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19.家族として

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「……エレティア嬢はご家族と仲がよろしいのですね?」
「そ、そうですね。仲は良い方だと思っています。でも、すみません。お兄様の態度が少し冷たくて……」
「いいえ、問題ありませんよ。むしろ、好感を覚えましたから」

 私の家族と会ったジオート様は、笑顔を浮かべてくれていた。
 その笑みに、私は安心している。ジオート様に対して、お兄様が刺々しかったからだ。

 お兄様が、私のことを愛してくれていることは理解していた。
 ただ、その愛は大き過ぎるのかもしれない。何の非もないジオート様にさえ、そういう態度を取るというのは、そう言わざるを得ないだろう。

「それに、エレティア嬢に最初に婚約を申し込んだのだが、あのルベルス伯爵令息ですからね。警戒するのも当然ということでしょう」
「いえ、お兄様はジオート様に対して警戒などはしていないと思います。警戒していたら反対するはずですから」
「えっと、それはつまり……」
「単純に、私が結婚するのが嫌というか……」
「ふふ、そうですか」

 ジオート様は、どこか嬉しそうにしていた。
 私のお兄様から少なからず敵意を向けられているという状況は、彼にとってはそれ程いい状況ではないはずなのだが。

「僕も家族の一員として認められるように、頑張らないといけませんね」
「そう言っていただけるのはありがたいです。といっても、私が嫁ぐ形になる訳ですから、その心配を真にするのは私の方でしょうけれど」
「それについては、問題ありませんよ。僕の両親も弟達も、エレティア嬢のことを認めます。それは僕が保証しますよ」
「そ、そうですか……」

 私にとって、フォルガー侯爵家の人々との関係はとても心配なことだった。
 それを保証してもらえるのは、とても心強い。もちろん、それで完全に安心することができるという訳ではないのだが。

「あなたは、本当に美しい人ですからね……」

 私を見ながら、ジオート様はゆっくりとそう呟いた。
 彼は本当に心から、私を褒め称えてくれている。それはとても嬉しいのだが、ここまで真っ直ぐな言葉を受け止めるのは少々難しい。やはり恥ずかしいのだ。

「美しいのは、ジオート様もそうだと思いますけど……」
「ありがとうございます」
「す、少し照れていただけませんか?」
「照れていない訳ではありませんよ。ただ、それ以上に嬉しいというだけです」

 試しに褒めてみたが、彼の表情はそれ程変わらなかった。
 なんというか、彼には敵わないような気がする。その明るい笑顔に、私はそんなことを思っていた。

 しかし何はともあれ、今の状況は私が望んでいたものだ。
 ジオート様という最高の婚約者に恵まれ、オーデン伯爵家にも貢献できる。一時はどうなるかと思っていたが、本当に幸福な未来を掴み取ることができそうだ。

 私は再び、ジオート様の顔を見る。
 彼の笑顔に、私はこれから訪れるであろう明るい未来に、そっと思いを馳せるのだった。


END
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みんなの感想(1件)

hana
2024.03.01 hana

家名ですが…
オーバンorオーデンどちらなのでしょう?

木山楽斗
2024.03.03 木山楽斗

ご指摘ありがとうございます。
オーデンが正しいです。
間違っていた点は修正させていただきます。

解除

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