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6.見下した態度

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「おっと、こちらの自己紹介がまだだったね? 僕は、ラガルス伯爵家の長男ルベルス。以後、お見知りおきを」
「ご丁寧にどうも」

 ルベルスと名乗った男性は、私に対してゆっくりと一礼した。
 その動作自体は、綺麗ではある。ただ私には、少し芝居がかっている気がしてならなかった。

 やはり彼には、何かあるのかもしれない。
 先程まで話していた二人の令嬢も、なんとなく彼のことを怖がっているような気がするし、私の勘は多分間違っていない。

「実の所、エレティア嬢とは前々から話してみたいと思っていた。君や君の家のお噂は聞いているからね」
「そうでしたか。それはありがとうございます。私も、ラガルス伯爵家のお噂は聞いております。現在のラガルス伯爵は、荒れていた領地のボルファンドを見事に統治したと」
「父上の功績を知っていたとは。それは、僕にとって嬉しい事実だ。父上は僕にとって、最も尊敬できる人だからね」
「そうですか」

 とりあえず私は、持っていたラガルス伯爵家の情報を出してみた。
 その感触は、悪くはない。少なくとも、ルベルス様が父親のことを尊敬しているということは、間違いないだろう。

 もっとも、ラガルス伯爵のボルファンドの統治は、強引だったとも聞いたことがある。
 端的に言えば、血みどろだったらしい。それでも評価する者もいるが、私としてはどちらかというとマイナスな印象を抱いている。
 もちろんそれぞれの事情はあるのだろうが、それでも過激な手段に出る者を肯定することはできない。オーデン伯爵家は、そういう風潮ではないからだ。

 つまり、血みどろな統治をした父親を尊敬しているとルベルス様の印象も、そこまでいいという訳ではない。
 しかし、こういった場で彼のことを無下にするべきではないだろう。彼に明確な非があるならともかく、今の彼は極めて紳士的な対応をしてくれている訳だし。

「さてと、せっかくなら一曲いかがですか。エレティア嬢……失礼ながら、お相手はいらっしゃらないのでしょう?」

 ルベルス様の言葉に、私はすぐに思考を改めることになった。
 今の言葉は、明らかに失礼な言葉だ。私に対する侮蔑の感情が含まれていた。
 ただもちろん、これだけで彼のことを無下にすることはできない。変な言い方ではあるが、彼はまだ失礼過ぎていないのだから。

「わかりました。それなら、よろしくお願いします」

 そんなことを思いながら、私はゆっくりと一礼した後、ルベルス様の手を取った。
 そして私達は、しばらくの間踊るのだった。
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