22 / 22
22.これからの未来
しおりを挟む
どうしてこんなことになったのか、私は少しだけ疑問を浮かべていた。
大聖女になってからしばらくして、私は何故か純白のドレスを着ることになっていた。
実際にドレスを身に纏っても、いまいち実感が湧いてこない。きちんと現実を受け止めたつもりだったのだが。
「レフィリアさん、よく似合っていますよ」
「あ、ありがとうございます。フォルード殿下」
そんな私に声をかけてくれたのは、フォルード殿下だった。
彼は、私の姿を見ながら笑みを浮かべている。それはつまり、先程言った言葉が本心であるということなのだろう。
それについては、素直に嬉しかった。私も思わず、笑顔を浮かべてしまう。
「それにしても、本当に良かったんですか?」
「おや、それは何のことでしょうか?」
「今回の結婚のことです。本当に私と結婚していいんですか?」
「……それはなんとも、今更な話ですね」
私の言葉に、フォルード殿下は苦笑いを浮かべていた。
確かに、彼の言う通り今更ではある。ただ、今だからこそ改めて確認したいのだ。そうしなければ、これから行われることに対して、私の覚悟が決まらない。
「何度も言っていることではありますが、今回の結婚は何も問題がありません。あなたは大聖女ですからね。ラディオン王国でも類を見ない地位を持っている。そんなあなたと王族が結ばれるということは、王国の権威を確固たるものにします」
「ええ、それはわかっているつもりなのですが……」
「それに僕個人としても、レフィリアさんは素敵な女性であると思っていますから。あなたの夫になれるのは光栄だ。エレティナも、あなたが本当に姉になると喜んでいますよ」
「光栄なのは、私の方ですよ。喜ばしいことだとも、思っているんですけどね……」
第二王子の妻になれるというのは、とても光栄なことだった。
それも相手は、優しさに溢れたフォルード殿下だ。不満なんてある訳がない。
ということは、私は不安に思っているのだろうか。王族の妻になるということは、大きなことだ。それに伴い、様々な感情が渦巻く。私はそれが怖いのかもしれない。
「……ご安心ください。あなたのことは、僕が守ってみせます」
「フォルード殿下……」
「不安や心配などがあるなら、僕に打ち明けてください。あなたをここに連れて来たのは、僕ですからね。責任を持って、あなたを守り抜きます」
「……ありがとうございます」
私は、フォルード殿下から差し出された手を取った。
すると、不安が消えていく。なんというか、とても安心することができた。
思えば、彼には助けられてばかりである。エパイル王国から追放された時から、それは始まった。
そんな彼と一緒なら、きっと大丈夫だ。私はそんな風に思うことができていた。
「これからどうか、よろしくお願いします……フォルード殿下。いいえ、フォルード様」
「……ええ」
私とフォルード様は、そうやって密かに誓いを交わすのだった。
大聖女になってからしばらくして、私は何故か純白のドレスを着ることになっていた。
実際にドレスを身に纏っても、いまいち実感が湧いてこない。きちんと現実を受け止めたつもりだったのだが。
「レフィリアさん、よく似合っていますよ」
「あ、ありがとうございます。フォルード殿下」
そんな私に声をかけてくれたのは、フォルード殿下だった。
彼は、私の姿を見ながら笑みを浮かべている。それはつまり、先程言った言葉が本心であるということなのだろう。
それについては、素直に嬉しかった。私も思わず、笑顔を浮かべてしまう。
「それにしても、本当に良かったんですか?」
「おや、それは何のことでしょうか?」
「今回の結婚のことです。本当に私と結婚していいんですか?」
「……それはなんとも、今更な話ですね」
私の言葉に、フォルード殿下は苦笑いを浮かべていた。
確かに、彼の言う通り今更ではある。ただ、今だからこそ改めて確認したいのだ。そうしなければ、これから行われることに対して、私の覚悟が決まらない。
「何度も言っていることではありますが、今回の結婚は何も問題がありません。あなたは大聖女ですからね。ラディオン王国でも類を見ない地位を持っている。そんなあなたと王族が結ばれるということは、王国の権威を確固たるものにします」
「ええ、それはわかっているつもりなのですが……」
「それに僕個人としても、レフィリアさんは素敵な女性であると思っていますから。あなたの夫になれるのは光栄だ。エレティナも、あなたが本当に姉になると喜んでいますよ」
「光栄なのは、私の方ですよ。喜ばしいことだとも、思っているんですけどね……」
第二王子の妻になれるというのは、とても光栄なことだった。
それも相手は、優しさに溢れたフォルード殿下だ。不満なんてある訳がない。
ということは、私は不安に思っているのだろうか。王族の妻になるということは、大きなことだ。それに伴い、様々な感情が渦巻く。私はそれが怖いのかもしれない。
「……ご安心ください。あなたのことは、僕が守ってみせます」
「フォルード殿下……」
「不安や心配などがあるなら、僕に打ち明けてください。あなたをここに連れて来たのは、僕ですからね。責任を持って、あなたを守り抜きます」
「……ありがとうございます」
私は、フォルード殿下から差し出された手を取った。
すると、不安が消えていく。なんというか、とても安心することができた。
思えば、彼には助けられてばかりである。エパイル王国から追放された時から、それは始まった。
そんな彼と一緒なら、きっと大丈夫だ。私はそんな風に思うことができていた。
「これからどうか、よろしくお願いします……フォルード殿下。いいえ、フォルード様」
「……ええ」
私とフォルード様は、そうやって密かに誓いを交わすのだった。
75
お気に入りに追加
720
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
金喰い虫ですって!? 婚約破棄&追放された用済み聖女は、実は妖精の愛し子でした ~田舎に帰って妖精さんたちと幸せに暮らします~
アトハ
ファンタジー
「貴様はもう用済みだ。『聖女』などという迷信に踊らされて大損だった。どこへでも行くが良い」
突然の宣告で、国外追放。国のため、必死で毎日祈りを捧げたのに、その仕打ちはあんまりでではありませんか!
魔法技術が進んだ今、妖精への祈りという不確かな力を行使する聖女は国にとっての『金喰い虫』とのことですが。
「これから大災厄が来るのにね~」
「ばかな国だね~。自ら聖女様を手放そうなんて~」
妖精の声が聞こえる私は、知っています。
この国には、間もなく前代未聞の災厄が訪れるということを。
もう国のことなんて知りません。
追放したのはそっちです!
故郷に戻ってゆっくりさせてもらいますからね!
※ 他の小説サイト様にも投稿しています
役立たずの追放聖女は、可愛い神聖獣たちになつかれる唯一の存在でした
新野乃花(大舟)
恋愛
聖女の血を引くという特別な存在であることが示された少女、アリシラ。そんな彼女に目を付けたノラン第一王子は、その力を独り占めして自分のために利用してやろうと考え、アリシラの事を自身の婚約者として招き入れた。しかし彼女の力が自分の思い描いたものではなかったことに逆上したノランは、そのまま一方的にアリシラの事を婚約破棄の上で追放してしまう。すべてはアリシラの自業自得であるという事にし、深くは考えていなかったノランだったものの、この後判明するアリシラの特別な力を耳にしたとき、彼は心の底から自分の行いを後悔することとなるのであった…。
聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~
白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。
王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。
彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。
#表紙絵は、もふ様に描いていただきました。
#エブリスタにて連載しました。
お姉様に押し付けられて代わりに聖女の仕事をする事になりました
花見 有
恋愛
聖女である姉へレーナは毎日祈りを捧げる聖女の仕事に飽きて失踪してしまった。置き手紙には妹のアメリアが代わりに祈るように書いてある。アメリアは仕方なく聖女の仕事をする事になった。
【完結】婚約破棄された聖女はもう祈れない 〜妹こそ聖女に相応しいと追放された私は隣国の王太子に拾われる
冬月光輝
恋愛
聖女リルア・サウシールは聖地を領地として代々守っている公爵家の嫡男ミゲルと婚約していた。
リルアは教会で神具を用いて祈りを捧げ結界を張っていたのだが、ある日神具がミゲルによって破壊されてしまう。
ミゲルに策謀に嵌り神具を破壊した罪をなすりつけられたリルアは婚約破棄され、隣国の山中に追放処分を受けた。
ミゲルはずっとリルアの妹であるマリアを愛しており、思惑通りマリアが新たな聖女となったが……、結界は破壊されたままで獰猛になった魔物たちは遠慮なく聖地を荒らすようになってしまった。
一方、祈ることが出来なくなった聖女リルアは結界の維持に使っていた魔力の負担が無くなり、規格外の魔力を有するようになる。
「リルア殿には神子クラスの魔力がある。ぜひ、我が国の宮廷魔道士として腕を振るってくれないか」
偶然、彼女の力を目の当たりにした隣国の王太子サイラスはリルアを自らの国の王宮に招き、彼女は新たな人生を歩むことになった。
召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます
かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~
【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】
奨励賞受賞
●聖女編●
いきなり召喚された上に、ババァ発言。
挙句、偽聖女だと。
確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。
だったら好きに生きさせてもらいます。
脱社畜!
ハッピースローライフ!
ご都合主義万歳!
ノリで生きて何が悪い!
●勇者編●
え?勇者?
うん?勇者?
そもそも召喚って何か知ってますか?
またやらかしたのかバカ王子ー!
●魔界編●
いきおくれって分かってるわー!
それよりも、クロを探しに魔界へ!
魔界という場所は……とてつもなかった
そしてクロはクロだった。
魔界でも見事になしてみせようスローライフ!
邪魔するなら排除します!
--------------
恋愛はスローペース
物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。
婚約破棄から聖女~今さら戻れと言われても後の祭りです
青の雀
恋愛
第1話
婚約破棄された伯爵令嬢は、領地に帰り聖女の力を発揮する。聖女を嫁に欲しい破棄した侯爵、王家が縁談を申し込むも拒否される。地団太を踏むも後の祭りです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
今日この作品を見つけ、面白かったので1話から21話まで通しで読ませていただきました!
そして、確認なのですが19話と20話の間にもう1話あるように思えます。
感想ありがとうございます。
この作品で楽しんでいただけているなら嬉しいです。
ただ、19話から20話は既定の流れです。わかりにくくて申し訳ありません。