6 / 80
第4話 通知結果は
しおりを挟む
お兄様と話した後、私は自分の部屋に戻って来ていた。
ベッドに横になり、先程のことを振り返る。
「ふふ……」
そうすると、自然と笑みが零れてしまった。
お兄様の学園に通える。それは、私にとってとても嬉しいことだった。
私にとって、お兄様は憧れの人だ。強く凛々しく気高いお兄様は、私にとってずっとそういう存在だった。
「もう、十六歳か……」
そんなことを考えていると、あることを思い出してしまう。それは、私がこの家に来た時のことだ。
私、ルリアは、フォリシス家の本当の娘ではない。両親が亡くなって、身寄りが無くなった私を、今のお父様が引き取ってくださったのだ。
「お父さんとお母さんがいなくなってから、もう十年くらい……」
私の本当の両親は、フォリシス家の遠い親戚に当たる貴族だった。治める領地も小さく、このフォリシス家と比べると、弱小貴族という他ないだろう。
ただ、私達の暮らしは幸せなものだったと思う。領地の住人とも、打ち解けており、特に問題もない平凡な日々だったはずだ。
しかし、両親が病に倒れてしまったことで、その日々は失われてしまった。結果的に、両親は亡くなり、幼かった私だけが取り残されてしまったのだ。
「あの時は、大変だったなあ……」
そんな私を助けてくれたのが、今のお父様だ。
お父様は、私の両親に以前助けられたことがあるらしく、遠い親戚ということもあって、私を領地ごとフォリシス家の管轄に入れることを決めたのだ。
そうして、私はフォリシス家の一員になったのである。
「それからも、大変だったかな……」
それから、私はフォリシス家の人々と出会った。
お父様、お母様、お兄様、レティ。皆、いい人で私を助けてくれた。
「お兄様……」
その中でも、お兄様は特別だ。
お兄様は、忙しいお父様やお母様に変わり、私の指導をしてくれた。
弱小貴族であるためか、特に何も言われてこなかったマナーやルールなど、私は色々なことを学ばせてもらったのである。
そういう風に接していく内に、私はお兄様に憧れるようになった。厳しくも優しいお兄様に、惹かれていったのだ。
「ふう……」
色々あったが、私ももうすぐ魔法学校に入学する。
期待も不安もあるけれど、頑張ってみよう。そう思い、私は来る日に備えるのだった。
◇◇◇
魔法学校への入学が近づいて来た頃、私はレティに呼び出されていた。
今日は、レティの合格発表の日だ。そのため、結果を教えてくれるのだろう。
「レティ?」
「あ、はい……入ってください」
私が部屋の戸を叩くと、レティは落ち込んだような声で返事をしてきた。
この反応が、どちらなのかは少し判断に困る。
レティは、行きたくないと言っていたので、受かっているかもしれない。しかし、単純に落ちて落ち込んでいる可能性もある。
「お邪魔するね……」
私はゆっくりと戸を開けて、部屋の中に入った。
すると、すぐに合否の書いてある書類を見つける。
「あ、受かったんだね? おめでとう」
「ええ、受かってしまいました……」
そこには、合格と記されていた。つまり、レティの魔法学校への入学が決まったのだ。
ただ、レティは落ち込んでいる。やはり、お兄様の学園に通うのは嫌なようだ。
「レティ、受かったのに落ち込むのは、駄目だよ?」
「くっ……自分の頭の良さがにくい」
「レティ、落ち着いて……」
レティは、頭を抱えていた。
合格したのに、この反応とは、中々おかしなものである。
「いっそのこと、引きこもりましょうか……」
「だ、駄目だよ。そんなの……」
「嫌です。引きこもりたいです。お兄様なんかが運営する学校になんて、行きたくないです」
「ほう?」
「え?」
「は?」
レティが、色々と嘆いていると、とある声が聞こえてきた。
この声を、聞き間違えるはずがない。これはお兄様の声だ。
私は、ゆっくりと後ろを振り返る。
「この俺などが運営する学校に行きたくないか……」
「あ、お兄様、その違うんでしゅ」
あまりの動揺に、レティは舌を噛んでいた。
しかし、その程度でお兄様の怒りは収まらない。
「前々から思っていたが、お前は俺への尊敬の念が、まったく足りていないようだな……」
「い、いえ、違うんです。というか、お兄様の方こそ、何をしているんですか? 乙女の部屋に勝手に入ってくるなんて」
そんなお兄様に対して、レティは強引に話題を反らそうとした。
確かに、お兄様はいつの間にか現れていた。ここは、レティの部屋だ。いくらお兄様でも、勝手に入るのは駄目だと思う。
「俺はきちんとノックをしたぞ。それに答えなかったのは、お前達だ。部屋にいるのがわかっている以上、何も返答がないのはおかしいと思うのが当然だ。故に、心配して中に入った。何か、反論はあるか?」
「くえ……」
どうやら、お兄様はきちんとノックしていたようだ。
それは、私も気づいていなかった。レティの方に集中してしまっていて、聞き逃してしまっていたようだ。
それなら、お兄様が部屋に入るのも納得である。むしろ、私達を心配して入ってきたお兄様に、感謝するべきだ。
「お兄様、ご心配ありがとうございます。そして、気づかなかったことは申し訳ありませんでした」
「それは構わない。お前達の身に何もなくて、安心することはあっても、怒りを覚えることはない。聞き逃すことなど、誰にでもあることだろう」
お兄様は、本当に私達を心配してくれていたようだ。この優しさには、感謝の気持ちしかない。
「じゃ、じゃあ……」
「ただし、お前が述べていた言葉に関しては許しがたいことだ」
「げえ……」
レティに関しては、可哀そうだとも思うが、自業自得のようにも思える。あまり、ああいうことは言うべきではないと思う。
こうして、レティへの説教が始まるのだった。
ベッドに横になり、先程のことを振り返る。
「ふふ……」
そうすると、自然と笑みが零れてしまった。
お兄様の学園に通える。それは、私にとってとても嬉しいことだった。
私にとって、お兄様は憧れの人だ。強く凛々しく気高いお兄様は、私にとってずっとそういう存在だった。
「もう、十六歳か……」
そんなことを考えていると、あることを思い出してしまう。それは、私がこの家に来た時のことだ。
私、ルリアは、フォリシス家の本当の娘ではない。両親が亡くなって、身寄りが無くなった私を、今のお父様が引き取ってくださったのだ。
「お父さんとお母さんがいなくなってから、もう十年くらい……」
私の本当の両親は、フォリシス家の遠い親戚に当たる貴族だった。治める領地も小さく、このフォリシス家と比べると、弱小貴族という他ないだろう。
ただ、私達の暮らしは幸せなものだったと思う。領地の住人とも、打ち解けており、特に問題もない平凡な日々だったはずだ。
しかし、両親が病に倒れてしまったことで、その日々は失われてしまった。結果的に、両親は亡くなり、幼かった私だけが取り残されてしまったのだ。
「あの時は、大変だったなあ……」
そんな私を助けてくれたのが、今のお父様だ。
お父様は、私の両親に以前助けられたことがあるらしく、遠い親戚ということもあって、私を領地ごとフォリシス家の管轄に入れることを決めたのだ。
そうして、私はフォリシス家の一員になったのである。
「それからも、大変だったかな……」
それから、私はフォリシス家の人々と出会った。
お父様、お母様、お兄様、レティ。皆、いい人で私を助けてくれた。
「お兄様……」
その中でも、お兄様は特別だ。
お兄様は、忙しいお父様やお母様に変わり、私の指導をしてくれた。
弱小貴族であるためか、特に何も言われてこなかったマナーやルールなど、私は色々なことを学ばせてもらったのである。
そういう風に接していく内に、私はお兄様に憧れるようになった。厳しくも優しいお兄様に、惹かれていったのだ。
「ふう……」
色々あったが、私ももうすぐ魔法学校に入学する。
期待も不安もあるけれど、頑張ってみよう。そう思い、私は来る日に備えるのだった。
◇◇◇
魔法学校への入学が近づいて来た頃、私はレティに呼び出されていた。
今日は、レティの合格発表の日だ。そのため、結果を教えてくれるのだろう。
「レティ?」
「あ、はい……入ってください」
私が部屋の戸を叩くと、レティは落ち込んだような声で返事をしてきた。
この反応が、どちらなのかは少し判断に困る。
レティは、行きたくないと言っていたので、受かっているかもしれない。しかし、単純に落ちて落ち込んでいる可能性もある。
「お邪魔するね……」
私はゆっくりと戸を開けて、部屋の中に入った。
すると、すぐに合否の書いてある書類を見つける。
「あ、受かったんだね? おめでとう」
「ええ、受かってしまいました……」
そこには、合格と記されていた。つまり、レティの魔法学校への入学が決まったのだ。
ただ、レティは落ち込んでいる。やはり、お兄様の学園に通うのは嫌なようだ。
「レティ、受かったのに落ち込むのは、駄目だよ?」
「くっ……自分の頭の良さがにくい」
「レティ、落ち着いて……」
レティは、頭を抱えていた。
合格したのに、この反応とは、中々おかしなものである。
「いっそのこと、引きこもりましょうか……」
「だ、駄目だよ。そんなの……」
「嫌です。引きこもりたいです。お兄様なんかが運営する学校になんて、行きたくないです」
「ほう?」
「え?」
「は?」
レティが、色々と嘆いていると、とある声が聞こえてきた。
この声を、聞き間違えるはずがない。これはお兄様の声だ。
私は、ゆっくりと後ろを振り返る。
「この俺などが運営する学校に行きたくないか……」
「あ、お兄様、その違うんでしゅ」
あまりの動揺に、レティは舌を噛んでいた。
しかし、その程度でお兄様の怒りは収まらない。
「前々から思っていたが、お前は俺への尊敬の念が、まったく足りていないようだな……」
「い、いえ、違うんです。というか、お兄様の方こそ、何をしているんですか? 乙女の部屋に勝手に入ってくるなんて」
そんなお兄様に対して、レティは強引に話題を反らそうとした。
確かに、お兄様はいつの間にか現れていた。ここは、レティの部屋だ。いくらお兄様でも、勝手に入るのは駄目だと思う。
「俺はきちんとノックをしたぞ。それに答えなかったのは、お前達だ。部屋にいるのがわかっている以上、何も返答がないのはおかしいと思うのが当然だ。故に、心配して中に入った。何か、反論はあるか?」
「くえ……」
どうやら、お兄様はきちんとノックしていたようだ。
それは、私も気づいていなかった。レティの方に集中してしまっていて、聞き逃してしまっていたようだ。
それなら、お兄様が部屋に入るのも納得である。むしろ、私達を心配して入ってきたお兄様に、感謝するべきだ。
「お兄様、ご心配ありがとうございます。そして、気づかなかったことは申し訳ありませんでした」
「それは構わない。お前達の身に何もなくて、安心することはあっても、怒りを覚えることはない。聞き逃すことなど、誰にでもあることだろう」
お兄様は、本当に私達を心配してくれていたようだ。この優しさには、感謝の気持ちしかない。
「じゃ、じゃあ……」
「ただし、お前が述べていた言葉に関しては許しがたいことだ」
「げえ……」
レティに関しては、可哀そうだとも思うが、自業自得のようにも思える。あまり、ああいうことは言うべきではないと思う。
こうして、レティへの説教が始まるのだった。
41
お気に入りに追加
1,777
あなたにおすすめの小説
拾った宰相閣下に溺愛されまして。~残念イケメンの執着が重すぎます!
枢 呂紅
恋愛
「わたしにだって、限界があるんですよ……」
そんな風に泣きながら、べろべろに酔いつぶれて行き倒れていたイケメンを拾ってしまったフィアナ。そのまま道端に放っておくのも忍びなくて、仏心をみせて拾ってやったのがすべての間違いの始まりだった――。
「天使で、女神で、マイスウィートハニーなフィアナさん。どうか私の愛を受け入れてください!」
「気持ち悪いし重いんで絶対嫌です」
外見だけは最強だが中身は残念なイケメン宰相と、そんな宰相に好かれてしまった庶民ムスメの、温度差しかない身分差×年の差溺愛ストーリー、ここに開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
虐げられていた黒魔術師は辺境伯に溺愛される
朝露ココア
恋愛
リナルディ伯爵令嬢のクラーラ。
クラーラは白魔術の名門に生まれながらも、黒魔術を得意としていた。
そのため実家では冷遇され、いつも両親や姉から蔑まれる日々を送っている。
父の強引な婚約の取り付けにより、彼女はとある辺境伯のもとに嫁ぐことになる。
縁談相手のハルトリー辺境伯は社交界でも評判がよくない人物。
しかし、逃げ場のないクラーラは黙って縁談を受け入れるしかなかった。
実際に会った辺境伯は臆病ながらも誠実な人物で。
クラーラと日々を過ごす中で、彼は次第に成長し……そして彼にまつわる『呪い』も明らかになっていく。
「二度と君を手放すつもりはない。俺を幸せにしてくれた君を……これから先、俺が幸せにする」
訳あり冷徹社長はただの優男でした
あさの紅茶
恋愛
独身喪女の私に、突然お姉ちゃんが子供(2歳)を押し付けてきた
いや、待て
育児放棄にも程があるでしょう
音信不通の姉
泣き出す子供
父親は誰だよ
怒り心頭の中、なしくずし的に子育てをすることになった私、橋本美咲(23歳)
これはもう、人生詰んだと思った
**********
この作品は他のサイトにも掲載しています
【完結】貧乏男爵家のガリ勉令嬢が幸せをつかむまでー平凡顔ですが勉強だけは負けませんー
華抹茶
恋愛
家は貧乏な男爵家の長女、ベティーナ・アルタマンは可愛い弟の学費を捻出するために良いところへ就職しなければならない。そのためには学院をいい成績で卒業することが必須なため、がむしゃらに勉強へ打ち込んできた。
学院始まって最初の試験で1位を取ったことで、入学試験1位、今回の試験で2位へ落ちたコンラート・ブランディスと関わるようになる。容姿端麗、頭脳明晰、家は上級貴族の侯爵家。ご令嬢がこぞって結婚したい大人気のモテ男。そんな人からライバル宣言されてしまって――
ライバルから恋心を抱いていく2人のお話です。12話で完結。(12月31日に完結します)
※以前投稿した、長文短編を加筆修正し分割した物になります。
※R5.2月 コンラート視点の話を追加しました。(全5話)
私を虐げた人には絶望を ~貧乏令嬢は悪魔と呼ばれる侯爵様と契約結婚する~
香木あかり
恋愛
「あなた達の絶望を侯爵様に捧げる契約なの。だから……悪く思わないでね?」
貧乏な子爵家に生まれたカレン・リドリーは、家族から虐げられ、使用人のように働かされていた。
カレンはリドリー家から脱出して平民として生きるため、就職先を探し始めるが、令嬢である彼女の就職活動は難航してしまう。
ある時、不思議な少年ティルからモルザン侯爵家で働くようにスカウトされ、モルザン家に連れていかれるが……
「変わった人間だな。悪魔を前にして驚きもしないとは」
クラウス・モルザンは「悪魔の侯爵」と呼ばれていたが、本当に悪魔だったのだ。
負の感情を糧として生きているクラウスは、社交界での負の感情を摂取するために優秀な侯爵を演じていた。
カレンと契約結婚することになったクラウスは、彼女の家族に目をつける。
そしてクラウスはカレンの家族を絶望させて糧とするため、動き出すのだった。
「お前を虐げていた者たちに絶望を」
※念のためのR-15です
※他サイトでも掲載中
婚約破棄から始まる恋~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
きさらぎ
恋愛
テンネル侯爵家の嫡男エドガーに真実の愛を見つけたと言われ、ブルーバーグ侯爵家の令嬢フローラは婚約破棄された。フローラにはとても良い結婚条件だったのだが……しかし、これを機に結婚よりも大好きな研究に打ち込もうと思っていたら、ガーデンパーティーで新たな出会いが待っていた。一方、テンネル侯爵家はエドガー達のやらかしが重なり、気づいた時には―。
※『婚約破棄された地味令嬢は、あっという間に王子様に捕獲されました。』(現在は非公開です)をタイトルを変更して改稿をしています。
お気に入り登録・しおり等読んで頂いている皆様申し訳ございません。こちらの方を読んで頂ければと思います。
恋愛戦線からあぶれた公爵令嬢ですので、私は官僚になります~就業内容は無茶振り皇子の我儘に付き合うことでしょうか?~
めもぐあい
恋愛
公爵令嬢として皆に慕われ、平穏な学生生活を送っていたモニカ。ところが最終学年になってすぐ、親友と思っていた伯爵令嬢に裏切られ、いつの間にか悪役公爵令嬢にされ苛めに遭うようになる。
そのせいで、貴族社会で慣例となっている『女性が学園を卒業するのに合わせて男性が婚約の申し入れをする』からもあぶれてしまった。
家にも迷惑を掛けずに一人で生きていくためトップであり続けた成績を活かし官僚となって働き始めたが、仕事内容は第二皇子の無茶振りに付き合う事。社会人になりたてのモニカは日々奮闘するが――
姉に代わって立派に息子を育てます! 前日譚
mio
恋愛
ウェルカ・ティー・バーセリクは侯爵家の二女であるが、母亡き後に侯爵家に嫁いできた義母、転がり込んできた義妹に姉と共に邪魔者扱いされていた。
王家へと嫁ぐ姉について王都に移住したウェルカは侯爵家から離れて、実母の実家へと身を寄せることになった。姉が嫁ぐ中、学園に通いながらウェルカは自分の才能を伸ばしていく。
数年後、多少の問題を抱えつつ姉は懐妊。しかし、出産と同時にその命は尽きてしまう。そして残された息子をウェルカは姉に代わって育てる決意をした。そのためにはなんとしても王宮での地位を確立しなければ!
自分でも考えていたよりだいぶ話数が伸びてしまったため、こちらを姉が子を産むまでの前日譚として本編は別に作っていきたいと思います。申し訳ございません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる