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4.微妙な態度

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 私はイフェールを連れて、メルティアの部屋に来ていた。
 事前に説明しておいたため、妹はいとこの来訪に対して特に驚いてはいない。ただ、緊張はしているようだ。いとこ同士割と仲良くしていたのだが、距離感がある気がする。

「久し振りだな。メルティア、俺のことはわかるのか?」
「あ、ええ、わかります。アドヴェルド王国の第二王子、イフェール殿下ですよね?」
「……なんだか少し他人行儀だな」

 メルティアの言葉を受けて、イフェールは私に小声で話しかけてきた。
 彼からしてみれば、いとこというのが欲しかった回答だろう。私達の距離感を考えれば、王国の第二王子だというだけなのは少し味気ない。
 しかしメルティアは、イフェールといとこであるということは理解していたはずだ。事前に説明した時も、それはわかっていると言っていたのだが。

「まあ、改めて自己紹介をしておくと、俺はイフェール・アドヴェルド、メルティアやミレティアのいとこにあたる」
「あ、ああ、そうでしたね」

 イフェールが自己紹介すると、メルティアは少し焦ったように言葉を発していた。
 単純に失念していただけにしては、反応が少しで大袈裟だ。大きな失敗をしたというような顔を、メルティアはしている。

 そういった反応を、今までもされたことはあった。目覚めてからの彼女は、私達との距離感を正しく認識できていないようだ。そしてそのずれに対して、激しく反応する。
 そんな彼女の心中は、私達にはわからない。記憶の混乱というものがどういったものかも正しくわからない訳だし、理解するのは恐らく無理だろう。
 それがなんというか、とてももどかしかった。それがわかれば、もっとメルティアに寄り添うことができるというのに。

「ごめんなさい、少し記憶が混乱していて……」
「ああ、それは聞いている。まあ、無理して思い出す必要はないさ」

 焦るメルティアに対して、イフェールは冷静な言葉を返していた。
 そういった対応は流石だ。イフェールはこういったことに関して気が回る。
 伯父様には少し悪いが、来てくれたのが彼で本当に良かった。これが伯父様だったら、距離感を間違えていただろう。いや、それは流石にこの国の王を侮り過ぎているかもしれない。

「うん? どうしたんだ? 俺の顔をそんなに見つめて」
「ああいえ、なんでもありません」
「そうか……まあ、別にいいが」

 メルティアは、イフェールの顔を見ながら少し照れているようだった。
 その反応については、よくわからない。別に照れる要素など、ないと思うのだが。
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