7 / 7
7
しおりを挟む
私とお兄様は、お父様から提案をされることになった。
それは、一体何なのだろうか。そう思いながらも、私は少し期待している。もしかしたら、お父様は私にとって嬉しいことを言おうとしているのではないかと。
「ヴィルクド、ナゼリア、お前達二人で婚約しないか?」
「なっ……!」
「お父様……!」
お父様の口から出た言葉に、お兄様は驚いていた。
それは、当然だろう。まさか、そんな提案が出てくるなんて、彼は思ってもいなかったはずである。
ただ、私には予測できていた。この状況から考えて、そうだと思ったのだ。
「父上、急に何を言っているのですか? ナゼリアは、俺にとって妹なんですよ?」
「まったく、我が息子ながら情けない。お前は、どこまで朴念仁なんだ」
「朴念仁?」
「はあ……」
お兄様の言葉に、お父様はゆっくりとため息を吐いた。
そして、その視線を私に向けてくる。
薄々わかっていたことだが、私のお兄様に対する感情は結構な人に知られていたようだ。お父様が視線を向けてきているのは、恐らくそういうことなのだろう。
「ナゼリア、後は任せてもいいかな?」
「……はい、ありがとうございます」
お父様は少し申し訳なさそうな顔をしている。私はそれに笑顔を返す。
お父様の気持ちはわかっている。彼も貴族だ。色々と悩んだだろう。
それでも、この結果をもたらしてくれたことに、私は感謝するべきだ。だから、そんな顔はしないで欲しかったのである。
「お兄様、聞いてください……私、お兄様のことが好きです」
「なっ……!」
私は、躊躇わずに自分の気持ちをお兄様に打ち明けた。
ここまでお父様が状況を作ってくれたのだから、そうするべきだと思ったのだ。
「お前が、俺のことを好きだと?」
「ええ……気づいてはいませんでしたか?」
「ああ、正直、とても驚いている……」
お兄様は、私の告白に驚いていた。それはそうだろう。彼からしてみれば、妹から突然告白されるなんて、思ってもなかったことだったはずだ。
「……だが、そうか。俺のことを好きか」
「はい……」
「お前がそう思ってくれていることは、嬉しい。本当に、俺でいいのか?」
「お兄様が、いいのです」
私の言葉に、お兄様は笑顔を見せてくれた。
それが、嬉しかった。彼が、私を拒絶する気がないと伝わってきたからだ。
「ならば、俺はお前をこれからも守ろう。今度は兄としてではなく、婚約者として……そして、いずれは夫として」
「はい……よろしくお願いします」
お兄様の言葉に、私は泣きそうになった。
彼と結ばれる。これからも守ると言ってもらえる。これ程嬉しいことは、他にない。
こうして、私はお兄様と結ばれることになったのだった。
それは、一体何なのだろうか。そう思いながらも、私は少し期待している。もしかしたら、お父様は私にとって嬉しいことを言おうとしているのではないかと。
「ヴィルクド、ナゼリア、お前達二人で婚約しないか?」
「なっ……!」
「お父様……!」
お父様の口から出た言葉に、お兄様は驚いていた。
それは、当然だろう。まさか、そんな提案が出てくるなんて、彼は思ってもいなかったはずである。
ただ、私には予測できていた。この状況から考えて、そうだと思ったのだ。
「父上、急に何を言っているのですか? ナゼリアは、俺にとって妹なんですよ?」
「まったく、我が息子ながら情けない。お前は、どこまで朴念仁なんだ」
「朴念仁?」
「はあ……」
お兄様の言葉に、お父様はゆっくりとため息を吐いた。
そして、その視線を私に向けてくる。
薄々わかっていたことだが、私のお兄様に対する感情は結構な人に知られていたようだ。お父様が視線を向けてきているのは、恐らくそういうことなのだろう。
「ナゼリア、後は任せてもいいかな?」
「……はい、ありがとうございます」
お父様は少し申し訳なさそうな顔をしている。私はそれに笑顔を返す。
お父様の気持ちはわかっている。彼も貴族だ。色々と悩んだだろう。
それでも、この結果をもたらしてくれたことに、私は感謝するべきだ。だから、そんな顔はしないで欲しかったのである。
「お兄様、聞いてください……私、お兄様のことが好きです」
「なっ……!」
私は、躊躇わずに自分の気持ちをお兄様に打ち明けた。
ここまでお父様が状況を作ってくれたのだから、そうするべきだと思ったのだ。
「お前が、俺のことを好きだと?」
「ええ……気づいてはいませんでしたか?」
「ああ、正直、とても驚いている……」
お兄様は、私の告白に驚いていた。それはそうだろう。彼からしてみれば、妹から突然告白されるなんて、思ってもなかったことだったはずだ。
「……だが、そうか。俺のことを好きか」
「はい……」
「お前がそう思ってくれていることは、嬉しい。本当に、俺でいいのか?」
「お兄様が、いいのです」
私の言葉に、お兄様は笑顔を見せてくれた。
それが、嬉しかった。彼が、私を拒絶する気がないと伝わってきたからだ。
「ならば、俺はお前をこれからも守ろう。今度は兄としてではなく、婚約者として……そして、いずれは夫として」
「はい……よろしくお願いします」
お兄様の言葉に、私は泣きそうになった。
彼と結ばれる。これからも守ると言ってもらえる。これ程嬉しいことは、他にない。
こうして、私はお兄様と結ばれることになったのだった。
4
お気に入りに追加
157
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(3件)
あなたにおすすめの小説
使用人の私を虐めていた公爵令嬢は、婚約者の王子にそれが見つかり婚約破棄されました。その後、私は王城で働かせてもらうことになりました。
木山楽斗
恋愛
リメリアは、フェルリンド公爵家に仕えている使用人である。
彼女は、公爵家の長女であるアルキーナによく思われていなかった。そのため、リメリアは彼女にいびられる日々を送っていた。
ある時、リメリアはアルキーナによって怪我を負わされた。そんな彼女を助けてくれたのは、第三王子のウェリクスだった。
彼は、アルキーナの婚約者である。しかし、彼女に対して疑念を持っているようだった。
そんなウェリクスは、リメリアに事情を聞いてきた。紆余曲折の末、彼女はウェリクスにアルキーナの犯行を伝えるのだった。
その結果、ウェリクスはアルキーナに婚約破棄を言い渡した。使用人を虐めるような女性とは一緒にいられない。それが、彼の主張だった。
アルキーナと色々とあったため、リメリアは公爵家に居づらくなってしまった。
そんな彼女を、ウェリクスは王城に招いてくれた。
こうして、リメリアは公爵家から解放されて、王城で働くことになったのである。
商人として成功した私に、妹と元婚約者が資金難なので助けて欲しいと言ってきました。あなた達が私を公爵家から追放したのに、助ける訳ないでしょう?
木山楽斗
恋愛
商人一家であるウォングレイ家の夫人アルシーナには、とある秘密があった。彼女は、異国の公爵家の人間だったのである。
アルシーナは、浮気していた妹と婚約者によって、公爵家から追放されていた。邪魔になった彼女を、二人は策略を企てて罪人に仕立て上げたのである。
公爵家を追放されて、アルシーナは行く当てのない旅をしていた。そこで、夫であるクラールと出会い、ウォングレイ夫人となったのである。
アルシーナには商才があったため、夫とともにその事業を成功させていた。
夫との仲も良好であり、彼女は順風満帆な人生を送っていた。
そんな彼女の元に、ある日一通の手紙が届く。それは、妹と元婚約者からの手紙だった。
なんでも、公爵家が財政難になり、支援して欲しいらしいのだ。どうやら、彼女が商人となっていることを聞きつけて、こんな手紙を送ってきたようだ。
しかし、自らを追放する原因を作った二人を支援する理由は、アルシーナにはなかった。
そのため、彼女は二人の提案を一蹴するのだった。
異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~
水無月 静琉
ファンタジー
神様のミスによって命を落とし、転生した茅野巧。様々なスキルを授かり異世界に送られると、そこは魔物が蠢く危険な森の中だった。タクミはその森で双子と思しき幼い男女の子供を発見し、アレン、エレナと名づけて保護する。格闘術で魔物を楽々倒す二人に驚きながらも、街に辿り着いたタクミは生計を立てるために冒険者ギルドに登録。アレンとエレナの成長を見守りながらの、のんびり冒険者生活がスタート!
***この度アルファポリス様から書籍化しました! 詳しくは近況ボードにて!
派手好きで高慢な悪役令嬢に転生しましたが、バッドエンドは嫌なので地味に謙虚に生きていきたい。
木山楽斗
恋愛
私は、恋愛シミュレーションゲーム『Magical stories』の悪役令嬢アルフィアに生まれ変わった。
彼女は、派手好きで高慢な公爵令嬢である。その性格故に、ゲームの主人公を虐めて、最終的には罪を暴かれ罰を受けるのが、彼女という人間だ。
当然のことながら、私はそんな悲惨な末路を迎えたくはない。
私は、ゲームの中でアルフィアが取った行動を取らなければ、そういう末路を迎えないのではないかと考えた。
だが、それを実行するには一つ問題がある。それは、私が『Magical stories』の一つのルートしかプレイしていないということだ。
そのため、アルフィアがどういう行動を取って、罰を受けることになるのか、完全に理解している訳ではなかった。プレイしていたルートはわかるが、それ以外はよくわからない。それが、私の今の状態だったのだ。
だが、ただ一つわかっていることはあった。それは、アルフィアの性格だ。
彼女は、派手好きで高慢な公爵令嬢である。それならば、彼女のような性格にならなければいいのではないだろうか。
そう考えた私は、地味に謙虚に生きていくことにした。そうすることで、悲惨な末路が避けられると思ったからだ。
王室の醜聞に巻き込まれるのはごめんです。浮気者の殿下とはお別れします。
あお
恋愛
8歳の時、第二王子の婚約者に選ばれたアリーナだが、15歳になって王立学園に入学するまで第二王子に会うことがなかった。
会えなくても交流をしたいと思って出した手紙の返事は従者の代筆。内容も本人が書いたとは思えない。
それでも王立学園に入学したら第二王子との仲を深めようとしていた矢先。
第二王子の浮気が発覚した。
この国の王室は女癖の悪さには定評がある。
学生時代に婚約破棄され貴族令嬢としての人生が終わった女性も数知れず。
蒼白になったアリーナは、父に相談して婚約を白紙に戻してもらった。
しかし騒ぎは第二王子の浮気にとどまらない。
友人のミルシテイン子爵令嬢の婚約者も第二王子の浮気相手に誘惑されたと聞いて、友人5人と魔導士のクライスを巻き込んで、子爵令嬢の婚約者を助け出す。
全14話。
番外編2話。第二王子ルーカスのざまぁ?とヤンデレ化。
タイトル変更しました。
前タイトルは「会ってすぐに殿下が浮気なんて?! 王室の醜聞に巻き込まれると公爵令嬢としての人生が終わる。婚約破棄? 解消? ともかく縁を切らなくちゃ!」。
妾の子である公爵令嬢は、何故か公爵家の人々から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
私の名前は、ラルネア・ルーデイン。エルビネア王国に暮らす公爵令嬢である。
といっても、私を公爵令嬢といっていいのかどうかはわからない。なぜなら、私は現当主と浮気相手との間にできた子供であるからだ。
普通に考えて、妾の子というのはいい印象を持たれない。大抵の場合は、兄弟や姉妹から蔑まれるはずの存在であるはずだ。
しかし、何故かルーデイン家の人々はまったく私を蔑まず、むしろ気遣ってくれている。私に何かあれば、とても心配してくれるし、本当の家族のように扱ってくれるのだ。たまに、行き過ぎていることもあるが、それはとてもありがたいことである。
※下記の関連作品を読むと、より楽しめると思います。
甘やかされて育った妹が何故婚約破棄されたかなんて、わかりきったことではありませんか。
木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるネセリアは、家でひどい扱いを受けてきた。
継母と腹違いの妹は、彼女のことをひどく疎んでおり、二人から苛烈に虐め抜かれていたのである。
実の父親は、継母と妹の味方であった。彼はネセリアのことを見向きもせず、継母と妹に愛を向けていたのだ。
そんなネセリアに、ある時婚約の話が持ち上がった。
しかしその婚約者に彼女の妹が惚れてしまい、婚約者を変えることになったのだ。
だが、ネセリアとの婚約を望んでいた先方はそれを良しとしなかったが、彼らは婚約そのものを破棄して、なかったことにしたのだ。
それ妹達は、癇癪を起した。
何故、婚約破棄されたのか、彼らには理解できなかったのだ。
しかしネセリアには、その理由がわかっていた。それ告げた所、彼女は伯爵家から追い出されることになったのだった。
だがネセリアにとって、それは別段苦しいことという訳でもなかった。むしろ伯爵家の呪縛から解放されて、明るくなったくらいだ。
それからネセリアは、知人の助けを借りて新たな生活を歩むことにした。かつてのことを忘れて気ままに暮らすことに、彼女は幸せを覚えていた。
そんな生活をしている中で、ネセリアは伯爵家の噂を耳にした。伯爵家は度重なる身勝手により、没落しようとしていたのだ。
【完結】あなたは知らなくていいのです
楽歩
恋愛
無知は不幸なのか、全てを知っていたら幸せなのか
セレナ・ホフマン伯爵令嬢は3人いた王太子の婚約者候補の一人だった。しかし王太子が選んだのは、ミレーナ・アヴリル伯爵令嬢。婚約者候補ではなくなったセレナは、王太子の従弟である公爵令息の婚約者になる。誰にも関心を持たないこの令息はある日階段から落ち…
え?転生者?私を非難している者たちに『ざまぁ』をする?この目がキラキラの人はいったい…
でも、婚約者様。ふふ、少し『ざまぁ』とやらが、甘いのではなくて?きっと私の方が上手ですわ。
知らないからー幸せか、不幸かーそれは、セレナ・ホフマン伯爵令嬢のみぞ知る
※誤字脱字、勉強不足、名前間違いなどなど、どうか温かい目でm(_ _"m)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
1行目、「…家族の一員となったのは、今から『数十年前』のことである」
十数年前では?
ご指摘ありがとうございます。
修正させていただきます。
たぶん両想いで、たぶんハッピーエンド(笑)
主人公の葛藤や切なさが余り伝わってこなくって、お父様やお兄様の心情はほぼ全く出てこなくって、淡々と終わってしまった感じ(^^;)
むしろ これから(結末の続き)の方が面白いことになっていく気が……。
お兄様の心情の変化とか、主人公がお兄様を口説こうとするのか とか、お兄様や主人公を狙ってた人たちとか ww
感想ありがとうございます。
中途半端な所で終わって、申し訳ありません。
あらすじの、彼の兄とありますが彼女の兄かなと。
2話の声をかけてきた男が最初は伯爵となっているのに、その後からは侯爵になっています。
ご指摘ありがとうございます。
修正させていただきます。