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14.王子達との対話

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「なるほど、少しだけ耳にはしていましたが、そのようなことがあったのですね」
「ええ……」

 エレティナ様との休日を終えた私は、フォルード殿下に呼び出されていた。
 彼から、今日一日あったことを伝えて欲しいと言われたのだ。
 兄として、妹の状態は気になっていたのだろう。騎士達がした噂を聞きつけて、すぐに私を呼び出したといった所か。

「少し意外ですね。あのエレティナが、そこまで熱くなるなんて」
「ふっ……そこまで意外なことでもないだろう。俺もお前も、熱くなるタイプだ。同じ血を引く妹も、同じだったというだけだ」
「そういうものでしょうか」

 ちなみにこの場には、もう一人の人物がいた。
 その人物とは、ヒュルバン第一王子である。彼もエレティナ様の兄なので、話を聞きたかったということらしい。
 どうやら、ラディオン王国の王子達は仲が良いようだ。微笑ましいものである。

「その、事後にあれこれ言っても仕方ないことだとは思うのですが、申し訳ありませんでした。大切な妹さんを……結構、痛めつけてしまって」
「む……」
「おや……」

 そこで私は、二人に謝っておくことにした。
 騎士達からも冷たい目を向けられていたし、私がしたことは割ととんでもないことなのだ。
 その発言に対して、二人は顔を見合わせている。なんというか、思ってもいなかったことを言われたかのような顔だ。

「そのような気遣いは、必要がないものだ」

 先に口を開いたのは、ヒュルバン殿下の方だった。
 彼は、嬉しそうに笑みを浮かべている。その意図が私はわからないため、背筋を伸ばしてしまう。

「俺やフォルードは、兄であるために、どうしてもエレティナを甘やかしてしまう所がある。しかしあれは責任が強い。きっとあなたのような人が必要だったのだ」
「ええ、僕もそう思います。これに関しては予想していないことでしたが、エレティナは良き指導者に巡り会えたということでしょう。いや、指導者という枠には収まりませんか。あなたならきっと、それ以上になれる」

 二人の王子は、私のことをとても褒めてくれていた。
 それは、とてもありがたいことである。彼らに認められているならば、これからも自分のやり方を変える必要がないという自信にも繋がっていく。

「ありがとうございます。私はこれからも、エレティナ様を支えていければと思っています」
「ええ、そうしていただけると、僕達も助かります」

 状況的に仕方ないので深くは考えていなかったが、こちらに王国に来るということに対して、不安を感じていないという訳でもなかった。
 しかしこちらの国で成すべきことの方針が決まったことで、少しだけ気が引き締まったような気がする。これで特に憂いもなく、前に進んでいけそうだ。
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