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しおりを挟む私は、エルード様と一緒に二周目に入っていた。
シャルリナは既に休んでいるが、私はまだ走れる。後一周くらいなら、走ることができるはずだ。
「さて……実は、お前と話したいことがあるのだ」
「話したいこと?」
走りながら、エルード様は私にそう話しかけてきた。
言葉からして、私と二人きりで話したいことがあるということだろう。
もしかして、ゲルビド子爵家のことだろうか。何か進展があったのかもしれない。
「シャルリナは、お前のおかげで少しだけ変わり始めている」
「え?」
「今までのあいつなら、外には絶対に出なかっただろう。それを成し遂げられたのは、お前のおかげだ。感謝する」
「あ、いえ……」
エルード様が言ってきたのは、シャルリナのことだった。
彼女の変化が私のおかげ。そう言われても、いまいちわからない。
それは、私が来る前の彼女を知らないからなのだろう。昔の彼女をよく知らないから、変化もよくわからないのだ。
「エルード様は、シャルリナのことを本当に気にしていますね。やっぱり、兄として気になるのですか?」
「む……?」
「あ、その……なんだか、すごく厳しいですから、何か特別な理由があるのかと思って……」
いい機会なので、私はエルード様にシャルリナのことを聞いてみた。
彼は、彼女にとても厳しい。それは、兄として心配だから。自然に考えると、そういう結論になる。
だが、どうも何か事情がある気がするのだ。今まで接してきて、私はこの兄妹にそのような小さな違和感を覚えたのである。
「……あいつには、もっときちんとした貴族になってもらわなければならない。そうならないと、俺が困るのだ」
「エルード様が? 家を継いだ後、怠惰な妹がいたら、面倒だということですか?」
「いや……」
私の言葉に、エルード様は少し言葉を詰まらせた。
何か、言えないようなことがあるのだろうか。
「……お前には、話してもいいかもしれないな」
「え?」
そこで、エルード様は足を止めた。
私も、それに合わせて足を止める。彼の顔を見て、そうするべきだと思ったのだ。
きっと、彼はこれから大切な話をする。走りながらではできない話をするつもりなのだろう。
「これから俺がする話は、ラーファン家の人間なら知っていることと、ラーファン家の人間も知らないことだ。前者はともかく、後者は誰にも言わないでもらえるとありがたい」
「は、はい……」
エルード様の真剣な顔に、私はゆっくりと息をのむ。
まさか、急にこんな事態になるとは思っていなかった。穏やかな日常から、一気に重大な話になり、私はとても緊張するのだった。
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