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12.これからのために
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「なるほど、それでお姉様はルライド様達ヴェルトン子爵家の協力を得られたのですね?」
「ええ……」
エンバラス伯爵家に戻ってきた私は、イルティアに事情を話していた。
私がヴェルトン子爵家に行っている間、彼女には別の貴族と話をしてもらっていた。故にお互いに報告しあっているのだ。
「あなたの方はどうだったの?」
「ドルベルト伯爵家のウェルーナ嬢は、レグファー様にかなりお怒りのようでした。ドルベルト伯爵は反対していましたが、本人はやる気満々でした」
「それで、結局協力は得られそうなの?」
「ええ、ドルベルト伯爵も最終的には折れていましたから」
イルティアの方も、上手くいったようである。
これなら、レグファー様を糾弾することができそうだ。二人も被害者が証言してくれば、充分であるだろう。
「ただイルティア、その前にあなたと話しておきたいことがあるの」
「あら? なんですか?」
「お父様のことよ。このままこれを乗り切ったとしても、お父様がいる限りまた同じことが起こりかねないと思うの」
「……まあ、それはそうかもしれませんね」
そこで私は、お父様に関することをイルティアに話してみることにした。
エンバラス伯爵家は、お父様に支配されている。レグファー様との婚約が破談にできたとしても、彼がいる限り私達の日常は変わらない。
故に私達は、お父様の支配から脱却するべきなのだ。今回の出来事は、そのためにも利用することができる。
「私はレグファー様と一緒に、お父様にも沈んでもらいたいと思っているわ。これは明らかに、お父様のミスだもの。それを糾弾することによって、お父様には失脚してもらうわ」
「失脚、ですか? しかしながら、お父様がミスを認めるでしょうか?」
「その辺りは、お祖父様やお祖母様に掛け合ってみたいと思うの」
「……あの二人に、ですか」
引退した先代のエンバラス伯爵夫妻は、今でも強い影響力を持っている。その二人に今回のお父様の失敗を伝えて、伯爵家の主導権が私に回って来るように根回ししておくのだ。
恐らく、あの二人ならこちらの要求を呑んでくれるはずである。厳格な人達なので、お父様の肩を特別持ったりはしないだろう。
「しかし、あの二人に掛け合う場合……というよりも、エンバラス伯爵家の主導権を握るならお姉様お一人では難しいのではありませんか?」
「結婚相手か、婚約者がいた方がいいということよね? その点に関しては問題ないわ。もう既にお願いしてあるもの」
「お願い? それは、誰に?」
「ルライド様によ」
私の言葉に、イルティアは目を丸めていた。
そんな彼女の表情に、私は笑みを浮かべるのだった。
「ええ……」
エンバラス伯爵家に戻ってきた私は、イルティアに事情を話していた。
私がヴェルトン子爵家に行っている間、彼女には別の貴族と話をしてもらっていた。故にお互いに報告しあっているのだ。
「あなたの方はどうだったの?」
「ドルベルト伯爵家のウェルーナ嬢は、レグファー様にかなりお怒りのようでした。ドルベルト伯爵は反対していましたが、本人はやる気満々でした」
「それで、結局協力は得られそうなの?」
「ええ、ドルベルト伯爵も最終的には折れていましたから」
イルティアの方も、上手くいったようである。
これなら、レグファー様を糾弾することができそうだ。二人も被害者が証言してくれば、充分であるだろう。
「ただイルティア、その前にあなたと話しておきたいことがあるの」
「あら? なんですか?」
「お父様のことよ。このままこれを乗り切ったとしても、お父様がいる限りまた同じことが起こりかねないと思うの」
「……まあ、それはそうかもしれませんね」
そこで私は、お父様に関することをイルティアに話してみることにした。
エンバラス伯爵家は、お父様に支配されている。レグファー様との婚約が破談にできたとしても、彼がいる限り私達の日常は変わらない。
故に私達は、お父様の支配から脱却するべきなのだ。今回の出来事は、そのためにも利用することができる。
「私はレグファー様と一緒に、お父様にも沈んでもらいたいと思っているわ。これは明らかに、お父様のミスだもの。それを糾弾することによって、お父様には失脚してもらうわ」
「失脚、ですか? しかしながら、お父様がミスを認めるでしょうか?」
「その辺りは、お祖父様やお祖母様に掛け合ってみたいと思うの」
「……あの二人に、ですか」
引退した先代のエンバラス伯爵夫妻は、今でも強い影響力を持っている。その二人に今回のお父様の失敗を伝えて、伯爵家の主導権が私に回って来るように根回ししておくのだ。
恐らく、あの二人ならこちらの要求を呑んでくれるはずである。厳格な人達なので、お父様の肩を特別持ったりはしないだろう。
「しかし、あの二人に掛け合う場合……というよりも、エンバラス伯爵家の主導権を握るならお姉様お一人では難しいのではありませんか?」
「結婚相手か、婚約者がいた方がいいということよね? その点に関しては問題ないわ。もう既にお願いしてあるもの」
「お願い? それは、誰に?」
「ルライド様によ」
私の言葉に、イルティアは目を丸めていた。
そんな彼女の表情に、私は笑みを浮かべるのだった。
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