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第2話 出された許可
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私がお兄様と話している時、義妹のレティが声をあげた。
なんでも、お兄様が私を自身の学園に通わせたくないのは、共学だからというのが、レティの見解であるようだ。
私は、ゆっくりとお兄様の方へ目を向ける。
お兄様は、怒りの表情で、レティを見ていた。その表情に、レティも少し怯んでしまう。
「お、お兄様、し、視線が妹に向けるものではないですよ?」
「黙れ、愚かなる妹よ。これの俺に対して、知ったような口を聞いたこと、只事で済むと思うな……」
「ひ、ひい、お姉様」
レティは、私の後ろに隠れてしまった。
しかし、これは仕方ないだろう。このお兄様は、私も流石に怖い。
「お、お兄様、落ち着いてください。レティも、悪気があった訳ではないと思います」
「……わかっている。だが、そこの妹は、兄に対する敬意というものが、根本的に足りていない。兄として、それを放っておく訳にはいかないだろう」
私の言葉に対して、お兄様はそう答えてくれた。
だが、レティは決してお兄様を馬鹿にするような意味で言った訳ではないはずだ。
それに、レティは聡明で優しい子である。そんな子が、お兄様の偉大さをわかっていないとは思えない。
「お兄様、レティは決して、お兄様を愚弄するような意味で言った訳ではありません。そ、そんなことないよね、レティ?」
「ふん! ふん!」
「ほう……?」
レティは、私の言葉に大きく頷いた。
やはり、変な意味があった訳でないようだ。
「ならば、なんだという?」
「きっと、冗談のつもりで言ったのだと思います。お兄様も先程、私に冗談を言ってくれました。要は、兄と妹の軽いコミュニケーションです」
「……なるほど」
お兄様は、ゆっくりとレティに視線を向ける。
その視線は、先程までとは少し違い、優しさも混ざっているように見えた。
恐らく、もう怒っていない。お兄様も、とても優しい人だ。先程は、変なことを言われて、少し怒ってしまっただけだろう。
「違いないか? 我が妹よ」
「え、ええ、それはもちろん。もう、冗談です。わかりにくくて、申し訳ありませんでした」
「いや、この俺も少々怒り過ぎた。妹の冗談も見抜けないとは、俺もまだまだということだろう」
どうやら、仲直りできたようだ。
二人が、変な感じにならなくてよかった。
兄と妹が、こんなことでギクシャクしてしまうなんて、あってはならないことだ。事前に防げて、本当に安心できる。
「さて、話の続きをするとしようか」
「あ、そうですね」
「お前には、セント女学院に通ってもらう。それで、構わないな?」
「はい。残念ですけど、仕方ありません」
そこで、お兄様が話をまとめた。
お兄様の学園に通えないのは残念だが、これは仕方ない。
「それにしても、お姉様、よくお兄様の学園に通いたいなんて、思いますね?」
「え? レティ、それってどういう意味?」
そんな中、レティが私にそう言ってきた。
私は、レティが何を言っているか、少しわからない。お兄様の学園に通いたいと思うのは、別におかしなことではないはずだ。
「だって、お兄様の学園なんて、絶対に厳しいじゃないですか。しかも、学園長の妹なんて、肩身が狭くて仕方ありませんよ。気軽に、サボることもできません」
私の質問に、レティは得意気に答えてくれた。
だが、その答えは明らかにまずいと私にもわかる。
その証拠に、お兄様の顔がどんどんと怒りの表情に変わっていく。
「愚かなる妹よ。今の言葉に嘘偽りはないのだな?」
「え? お兄様? い、いえ、それは……」
「どうやら、お前は誇り高きフォリシス家の娘として自覚が足りないらしいな……」
「も、申し訳ありませんでした、お兄様!」
怒るお兄様に、レティは平謝りする。
ただ、お兄様の表情は変わらない。もう、お兄様はレティの心を知ってしまったのだ。その時点で、もう遅いのである。
「気が変わった。お前達姉妹には、我が学園に入ってもらう」
「え? お兄様、本当ですか?」
「ああ、本当だ。俺は兄として、そちらの愚かなる妹の性根を叩き直さなければならないからな……」
「げ……」
そこで、お兄様は私の学園入学を、認めてくれた。
ただ、これはレティを自身で教育するためだ。そのために、姉妹間で差がつかないように、私の入学も認めてくれたのである。
こういう公平な所も、お兄様の素敵な所だ。
「で、でも、お兄様? 私の年齢では、学園に入学できませんよ?」
「魔法学校に入るには、二つのルートがある。一つは、十六歳になる年に正規入学する方法。そして、もう一つは、特別入学試験を受けることだ」
「と、特別入学試験……?」
どうやら、お兄様は私と同じ年に、レティを入学させるつもりらしい。
魔法学校入学には、年齢で入るのと、特別に試験を受けて入学する方法がある。お兄様は、その後者をレティに適用しようとしているのだ。
「お前には、その試験を受けて、我が学園に入ってもらう。この俺が自ら採点するが故に、手を抜くことは許さん……」
「は、はい……」
こうして、レティのついでという形ではあるが、私はお兄様の学園に入学できることが決まった。
ただ、レティが少しだけ可哀そうだ。後で、色々とフォローしておこう。
なんでも、お兄様が私を自身の学園に通わせたくないのは、共学だからというのが、レティの見解であるようだ。
私は、ゆっくりとお兄様の方へ目を向ける。
お兄様は、怒りの表情で、レティを見ていた。その表情に、レティも少し怯んでしまう。
「お、お兄様、し、視線が妹に向けるものではないですよ?」
「黙れ、愚かなる妹よ。これの俺に対して、知ったような口を聞いたこと、只事で済むと思うな……」
「ひ、ひい、お姉様」
レティは、私の後ろに隠れてしまった。
しかし、これは仕方ないだろう。このお兄様は、私も流石に怖い。
「お、お兄様、落ち着いてください。レティも、悪気があった訳ではないと思います」
「……わかっている。だが、そこの妹は、兄に対する敬意というものが、根本的に足りていない。兄として、それを放っておく訳にはいかないだろう」
私の言葉に対して、お兄様はそう答えてくれた。
だが、レティは決してお兄様を馬鹿にするような意味で言った訳ではないはずだ。
それに、レティは聡明で優しい子である。そんな子が、お兄様の偉大さをわかっていないとは思えない。
「お兄様、レティは決して、お兄様を愚弄するような意味で言った訳ではありません。そ、そんなことないよね、レティ?」
「ふん! ふん!」
「ほう……?」
レティは、私の言葉に大きく頷いた。
やはり、変な意味があった訳でないようだ。
「ならば、なんだという?」
「きっと、冗談のつもりで言ったのだと思います。お兄様も先程、私に冗談を言ってくれました。要は、兄と妹の軽いコミュニケーションです」
「……なるほど」
お兄様は、ゆっくりとレティに視線を向ける。
その視線は、先程までとは少し違い、優しさも混ざっているように見えた。
恐らく、もう怒っていない。お兄様も、とても優しい人だ。先程は、変なことを言われて、少し怒ってしまっただけだろう。
「違いないか? 我が妹よ」
「え、ええ、それはもちろん。もう、冗談です。わかりにくくて、申し訳ありませんでした」
「いや、この俺も少々怒り過ぎた。妹の冗談も見抜けないとは、俺もまだまだということだろう」
どうやら、仲直りできたようだ。
二人が、変な感じにならなくてよかった。
兄と妹が、こんなことでギクシャクしてしまうなんて、あってはならないことだ。事前に防げて、本当に安心できる。
「さて、話の続きをするとしようか」
「あ、そうですね」
「お前には、セント女学院に通ってもらう。それで、構わないな?」
「はい。残念ですけど、仕方ありません」
そこで、お兄様が話をまとめた。
お兄様の学園に通えないのは残念だが、これは仕方ない。
「それにしても、お姉様、よくお兄様の学園に通いたいなんて、思いますね?」
「え? レティ、それってどういう意味?」
そんな中、レティが私にそう言ってきた。
私は、レティが何を言っているか、少しわからない。お兄様の学園に通いたいと思うのは、別におかしなことではないはずだ。
「だって、お兄様の学園なんて、絶対に厳しいじゃないですか。しかも、学園長の妹なんて、肩身が狭くて仕方ありませんよ。気軽に、サボることもできません」
私の質問に、レティは得意気に答えてくれた。
だが、その答えは明らかにまずいと私にもわかる。
その証拠に、お兄様の顔がどんどんと怒りの表情に変わっていく。
「愚かなる妹よ。今の言葉に嘘偽りはないのだな?」
「え? お兄様? い、いえ、それは……」
「どうやら、お前は誇り高きフォリシス家の娘として自覚が足りないらしいな……」
「も、申し訳ありませんでした、お兄様!」
怒るお兄様に、レティは平謝りする。
ただ、お兄様の表情は変わらない。もう、お兄様はレティの心を知ってしまったのだ。その時点で、もう遅いのである。
「気が変わった。お前達姉妹には、我が学園に入ってもらう」
「え? お兄様、本当ですか?」
「ああ、本当だ。俺は兄として、そちらの愚かなる妹の性根を叩き直さなければならないからな……」
「げ……」
そこで、お兄様は私の学園入学を、認めてくれた。
ただ、これはレティを自身で教育するためだ。そのために、姉妹間で差がつかないように、私の入学も認めてくれたのである。
こういう公平な所も、お兄様の素敵な所だ。
「で、でも、お兄様? 私の年齢では、学園に入学できませんよ?」
「魔法学校に入るには、二つのルートがある。一つは、十六歳になる年に正規入学する方法。そして、もう一つは、特別入学試験を受けることだ」
「と、特別入学試験……?」
どうやら、お兄様は私と同じ年に、レティを入学させるつもりらしい。
魔法学校入学には、年齢で入るのと、特別に試験を受けて入学する方法がある。お兄様は、その後者をレティに適用しようとしているのだ。
「お前には、その試験を受けて、我が学園に入ってもらう。この俺が自ら採点するが故に、手を抜くことは許さん……」
「は、はい……」
こうして、レティのついでという形ではあるが、私はお兄様の学園に入学できることが決まった。
ただ、レティが少しだけ可哀そうだ。後で、色々とフォローしておこう。
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