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13.想像以上の力
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「はあ、はあ……」
「ふう……」
闘技場にて、エレティナ様は息を切らせて膝をついていた。
一方で、私は立っている。それが今の私と彼女の力量差を表しているといえるだろう。
とはいえ、私も思っていた以上に消耗している。エレティナ様の才能は、想像以上かもしれない。
「限界です……こ、こんなに消耗したのは、初めてです」
「まあ、そうでしょうね。私もこんな風になったのは、久し振りです」
私は、ゆっくりとエレティナ様に手を差し伸べる。
すると彼女はそれを手に取り、ゆっくりと立ち上がった。
その表情は、清々しい。昨日などから考えると、信じられない程に明るい表情だ。
「レフィリアさんは、いつもこのような訓練をしていた訳ではないのですか?」
「もちろんです。まあ、昔はやっていましたが……」
「昔、ですか?」
私が魔法を学び始めた頃、孤児院の他の子供達に絡まれることがよくあった。
そういう時に私は魔法を使って、その子達を追い払っていた。その子達は悔しがって何度も私に挑むようになって、その度に私は限界まで魔法を使っていたのだ。
今思い返してみれば、あの経験があったからこそ、今の私があるといえる。やはり魔法というのは、ああいう場で磨かれるものだと思うのだ。
「でも、これは荒業ですからね。毎回やっていたら、体を壊してしまいますから、時々にした方がいいと思います」
「そういうものなのですね……」
「まあ、これからもこうやってお互いを高めていきましょう。さてと……」
そこで私は、周囲を見渡していた。
エレティナ様と戦っている間、騎士達の目が気になっていた。大切な王女を虐め抜いていた私に対して、敵意が向けられているのではないか。かなり心配である。
「あれ?」
「レフィリアさん、どうかされましたか?」
「いえ、その周りの騎士達が」
「うん?」
私の言葉に、エレティナ様は眉を引きつらせていた。
それは仕方ないことであるだろう。周囲の騎士達が、何故かわからないか泣いているのだ。非常に奇妙な状況である。
「あの、どうされたのですか?」
「いえ、エレティナ様とレフィリアさんのやり取りに感動して」
「姫様も、立派になられたものです。あの小さな姫様が……」
「ううっ……王や王妃、引いては王子方にも知らせなければ……」
「え? いや、やめてください、皆さん。なんだか、恥ずかしいですから」
どうやら騎士達の涙の原因は、エレティナ様であるらしい。
それはつまり、彼女が愛されているということなのだろう。それを理解して、私は苦笑いを浮かべるのだった。
「ふう……」
闘技場にて、エレティナ様は息を切らせて膝をついていた。
一方で、私は立っている。それが今の私と彼女の力量差を表しているといえるだろう。
とはいえ、私も思っていた以上に消耗している。エレティナ様の才能は、想像以上かもしれない。
「限界です……こ、こんなに消耗したのは、初めてです」
「まあ、そうでしょうね。私もこんな風になったのは、久し振りです」
私は、ゆっくりとエレティナ様に手を差し伸べる。
すると彼女はそれを手に取り、ゆっくりと立ち上がった。
その表情は、清々しい。昨日などから考えると、信じられない程に明るい表情だ。
「レフィリアさんは、いつもこのような訓練をしていた訳ではないのですか?」
「もちろんです。まあ、昔はやっていましたが……」
「昔、ですか?」
私が魔法を学び始めた頃、孤児院の他の子供達に絡まれることがよくあった。
そういう時に私は魔法を使って、その子達を追い払っていた。その子達は悔しがって何度も私に挑むようになって、その度に私は限界まで魔法を使っていたのだ。
今思い返してみれば、あの経験があったからこそ、今の私があるといえる。やはり魔法というのは、ああいう場で磨かれるものだと思うのだ。
「でも、これは荒業ですからね。毎回やっていたら、体を壊してしまいますから、時々にした方がいいと思います」
「そういうものなのですね……」
「まあ、これからもこうやってお互いを高めていきましょう。さてと……」
そこで私は、周囲を見渡していた。
エレティナ様と戦っている間、騎士達の目が気になっていた。大切な王女を虐め抜いていた私に対して、敵意が向けられているのではないか。かなり心配である。
「あれ?」
「レフィリアさん、どうかされましたか?」
「いえ、その周りの騎士達が」
「うん?」
私の言葉に、エレティナ様は眉を引きつらせていた。
それは仕方ないことであるだろう。周囲の騎士達が、何故かわからないか泣いているのだ。非常に奇妙な状況である。
「あの、どうされたのですか?」
「いえ、エレティナ様とレフィリアさんのやり取りに感動して」
「姫様も、立派になられたものです。あの小さな姫様が……」
「ううっ……王や王妃、引いては王子方にも知らせなければ……」
「え? いや、やめてください、皆さん。なんだか、恥ずかしいですから」
どうやら騎士達の涙の原因は、エレティナ様であるらしい。
それはつまり、彼女が愛されているということなのだろう。それを理解して、私は苦笑いを浮かべるのだった。
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