17 / 22
17.聖女からの知らせ
しおりを挟む
「ふむ、見事だったぞ。聖女エレティナよ。お主がいる限り、このラディオン王国は安泰だ」
「ありがとうございます、国王様……」
魔法のお披露目が終わってから、エレティナ様はゆっくりと国王様の前で跪いていた。
国王様は、どこか誇らしそうにしている。恐らく、彼もわかったのだろう。エレティナ様が、私の力を借りずに、先程の出来事を成し遂げたということを。
しかし、エレティナ様の表情はむしろ暗いような気がした。
その表情が、とても気になる。何かあったのだろうか。
「国王様、私から国民の皆さんに伝えたいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」
「む? ああ、構わないが……」
「それでは……」
国王様に許可を取ったエレティナ様は、ゆっくりと立ち上がり、前に出た。
集まっている国民の視線は、彼女に集まっている。そんな多くの視線にも、エレティナ様はまったく怯んでいない。
「皆さん、私は皆さんに伝えたいことがあります。私は聖女に就任した時よりも成長しています。以前よりも優秀な魔法使いになれたと自負しています」
「エレティナ様!」
「聖女様、万歳!」
王女であり聖女であるエレティナ様からの呼びかけに、国民達は湧いていた。
ただ、私とフォルード殿下は顔を見合わせていた。エレティナ様の声色が、何か決意を秘めているかのようだったからだ。
まさか彼女は、滅多なことでも言おうとしているのではないか。私とフォルード殿下は、そう思って少し息を呑んでいた。
「ですが、この力は決して私一人で手に入れたものではありません。支えてくれる人がいたのです。それは国民の皆さんです」
「聖女様……」
「そんな恐れ多い……」
「私達はただ、王女様をお慕いしていただけで……」
「そして、私はこの場に一人の方を呼びたいと思っています……レフィリアさん!」
そこでエレティナ様は、私の名前を呼んだ。
その呼びかけに、私はフォルード殿下の顔を見る。すると彼は、気まずそうな顔をしながらも頷いた。
状況的に、後ろに下がっていることはできなかった。私は意を決して、国民達の前に出て行く。
「あれは?」
「さあ、一体誰なんだ?」
「でも、王女様が呼びかけたということは……」
突然現れた謎の人物に、国民達は混乱しているようだった。
それは当たり前のことである。なんというか、私はとても不安だった。
エレティナ様は、何を考えているのか、それがわからない。まさかとは思うが、私が彼女に手助けしていたことなどを打ち明けるのだろうか。それはとても、まずいことなのだが。
「ありがとうございます、国王様……」
魔法のお披露目が終わってから、エレティナ様はゆっくりと国王様の前で跪いていた。
国王様は、どこか誇らしそうにしている。恐らく、彼もわかったのだろう。エレティナ様が、私の力を借りずに、先程の出来事を成し遂げたということを。
しかし、エレティナ様の表情はむしろ暗いような気がした。
その表情が、とても気になる。何かあったのだろうか。
「国王様、私から国民の皆さんに伝えたいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」
「む? ああ、構わないが……」
「それでは……」
国王様に許可を取ったエレティナ様は、ゆっくりと立ち上がり、前に出た。
集まっている国民の視線は、彼女に集まっている。そんな多くの視線にも、エレティナ様はまったく怯んでいない。
「皆さん、私は皆さんに伝えたいことがあります。私は聖女に就任した時よりも成長しています。以前よりも優秀な魔法使いになれたと自負しています」
「エレティナ様!」
「聖女様、万歳!」
王女であり聖女であるエレティナ様からの呼びかけに、国民達は湧いていた。
ただ、私とフォルード殿下は顔を見合わせていた。エレティナ様の声色が、何か決意を秘めているかのようだったからだ。
まさか彼女は、滅多なことでも言おうとしているのではないか。私とフォルード殿下は、そう思って少し息を呑んでいた。
「ですが、この力は決して私一人で手に入れたものではありません。支えてくれる人がいたのです。それは国民の皆さんです」
「聖女様……」
「そんな恐れ多い……」
「私達はただ、王女様をお慕いしていただけで……」
「そして、私はこの場に一人の方を呼びたいと思っています……レフィリアさん!」
そこでエレティナ様は、私の名前を呼んだ。
その呼びかけに、私はフォルード殿下の顔を見る。すると彼は、気まずそうな顔をしながらも頷いた。
状況的に、後ろに下がっていることはできなかった。私は意を決して、国民達の前に出て行く。
「あれは?」
「さあ、一体誰なんだ?」
「でも、王女様が呼びかけたということは……」
突然現れた謎の人物に、国民達は混乱しているようだった。
それは当たり前のことである。なんというか、私はとても不安だった。
エレティナ様は、何を考えているのか、それがわからない。まさかとは思うが、私が彼女に手助けしていたことなどを打ち明けるのだろうか。それはとても、まずいことなのだが。
42
お気に入りに追加
719
あなたにおすすめの小説
追放された聖女の悠々自適な側室ライフ
白雪の雫
ファンタジー
「聖女ともあろう者が、嫉妬に狂って我が愛しのジュリエッタを虐めるとは!貴様の所業は畜生以外の何者でもない!お前との婚約を破棄した上で国外追放とする!!」
平民でありながらゴーストやレイスだけではなくリッチを一瞬で倒したり、どんな重傷も完治してしまうマルガレーテは、幼い頃に両親と引き離され聖女として教会に引き取られていた。
そんな彼女の魔力に目を付けた女教皇と国王夫妻はマルガレーテを国に縛り付ける為、王太子であるレオナルドの婚約者に据えて、「お妃教育をこなせ」「愚民どもより我等の病を治療しろ」「瘴気を祓え」「不死王を倒せ」という風にマルガレーテをこき使っていた。
そんなある日、レオナルドは居並ぶ貴族達の前で公爵令嬢のジュリエッタ(バスト100cm以上の爆乳・KかLカップ)を妃に迎え、マルガレーテに国外追放という死刑に等しい宣言をしてしまう。
「王太子殿下の仰せに従います」
(やっと・・・アホ共から解放される。私がやっていた事が若作りのヒステリー婆・・・ではなく女教皇と何の力もない修道女共に出来る訳ないのにね~。まぁ、この国がどうなってしまっても私には関係ないからどうでもいいや)
表面は淑女の仮面を被ってレオナルドの宣言を受け入れたマルガレーテは、さっさと国を出て行く。
今までの鬱憤を晴らすかのように、着の身着のままの旅をしているマルガレーテは、故郷である幻惑の樹海へと戻っている途中で【宮女狩り】というものに遭遇してしまい、大国の後宮へと入れられてしまった。
マルガレーテが悠々自適な側室ライフを楽しんでいる頃
聖女がいなくなった王国と教会は滅亡への道を辿っていた。
辺境地で冷笑され蔑まれ続けた少女は、実は土地の守護者たる聖女でした。~彼女に冷遇を向けた街人たちは、彼女が追放された後破滅を辿る~
銀灰
ファンタジー
陸の孤島、辺境の地にて、人々から魔女と噂される、薄汚れた少女があった。
少女レイラに対する冷遇の様は酷く、街中などを歩けば陰口ばかりではなく、石を投げられることさえあった。理由無き冷遇である。
ボロ小屋に住み、いつも変らぬ質素な生活を営み続けるレイラだったが、ある日彼女は、住処であるそのボロ小屋までも、開発という名目の理不尽で奪われることになる。
陸の孤島――レイラがどこにも行けぬことを知っていた街人たちは彼女にただ冷笑を向けたが、レイラはその後、誰にも知られずその地を去ることになる。
その結果――?
団長サマの幼馴染が聖女の座をよこせというので譲ってあげました
毒島醜女
ファンタジー
※某ちゃんねる風創作
『魔力掲示板』
特定の魔法陣を描けば老若男女、貧富の差関係なくアクセスできる掲示板。ビジネスの情報交換、政治の議論、それだけでなく世間話のようなフランクなものまで存在する。
平民レベルの微力な魔力でも打ち込めるものから、貴族クラスの魔力を有するものしか開けないものから多種多様である。勿論そういった身分に関わらずに交流できる掲示板もある。
今日もまた、掲示板は悲喜こもごもに賑わっていた――
姉妹同然に育った幼馴染に裏切られて悪役令嬢にされた私、地方領主の嫁からやり直します
しろいるか
恋愛
第一王子との婚約が決まり、王室で暮らしていた私。でも、幼馴染で姉妹同然に育ってきた使用人に裏切られ、私は王子から婚約解消を叩きつけられ、王室からも追い出されてしまった。
失意のうち、私は遠い縁戚の地方領主に引き取られる。
そこで知らされたのは、裏切った使用人についての真実だった……!
悪役令嬢にされた少女が挑む、やり直しストーリー。
追放したんでしょ?楽しく暮らしてるのでほっといて
だましだまし
ファンタジー
私たちの未来の王子妃を影なり日向なりと支える為に存在している。
敬愛する侯爵令嬢ディボラ様の為に切磋琢磨し、鼓舞し合い、己を磨いてきた。
決して追放に備えていた訳では無いのよ?
妹が真の聖女だったので、偽りの聖女である私は追放されました。でも、聖女の役目はものすごく退屈だったので、最高に嬉しいです【完結】
小平ニコ
ファンタジー
「お姉様、よくも私から夢を奪ってくれたわね。絶対に許さない」
私の妹――シャノーラはそう言うと、計略を巡らし、私から聖女の座を奪った。……でも、私は最高に良い気分だった。だって私、もともと聖女なんかになりたくなかったから。
退職金を貰い、大喜びで国を出た私は、『真の聖女』として国を守る立場になったシャノーラのことを思った。……あの子、聖女になって、一日の休みもなく国を守るのがどれだけ大変なことか、ちゃんと分かってるのかしら?
案の定、シャノーラはよく理解していなかった。
聖女として役目を果たしていくのが、とてつもなく困難な道であることを……
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる