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12.奔放な者達

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 私はクレンド様とともに、パイトンという小さな村まで来ていた。
 その長閑な村には、まばらに人がいる。ここでペルリナは産まれて、また彼女の娘であるロメリアも産まれたということらしい。

「あなたがハーティアさんですか?」
「ええ、いかにも。私がハーティアです」

 私達の目の前には、老婆がいる。
 彼女はこの村のまとめ役のような女性で、産婆でもあるらしい。
 この村で生まれた子供のことは、彼女に聞けばなんでもわかる。それがこのパイトンで暮らす人達の総意であるらしい。

「貴族の方が、このような村に用事とは驚きです。一体、何をしに来られたのでしょうか?」
「ペルリナさんのことを聞きたくてこちらに伺いました……彼女が伯爵家に嫁いだのですから、それは充分予測できたのではありませんか?」
「言われてみれば、それはそうかもしれませんね。しかし、嫁ぐ前にも来なかった方々が来たものですから、失念していました」
「なるほど、確かにそれはあなたの言う通りですね」

 ハーティアさんは、私達のことを警戒しているようだった。
 急に貴族の二人組が来たのだから、その反応も当然だろうか。

「ペルリナさんのことは、よく知られているのですか?」
「もちろんですとも。あの子はこの村始まっての問題児ですからね」
「問題児? というと」
「お転婆というと可愛すぎる程に、あの子は奔放でしたから。昔は可愛げもあったのですが、大人になったら、訳のわからないことばかりし出して」
「そうでしたか……」

 ハーティアさんは、愛憎半ばといった感じでペルリナのことを語っていた。
 生まれた時から知っている彼女からしてみれば、ペルリナは可愛いくもあるのだろう。ただ、少なくとも最近の彼女のことは快く思っていなさそうだ。

「ああそうだ。バンカルさんという方のことも聞いていいですか? ペルリナさんと仲が良かったようですが……」
「バンカル……あれも、ペルリナに負けず劣らず奔放でした。しかし、最も許せないのは、私よりも先に逝ったことです」
「事故で亡くなったと聞いていますが……」
「事故、そうですね。あれは事故だったのでしょうか……」
「ハーティアさん? どうされたのですか?」

 クレイド様の言葉に、ハーティアさんは遠くを見つめた。
 その表情には、悲しみや疑念といった感情が溢れている。

 どうやらバンカルという男性の死には何かがありそうだ。そこに、ペルリナも関わっているのだろうか。
 その可能性がない訳ではない。彼女が過去を隠していた理由が、もしかしてここにあるのではないだろうか。
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