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45.真っ直ぐな人
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少し時間が経って、アドルクさんは落ち着いた。
それから彼は、家の中に招き入れてくれた。家の中は片付いている。今は一人暮らしであると聞いたが、掃除は行き届いているようだ。
「えっと、それでどうしてアドルクさんはあのように謝られたのですか?」
「いや、よく考えてみれば、あなたは大変な境遇にあると思ってしまって……」
「大変な境遇?」
「継母や妹だったと思っていた者達に騙されていて、父親が母親を……それらのことで、没落までしてしまって。色々と大変だったでしょう。それなのに、俺は随分と冷たい物言いをしてしまったと思ったんです。本当に、申し訳ありませんでした」
アドルクさんは、本当に申し訳なさそうに謝ってきた。
その様子に、私とクレンド様は顔を見合わせる。
アドルクさんは、本当に良い人なのだろう。その謝罪からは、それが伝わってきた。
「別に気にしないでください。私は平気ですから」
「平気?」
「こう見えても貴族ですからね。自分で言うのもなんですが、私も結構タフなんですよ」
私は、アドルクさんに対して胸を張った。
少々自信過剰するような気もするが、彼を納得させるにはこれくらいが丁度良いだろう。隣にいるクレンド様が少し笑っているのが、気になる所ではあるが。
「なるほど、俺より年下なのに立派な人ですね……まったく、自分の小ささが嫌になってしまいます」
「いえ、小さいなんてことはありませんよ。アドルクさんは、しっかりとした人だと思います」
「そうですか? そう言っていただけるのは嬉しい限りですが……」
「ええ、そうですよ。アドルクさんがそういう人で、本当に良かったと思っています」
アドルクさんは、とても真っ直ぐな人だった。
自身を伯爵家の令嬢だと思い、ずっと私のことを恨んでいたロメリアとは大違いである。
彼女のように恨みを向けて来られていたら、参っていた所だ。こういう風に笑い合えるのは、私としてはとても嬉しいことである。
「まあ、半分しか血は繋がっていませんが、私にとってアドルクさんは兄にあたる訳ですからね」
「兄……そうですか。そういうことになるのですね」
「気付いていなかったんですか?」
「いや、まあ、そうですね……あまりそういった観点から考えてはいなかったと言いますか」
私の言葉に、アドルクさんは少し気恥ずかしそうにしながら頭をかいていた。
初対面の相手に急に妹なんて言われて、すぐに受け入れられる訳ではないだろう。
ただ、悪い反応ではないような気がする。そのことに私は安心した。やはり彼は、ロメリアとは違うようだ。
それから彼は、家の中に招き入れてくれた。家の中は片付いている。今は一人暮らしであると聞いたが、掃除は行き届いているようだ。
「えっと、それでどうしてアドルクさんはあのように謝られたのですか?」
「いや、よく考えてみれば、あなたは大変な境遇にあると思ってしまって……」
「大変な境遇?」
「継母や妹だったと思っていた者達に騙されていて、父親が母親を……それらのことで、没落までしてしまって。色々と大変だったでしょう。それなのに、俺は随分と冷たい物言いをしてしまったと思ったんです。本当に、申し訳ありませんでした」
アドルクさんは、本当に申し訳なさそうに謝ってきた。
その様子に、私とクレンド様は顔を見合わせる。
アドルクさんは、本当に良い人なのだろう。その謝罪からは、それが伝わってきた。
「別に気にしないでください。私は平気ですから」
「平気?」
「こう見えても貴族ですからね。自分で言うのもなんですが、私も結構タフなんですよ」
私は、アドルクさんに対して胸を張った。
少々自信過剰するような気もするが、彼を納得させるにはこれくらいが丁度良いだろう。隣にいるクレンド様が少し笑っているのが、気になる所ではあるが。
「なるほど、俺より年下なのに立派な人ですね……まったく、自分の小ささが嫌になってしまいます」
「いえ、小さいなんてことはありませんよ。アドルクさんは、しっかりとした人だと思います」
「そうですか? そう言っていただけるのは嬉しい限りですが……」
「ええ、そうですよ。アドルクさんがそういう人で、本当に良かったと思っています」
アドルクさんは、とても真っ直ぐな人だった。
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彼女のように恨みを向けて来られていたら、参っていた所だ。こういう風に笑い合えるのは、私としてはとても嬉しいことである。
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「兄……そうですか。そういうことになるのですね」
「気付いていなかったんですか?」
「いや、まあ、そうですね……あまりそういった観点から考えてはいなかったと言いますか」
私の言葉に、アドルクさんは少し気恥ずかしそうにしながら頭をかいていた。
初対面の相手に急に妹なんて言われて、すぐに受け入れられる訳ではないだろう。
ただ、悪い反応ではないような気がする。そのことに私は安心した。やはり彼は、ロメリアとは違うようだ。
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