3 / 20
3.目指すべき場所
しおりを挟む
「……さて、ヴェルゼス様が来てくれたのは非常にありがたいことなのですが、実の所私が罪人であり、他国にとって受け入れがたい存在であるという事実は変わりません」
「……ええ、それはもちろん理解しています」
「ヴェルゼス様、何か良い案などはありますか?」
ヴェルゼス様の同行は、心強いものである。それは間違いない。
ただ、彼が来てくれたことと私が他国に受け入れられるかどうかは、別の問題だ。このままでは二人で、国と国との間を彷徨い続けることになってしまう。
それはもちろん、避けたいことである。故に私は、ヴェルゼス様に問いかけてみることにしたのだ。
「とりあえず、シェリオル山に向かいましょう」
「シェリオル山?」
「ここからでも見える、あの山です」
ヴェルゼス様は、少し遠くの山を指差した。
しかし山に行って、何になるというのだろうか。それでは結局、サバイバル生活を送ることになってしまう。
「あの山には、様々な国で受け入れられなかった者達が集まって生活をしているのです」
「そんな所があるのですか? でも、大丈夫なのでしょうか? 国で受け入れられなかったということは、結構危ない人達がいるのでは?」
「その点に関しては、問題はないかと思います。あくまでも事情があった者達が集まっている場所ですので」
「そうなのですか……」
ヴェルゼス様の言葉に、私は少し驚くことになった。
彼が言うような所があるなんて、私はまったく知らない。ただその場所が本当にあるなら、今の私にはぴったりだといえる。
行く当てが他にある訳でもないので、とりあえず今はそこに向かうべきだろう。しかしその前に、ヴェルゼス様に聞いておきたいことがある。
「ヴェルゼス様は、そんな場所をよく知っていましたね?」
「……これは内密にしていただきたいことですが」
「内密? え? そんなに重要な話なのですか?」
「オフェリル侯爵家が、そこに物資を提供しているのです。ジオンド老師と私の祖父が懇意にしていましてね……」
「なるほど……そうだったのですね。まあ、私から何かが漏れるようなことはないですから、ご安心を。そもそもの話、漏らす先との繋がりもありませんからね」
ヴェルゼス様の説明に、私はさらに驚くことになった。
オフェリル侯爵家がそんな所を支援している。それは判明すれば、きっと大問題だ。ヴェルゼス様が神妙な顔をしているのも、当然だといえる。
もちろん、私はそれを漏らすことはない。これからお世話になる訳なのだから、そんなことをするはずがない。それにこれから私が関わる人達を考えると、そもそも漏れようがないのである。
「……ええ、それはもちろん理解しています」
「ヴェルゼス様、何か良い案などはありますか?」
ヴェルゼス様の同行は、心強いものである。それは間違いない。
ただ、彼が来てくれたことと私が他国に受け入れられるかどうかは、別の問題だ。このままでは二人で、国と国との間を彷徨い続けることになってしまう。
それはもちろん、避けたいことである。故に私は、ヴェルゼス様に問いかけてみることにしたのだ。
「とりあえず、シェリオル山に向かいましょう」
「シェリオル山?」
「ここからでも見える、あの山です」
ヴェルゼス様は、少し遠くの山を指差した。
しかし山に行って、何になるというのだろうか。それでは結局、サバイバル生活を送ることになってしまう。
「あの山には、様々な国で受け入れられなかった者達が集まって生活をしているのです」
「そんな所があるのですか? でも、大丈夫なのでしょうか? 国で受け入れられなかったということは、結構危ない人達がいるのでは?」
「その点に関しては、問題はないかと思います。あくまでも事情があった者達が集まっている場所ですので」
「そうなのですか……」
ヴェルゼス様の言葉に、私は少し驚くことになった。
彼が言うような所があるなんて、私はまったく知らない。ただその場所が本当にあるなら、今の私にはぴったりだといえる。
行く当てが他にある訳でもないので、とりあえず今はそこに向かうべきだろう。しかしその前に、ヴェルゼス様に聞いておきたいことがある。
「ヴェルゼス様は、そんな場所をよく知っていましたね?」
「……これは内密にしていただきたいことですが」
「内密? え? そんなに重要な話なのですか?」
「オフェリル侯爵家が、そこに物資を提供しているのです。ジオンド老師と私の祖父が懇意にしていましてね……」
「なるほど……そうだったのですね。まあ、私から何かが漏れるようなことはないですから、ご安心を。そもそもの話、漏らす先との繋がりもありませんからね」
ヴェルゼス様の説明に、私はさらに驚くことになった。
オフェリル侯爵家がそんな所を支援している。それは判明すれば、きっと大問題だ。ヴェルゼス様が神妙な顔をしているのも、当然だといえる。
もちろん、私はそれを漏らすことはない。これからお世話になる訳なのだから、そんなことをするはずがない。それにこれから私が関わる人達を考えると、そもそも漏れようがないのである。
206
お気に入りに追加
525
あなたにおすすめの小説
聖人の番である聖女はすでに壊れている~姉を破壊した妹を同じように破壊する~
サイコちゃん
恋愛
聖人ヴィンスの運命の番である聖女ウルティアは発見した時すでに壊れていた。発狂へ導いた犯人は彼女の妹システィアである。天才宮廷魔術師クレイグの手を借り、ヴィンスは復讐を誓う。姉ウルティアが奪われた全てを奪い返し、与えられた苦痛全てを返してやるのだ――
お堅い公爵様に求婚されたら、溺愛生活が始まりました
群青みどり
恋愛
国に死ぬまで搾取される聖女になるのが嫌で実力を隠していたアイリスは、周囲から無能だと虐げられてきた。
どれだけ酷い目に遭おうが強い精神力で乗り越えてきたアイリスの安らぎの時間は、若き公爵のセピアが神殿に訪れた時だった。
そんなある日、セピアが敵と対峙した時にたまたま近くにいたアイリスは巻き込まれて怪我を負い、気絶してしまう。目が覚めると、顔に傷痕が残ってしまったということで、セピアと婚約を結ばれていた!
「どうか怪我を負わせた責任をとって君と結婚させてほしい」
こんな怪我、聖女の力ですぐ治せるけれど……本物の聖女だとバレたくない!
このまま正体バレして国に搾取される人生を送るか、他の方法を探して婚約破棄をするか。
婚約破棄に向けて悩むアイリスだったが、罪悪感から求婚してきたはずのセピアの溺愛っぷりがすごくて⁉︎
「ずっと、どうやってこの神殿から君を攫おうかと考えていた」
麗しの公爵様は、今日も聖女にしか見せない笑顔を浮かべる──
※タイトル変更しました
【完結】敵国の悪虐宰相に囚われましたが、拷問はイヤなので幸せを所望します。
当麻リコ
恋愛
拷問が大好きなことで有名な悪虐宰相ランドルフ。
彼は長年冷戦状態が続く敵国の第一王女アシュリーを捕えたという報告を受けて、地下牢へと急いだ。
「今から貴様を拷問する」とランドルフが高らかに宣言すると、アシュリーは怯えた様子もなく「痛いのはイヤなのでわたくしを幸せにする拷問を考えなさい」と無茶ぶりをしてきた。
噂を信じ自分に怯える罪人ばかりの中、今までにない反応をするアシュリーに好奇心を刺激され、馬鹿馬鹿しいと思いつつもランドルフはその提案に乗ることにした。
※虜囚となってもマイペースを崩さない王女様と、それに振り回されながらもだんだん楽しくなってくる宰相が、拷問と称して美味しいものを食べたりデートしたりするお話です。
【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。
【完結】婚約破棄された聖女はもう祈れない 〜妹こそ聖女に相応しいと追放された私は隣国の王太子に拾われる
冬月光輝
恋愛
聖女リルア・サウシールは聖地を領地として代々守っている公爵家の嫡男ミゲルと婚約していた。
リルアは教会で神具を用いて祈りを捧げ結界を張っていたのだが、ある日神具がミゲルによって破壊されてしまう。
ミゲルに策謀に嵌り神具を破壊した罪をなすりつけられたリルアは婚約破棄され、隣国の山中に追放処分を受けた。
ミゲルはずっとリルアの妹であるマリアを愛しており、思惑通りマリアが新たな聖女となったが……、結界は破壊されたままで獰猛になった魔物たちは遠慮なく聖地を荒らすようになってしまった。
一方、祈ることが出来なくなった聖女リルアは結界の維持に使っていた魔力の負担が無くなり、規格外の魔力を有するようになる。
「リルア殿には神子クラスの魔力がある。ぜひ、我が国の宮廷魔道士として腕を振るってくれないか」
偶然、彼女の力を目の当たりにした隣国の王太子サイラスはリルアを自らの国の王宮に招き、彼女は新たな人生を歩むことになった。
殿下、あなたが借金のカタに売った女が本物の聖女みたいですよ?
星ふくろう
恋愛
聖女認定の儀式をするから王宮に来いと招聘された、クルード女公爵ハーミア。
数人の聖女候補がいる中、次期皇帝のエミリオ皇太子と婚約している彼女。
周囲から最有力候補とみられていたらしい。
未亡人の自分でも役に立てるならば、とその命令を受けたのだった。
そして、聖女認定の日、登城した彼女を待っていたのは借金取りのザイール大公。
女癖の悪い、極悪なヤクザ貴族だ。
その一週間前、ポーカーで負けた殿下は婚約者を賭けの対象にしていて負けていた。
ハーミアは借金のカタにザイール大公に取り押さえられたのだ。
そして、放蕩息子のエミリオ皇太子はハーミアに宣言する。
「残念だよ、ハーミア。
そんな質草になった貴族令嬢なんて奴隷以下だ。
僕はこの可愛い女性、レベン公爵令嬢カーラと婚約するよ。
僕が選んだ女性だ、聖女になることは間違いないだろう。
君は‥‥‥お払い箱だ」
平然と婚約破棄をするエミリオ皇太子とその横でほくそ笑むカーラ。
聖女認定どころではなく、ハーミアは怒り大公とその場を後にする。
そして、聖女は選ばれなかった.
ハーミアはヤクザ大公から債権を回収し、魔王へとそれを売り飛ばす。
魔王とハーミアは共謀して帝国から債権回収をするのだった。
全裸で異世界に呼び出しておいて、国外追放って、そりゃあんまりじゃないの!?
猿喰 森繁
恋愛
私の名前は、琴葉 桜(ことのは さくら)30歳。会社員。
風呂に入ろうと、全裸になったら異世界から聖女として召喚(という名の無理やり誘拐された被害者)された自分で言うのもなんだけど、可哀そうな女である。
日本に帰すことは出来ないと言われ、渋々大人しく、言うことを聞いていたら、ある日、国外追放を宣告された可哀そうな女である。
「―――サクラ・コトノハ。今日をもって、お前を国外追放とする」
その言葉には一切の迷いもなく、情けも見えなかった。
自分たちが正義なんだと、これが正しいことなのだと疑わないその顔を見て、私はムクムクと怒りがわいてきた。
ずっと抑えてきたのに。我慢してきたのに。こんな理不尽なことはない。
日本から無理やり聖女だなんだと、無理やり呼んだくせに、今度は国外追放?
ふざけるのもいい加減にしろ。
温厚で優柔不断と言われ、ノーと言えない日本人だから何をしてもいいと思っているのか。日本人をなめるな。
「私だって好き好んでこんなところに来たわけじゃないんですよ!分かりますか?無理やり私をこの世界に呼んだのは、あなたたちのほうです。それなのにおかしくないですか?どうして、その女の子の言うことだけを信じて、守って、私は無視ですか?私の言葉もまともに聞くおつもりがないのも知ってますが、あなたがたのような人間が国の未来を背負っていくなんて寒気がしますね!そんな国を守る義務もないですし、私を国外追放するなら、どうぞ勝手になさるといいです。
ええ。
被害者はこっちだっつーの!
現聖女ですが、王太子妃様が聖女になりたいというので、故郷に戻って結婚しようと思います。
和泉鷹央
恋愛
聖女は十年しか生きられない。
この悲しい運命を変えるため、ライラは聖女になるときに精霊王と二つの契約をした。
それは期間満了後に始まる約束だったけど――
一つ……一度、死んだあと蘇生し、王太子の側室として本来の寿命で死ぬまで尽くすこと。
二つ……王太子が国王となったとき、国民が苦しむ政治をしないように側で支えること。
ライラはこの契約を承諾する。
十年後。
あと半月でライラの寿命が尽きるという頃、王太子妃ハンナが聖女になりたいと言い出した。
そして、王太子は聖女が農民出身で王族に相応しくないから、婚約破棄をすると言う。
こんな王族の為に、死ぬのは嫌だな……王太子妃様にあとを任せて、村に戻り幼馴染の彼と結婚しよう。
そう思い、ライラは聖女をやめることにした。
他の投稿サイトでも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる