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24.王城の様子
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私は、部屋に戻って休んでいた。
カークスお兄様から、ここに籠っているように言われている。それ自体は慣れているため、特に問題はない。
だが、外の様子が気になる。あれから一体、どうなったのだろうか。
色々と急だったため、カークスお兄様に魔法の目はつけられていない。焦っていたためか、お兄様もすぐに私の前からいなくなってしまったのだ。
『……アルネシア様、聞こえますか?』
『……ディレンさん? どうかされましたか?』
そこで私の頭の中に、ディレンさんの声が聞こえてきた。
正直な所、彼のことは頭から抜けていた。色々とあり過ぎて、気にかける余裕がなかったのである。
ただ、彼が声をあげれば私には聞こえるはずだ。ということは、ディレンさんはずっと黙ってくれていたということだ。
『現在、僕は王城にいます』
『……王城に?』
『ええ、色々とありましたから、様子を見に来たんです』
『大丈夫なんですか?』
『ええ、問題はありません。気分も大分よくなりましたから……』
ディレンさんは、あまり元気がないように思える。
恐らく、まだ本調子ではないのだろう。かなり心配だ。
『アルネシア様は、王城の様子を見られているのですか?』
『いえ、それが色々と事情があって見られていないんです』
『そうですか……それなら、僕を通して王城の様子を見てください』
『でも……』
『僕は大丈夫ですから』
『……わかりました。お願いします、ディレンさん』
私は、魔力を集中させてディレンさんとの繋がりを強くする。これで、あちらが見ている光景をこちらも見られるようになった。
王城の内部が見られるようになりながら、私はディレンさんのことを少し心配していた。問題ないとは思うが、私の魔力で彼に悪影響が出ないだろうか。
「ディレン、お前どうしてこっちに?」
「ああ、少し体調が良くなったから、何かできることはないと思ってな……」
「いや、体調不良なんだから寝てればいいじゃないか」
「だが、なんだか宿舎が騒がしくてな。何か王城であったんじゃないかと思って……」
「鼻が利くな……確かに大変なことになっている」
ディレンさんは、同期のロイドさんとそのような会話を交わした。
わかっていたことではあるが、王城の内部は大変なことになってしまっているようだ。
重要なのは、その先であるといえるだろう。私のことは、どのように言われているのだろうか。
「ゲルトンがやらかしたみたいだ。聖女様が力を披露する場で、何かをしたんだ」
「何かをした?」
「それが、まだわかっていないんだよ。わかっているのは、何かをした結果、ゲルトンは精神が壊れたらしい」
「そうか……」
ロイドさんから出てきた情報は、既に私達が知っている情報だった。
どうやら、まだ少なくとも彼には私のあれこれは伝わっていないようだ。いや、そもそもゲルトンさんが何をしたかがまだ判明していないということなのかもしれない。
カークスお兄様から、ここに籠っているように言われている。それ自体は慣れているため、特に問題はない。
だが、外の様子が気になる。あれから一体、どうなったのだろうか。
色々と急だったため、カークスお兄様に魔法の目はつけられていない。焦っていたためか、お兄様もすぐに私の前からいなくなってしまったのだ。
『……アルネシア様、聞こえますか?』
『……ディレンさん? どうかされましたか?』
そこで私の頭の中に、ディレンさんの声が聞こえてきた。
正直な所、彼のことは頭から抜けていた。色々とあり過ぎて、気にかける余裕がなかったのである。
ただ、彼が声をあげれば私には聞こえるはずだ。ということは、ディレンさんはずっと黙ってくれていたということだ。
『現在、僕は王城にいます』
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恐らく、まだ本調子ではないのだろう。かなり心配だ。
『アルネシア様は、王城の様子を見られているのですか?』
『いえ、それが色々と事情があって見られていないんです』
『そうですか……それなら、僕を通して王城の様子を見てください』
『でも……』
『僕は大丈夫ですから』
『……わかりました。お願いします、ディレンさん』
私は、魔力を集中させてディレンさんとの繋がりを強くする。これで、あちらが見ている光景をこちらも見られるようになった。
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「ディレン、お前どうしてこっちに?」
「ああ、少し体調が良くなったから、何かできることはないと思ってな……」
「いや、体調不良なんだから寝てればいいじゃないか」
「だが、なんだか宿舎が騒がしくてな。何か王城であったんじゃないかと思って……」
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「そうか……」
ロイドさんから出てきた情報は、既に私達が知っている情報だった。
どうやら、まだ少なくとも彼には私のあれこれは伝わっていないようだ。いや、そもそもゲルトンさんが何をしたかがまだ判明していないということなのかもしれない。
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