26 / 80
第17話 机の中の手紙
しおりを挟む
私とレティが、学園に入学してから、数日が経った。
残念ながら、まだ友達といえるような人もできていないが、とりあえず平和な学園生活が送れている。
「あれ?」
「お姉様? どうしたんですか?」
教室で椅子に座って、机の中を確認した私は、驚いてしまった。
机の中に、何かがあるのだ。それは、手紙のように思える。
なんとなく、それが何かは予想できた。あまり、人に見られていいものではないだろう。
「手紙ですか?」
「レ、レティ!?」
そう思っていた私だったが、レティは既に確認してしまっていた。こういう時のレティの行動は早いのだ。
手紙を見たレティは、目を丸くした後、悪戯っ子のように笑う。
「これは、恋文というやつですか? おもしろいものですね……」
「お、おもしろいものではないよ」
「あ、すみません……」
からかおうとするレティに、私は少し語気を強める。
こういうものをからかうのは、よくないことだ。そもそも、まだ中身が確定している訳ではない。
私は、レティに見えないように手紙の中身を確認する。
「……どうですか?」
「えっと……」
手紙の中身は、レティの言った通り、恋文だった。
しかも、先日ペンを拾ってあげた男子生徒からのものだ。
これは、レティに言ってもいいのだろうか。
「あの男子生徒さんからの……恋文でした」
「なるほど……」
少し考えた私だったが、結局言うことにした。
他人の気持ちを言いふらすのはよくないとは思うが、レティに相談したかった。
こういう時、どうすればいいのか、私はよくわからない。年下の妹であっても、何かアドバイスが欲しいのだ。
「ど、どうしよう?」
「どうしようも、こうしようもないですよ。答えを言ってあげればいいじゃないですか」
「あ、うん……」
レティの言葉は、至極真っ当なものだった。
確かに、答えを言えばいいのだ。とても単純なことである。
「答えは、決まっているんでしょう?」
「ま、まあ、それは……」
レティの言う通り、私の答えは決まっていた。
私には、他に憧れている人がいる。そのため、このような告白を受けるつもりなどないのだ。
だが、どのように言えばいいのだろう。
「どう言えば、いいのかな?」
「素直に言えば、いいんです。私はお兄様が大好きなので、それは受けられませんって」
「そ、そんな……」
レティの言ったことに、私は動揺する。
そんなことを言える訳はない。恥ずかしいし、人に聞かせられるようなことではないだろう。
「まあ、それは冗談として、普通に他に好きな人がいると断ればいいんじゃないですか?」
「あ、うん……」
すぐに、レティは答えをくれた。
やはり、そのまま言うのが、一番であるようだ。
「それより、問題はその人の安全です」
「あ、安全?」
「もし、このことがお兄様の耳に伝わると、どうなると思いますか?」
「えっ……?」
そこで、レティがそんなことを言ってきた。
確かに、私が告白されたことをお兄様が知ると、まずいかもしれない。
最近のお兄様は、私やレティに声をかけてくる男子にかなり敏感だ。そのことから、男子生徒に何か処罰をする可能性がある。
それは、考えすぎかもしれないが、先日のペンの件で、あそこまでなったのだ。慎重になった方が、いいかもしれない。
「確かに、最近のお兄様なら、何か処罰を下すかもしれないね」
「ええ、命はないでしょう」
「そ、そこまでではないと思うよ?」
「そうでしょうか?」
流石に、そんなことはしないと思う。酷くても、停学くらいのはずだ。いや、これも充分ひどいかもしれない。
「お姉様に告白なんて、本当に命知らずですね……」
「レティ? それだと、なんだか私が怖い人みたいだよ?」
「ああ、すみません」
どうやら、レティは本当にお兄様がひどいことをすると思っているようだ。
レティの中では、お兄様はどう映っているんだろう。
「とにかく、秘密にしてね、レティ」
「はい、もちろんです。私も血は見たくないですからね」
とにかく、このことはお兄様に知られてはならないだろう。
あまり秘密にするのは良くないが、安全のために仕方ない。
「まあ、私達が何も言わなければいいんですから、そんなに心配する必要もないと思いますけどね……」
「そ、そうだよね。まさか、お兄様がどこかから見ている訳ではないだろうし……」
「ええ、いくら気持ちの悪いお兄様でも、そんなストーカーみたいなことはしませんよ」
ただ、私達が言わなければ、お兄様に知られることはないはずだ。
つまり、ここは私が断れば、それで話は終わる。何も、問題はないだろう。
こうして、私は告白を断ることにするのだった。
残念ながら、まだ友達といえるような人もできていないが、とりあえず平和な学園生活が送れている。
「あれ?」
「お姉様? どうしたんですか?」
教室で椅子に座って、机の中を確認した私は、驚いてしまった。
机の中に、何かがあるのだ。それは、手紙のように思える。
なんとなく、それが何かは予想できた。あまり、人に見られていいものではないだろう。
「手紙ですか?」
「レ、レティ!?」
そう思っていた私だったが、レティは既に確認してしまっていた。こういう時のレティの行動は早いのだ。
手紙を見たレティは、目を丸くした後、悪戯っ子のように笑う。
「これは、恋文というやつですか? おもしろいものですね……」
「お、おもしろいものではないよ」
「あ、すみません……」
からかおうとするレティに、私は少し語気を強める。
こういうものをからかうのは、よくないことだ。そもそも、まだ中身が確定している訳ではない。
私は、レティに見えないように手紙の中身を確認する。
「……どうですか?」
「えっと……」
手紙の中身は、レティの言った通り、恋文だった。
しかも、先日ペンを拾ってあげた男子生徒からのものだ。
これは、レティに言ってもいいのだろうか。
「あの男子生徒さんからの……恋文でした」
「なるほど……」
少し考えた私だったが、結局言うことにした。
他人の気持ちを言いふらすのはよくないとは思うが、レティに相談したかった。
こういう時、どうすればいいのか、私はよくわからない。年下の妹であっても、何かアドバイスが欲しいのだ。
「ど、どうしよう?」
「どうしようも、こうしようもないですよ。答えを言ってあげればいいじゃないですか」
「あ、うん……」
レティの言葉は、至極真っ当なものだった。
確かに、答えを言えばいいのだ。とても単純なことである。
「答えは、決まっているんでしょう?」
「ま、まあ、それは……」
レティの言う通り、私の答えは決まっていた。
私には、他に憧れている人がいる。そのため、このような告白を受けるつもりなどないのだ。
だが、どのように言えばいいのだろう。
「どう言えば、いいのかな?」
「素直に言えば、いいんです。私はお兄様が大好きなので、それは受けられませんって」
「そ、そんな……」
レティの言ったことに、私は動揺する。
そんなことを言える訳はない。恥ずかしいし、人に聞かせられるようなことではないだろう。
「まあ、それは冗談として、普通に他に好きな人がいると断ればいいんじゃないですか?」
「あ、うん……」
すぐに、レティは答えをくれた。
やはり、そのまま言うのが、一番であるようだ。
「それより、問題はその人の安全です」
「あ、安全?」
「もし、このことがお兄様の耳に伝わると、どうなると思いますか?」
「えっ……?」
そこで、レティがそんなことを言ってきた。
確かに、私が告白されたことをお兄様が知ると、まずいかもしれない。
最近のお兄様は、私やレティに声をかけてくる男子にかなり敏感だ。そのことから、男子生徒に何か処罰をする可能性がある。
それは、考えすぎかもしれないが、先日のペンの件で、あそこまでなったのだ。慎重になった方が、いいかもしれない。
「確かに、最近のお兄様なら、何か処罰を下すかもしれないね」
「ええ、命はないでしょう」
「そ、そこまでではないと思うよ?」
「そうでしょうか?」
流石に、そんなことはしないと思う。酷くても、停学くらいのはずだ。いや、これも充分ひどいかもしれない。
「お姉様に告白なんて、本当に命知らずですね……」
「レティ? それだと、なんだか私が怖い人みたいだよ?」
「ああ、すみません」
どうやら、レティは本当にお兄様がひどいことをすると思っているようだ。
レティの中では、お兄様はどう映っているんだろう。
「とにかく、秘密にしてね、レティ」
「はい、もちろんです。私も血は見たくないですからね」
とにかく、このことはお兄様に知られてはならないだろう。
あまり秘密にするのは良くないが、安全のために仕方ない。
「まあ、私達が何も言わなければいいんですから、そんなに心配する必要もないと思いますけどね……」
「そ、そうだよね。まさか、お兄様がどこかから見ている訳ではないだろうし……」
「ええ、いくら気持ちの悪いお兄様でも、そんなストーカーみたいなことはしませんよ」
ただ、私達が言わなければ、お兄様に知られることはないはずだ。
つまり、ここは私が断れば、それで話は終わる。何も、問題はないだろう。
こうして、私は告白を断ることにするのだった。
21
お気に入りに追加
1,777
あなたにおすすめの小説
拾った宰相閣下に溺愛されまして。~残念イケメンの執着が重すぎます!
枢 呂紅
恋愛
「わたしにだって、限界があるんですよ……」
そんな風に泣きながら、べろべろに酔いつぶれて行き倒れていたイケメンを拾ってしまったフィアナ。そのまま道端に放っておくのも忍びなくて、仏心をみせて拾ってやったのがすべての間違いの始まりだった――。
「天使で、女神で、マイスウィートハニーなフィアナさん。どうか私の愛を受け入れてください!」
「気持ち悪いし重いんで絶対嫌です」
外見だけは最強だが中身は残念なイケメン宰相と、そんな宰相に好かれてしまった庶民ムスメの、温度差しかない身分差×年の差溺愛ストーリー、ここに開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
虐げられていた黒魔術師は辺境伯に溺愛される
朝露ココア
恋愛
リナルディ伯爵令嬢のクラーラ。
クラーラは白魔術の名門に生まれながらも、黒魔術を得意としていた。
そのため実家では冷遇され、いつも両親や姉から蔑まれる日々を送っている。
父の強引な婚約の取り付けにより、彼女はとある辺境伯のもとに嫁ぐことになる。
縁談相手のハルトリー辺境伯は社交界でも評判がよくない人物。
しかし、逃げ場のないクラーラは黙って縁談を受け入れるしかなかった。
実際に会った辺境伯は臆病ながらも誠実な人物で。
クラーラと日々を過ごす中で、彼は次第に成長し……そして彼にまつわる『呪い』も明らかになっていく。
「二度と君を手放すつもりはない。俺を幸せにしてくれた君を……これから先、俺が幸せにする」
訳あり冷徹社長はただの優男でした
あさの紅茶
恋愛
独身喪女の私に、突然お姉ちゃんが子供(2歳)を押し付けてきた
いや、待て
育児放棄にも程があるでしょう
音信不通の姉
泣き出す子供
父親は誰だよ
怒り心頭の中、なしくずし的に子育てをすることになった私、橋本美咲(23歳)
これはもう、人生詰んだと思った
**********
この作品は他のサイトにも掲載しています
【完結】貧乏男爵家のガリ勉令嬢が幸せをつかむまでー平凡顔ですが勉強だけは負けませんー
華抹茶
恋愛
家は貧乏な男爵家の長女、ベティーナ・アルタマンは可愛い弟の学費を捻出するために良いところへ就職しなければならない。そのためには学院をいい成績で卒業することが必須なため、がむしゃらに勉強へ打ち込んできた。
学院始まって最初の試験で1位を取ったことで、入学試験1位、今回の試験で2位へ落ちたコンラート・ブランディスと関わるようになる。容姿端麗、頭脳明晰、家は上級貴族の侯爵家。ご令嬢がこぞって結婚したい大人気のモテ男。そんな人からライバル宣言されてしまって――
ライバルから恋心を抱いていく2人のお話です。12話で完結。(12月31日に完結します)
※以前投稿した、長文短編を加筆修正し分割した物になります。
※R5.2月 コンラート視点の話を追加しました。(全5話)
婚約破棄から始まる恋~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
きさらぎ
恋愛
テンネル侯爵家の嫡男エドガーに真実の愛を見つけたと言われ、ブルーバーグ侯爵家の令嬢フローラは婚約破棄された。フローラにはとても良い結婚条件だったのだが……しかし、これを機に結婚よりも大好きな研究に打ち込もうと思っていたら、ガーデンパーティーで新たな出会いが待っていた。一方、テンネル侯爵家はエドガー達のやらかしが重なり、気づいた時には―。
※『婚約破棄された地味令嬢は、あっという間に王子様に捕獲されました。』(現在は非公開です)をタイトルを変更して改稿をしています。
お気に入り登録・しおり等読んで頂いている皆様申し訳ございません。こちらの方を読んで頂ければと思います。
私を虐げた人には絶望を ~貧乏令嬢は悪魔と呼ばれる侯爵様と契約結婚する~
香木あかり
恋愛
「あなた達の絶望を侯爵様に捧げる契約なの。だから……悪く思わないでね?」
貧乏な子爵家に生まれたカレン・リドリーは、家族から虐げられ、使用人のように働かされていた。
カレンはリドリー家から脱出して平民として生きるため、就職先を探し始めるが、令嬢である彼女の就職活動は難航してしまう。
ある時、不思議な少年ティルからモルザン侯爵家で働くようにスカウトされ、モルザン家に連れていかれるが……
「変わった人間だな。悪魔を前にして驚きもしないとは」
クラウス・モルザンは「悪魔の侯爵」と呼ばれていたが、本当に悪魔だったのだ。
負の感情を糧として生きているクラウスは、社交界での負の感情を摂取するために優秀な侯爵を演じていた。
カレンと契約結婚することになったクラウスは、彼女の家族に目をつける。
そしてクラウスはカレンの家族を絶望させて糧とするため、動き出すのだった。
「お前を虐げていた者たちに絶望を」
※念のためのR-15です
※他サイトでも掲載中
姉に代わって立派に息子を育てます! 前日譚
mio
恋愛
ウェルカ・ティー・バーセリクは侯爵家の二女であるが、母亡き後に侯爵家に嫁いできた義母、転がり込んできた義妹に姉と共に邪魔者扱いされていた。
王家へと嫁ぐ姉について王都に移住したウェルカは侯爵家から離れて、実母の実家へと身を寄せることになった。姉が嫁ぐ中、学園に通いながらウェルカは自分の才能を伸ばしていく。
数年後、多少の問題を抱えつつ姉は懐妊。しかし、出産と同時にその命は尽きてしまう。そして残された息子をウェルカは姉に代わって育てる決意をした。そのためにはなんとしても王宮での地位を確立しなければ!
自分でも考えていたよりだいぶ話数が伸びてしまったため、こちらを姉が子を産むまでの前日譚として本編は別に作っていきたいと思います。申し訳ございません。
恋愛戦線からあぶれた公爵令嬢ですので、私は官僚になります~就業内容は無茶振り皇子の我儘に付き合うことでしょうか?~
めもぐあい
恋愛
公爵令嬢として皆に慕われ、平穏な学生生活を送っていたモニカ。ところが最終学年になってすぐ、親友と思っていた伯爵令嬢に裏切られ、いつの間にか悪役公爵令嬢にされ苛めに遭うようになる。
そのせいで、貴族社会で慣例となっている『女性が学園を卒業するのに合わせて男性が婚約の申し入れをする』からもあぶれてしまった。
家にも迷惑を掛けずに一人で生きていくためトップであり続けた成績を活かし官僚となって働き始めたが、仕事内容は第二皇子の無茶振りに付き合う事。社会人になりたてのモニカは日々奮闘するが――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる