいよ?」
「そうかな? 僕は怖いと思っているんだけれど……」
私が色々と考えていると、二人がリルルナのことについて話し始めた。
オリヴィアの方は、妹によく懐いているようだ。彼女の根底にある優しさに、気付いているということだろう。
ただエヴァンスの方は怖がっているらしい。きっと表面上の少々刺々しい態度から、そう思うようになったのだろう。それは、仕方ないことともいえる。
「私の優しさが伝わっていませんか?」
「え?」
「エヴァンス、あなたのことを可愛がらないといけませんね……」
そんなことを考えていた私は、聞こえてきた声にひどく動揺した。
後ろを振り返って見ると、見知った顔がある。それは間違いなく、私の妹リルルナの顔だ。
そして私は、気付いた。隣にいるエヴァンスが額からとんでもない量の汗をかいているということに。
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