4 / 18
4.微妙な態度
しおりを挟む
私はイフェールを連れて、メルティアの部屋に来ていた。
事前に説明しておいたため、妹はいとこの来訪に対して特に驚いてはいない。ただ、緊張はしているようだ。いとこ同士割と仲良くしていたのだが、距離感がある気がする。
「久し振りだな。メルティア、俺のことはわかるのか?」
「あ、ええ、わかります。アドヴェルド王国の第二王子、イフェール殿下ですよね?」
「……なんだか少し他人行儀だな」
メルティアの言葉を受けて、イフェールは私に小声で話しかけてきた。
彼からしてみれば、いとこというのが欲しかった回答だろう。私達の距離感を考えれば、王国の第二王子だというだけなのは少し味気ない。
しかしメルティアは、イフェールといとこであるということは理解していたはずだ。事前に説明した時も、それはわかっていると言っていたのだが。
「まあ、改めて自己紹介をしておくと、俺はイフェール・アドヴェルド、メルティアやミレティアのいとこにあたる」
「あ、ああ、そうでしたね」
イフェールが自己紹介すると、メルティアは少し焦ったように言葉を発していた。
単純に失念していただけにしては、反応が少しで大袈裟だ。大きな失敗をしたというような顔を、メルティアはしている。
そういった反応を、今までもされたことはあった。目覚めてからの彼女は、私達との距離感を正しく認識できていないようだ。そしてそのずれに対して、激しく反応する。
そんな彼女の心中は、私達にはわからない。記憶の混乱というものがどういったものかも正しくわからない訳だし、理解するのは恐らく無理だろう。
それがなんというか、とてももどかしかった。それがわかれば、もっとメルティアに寄り添うことができるというのに。
「ごめんなさい、少し記憶が混乱していて……」
「ああ、それは聞いている。まあ、無理して思い出す必要はないさ」
焦るメルティアに対して、イフェールは冷静な言葉を返していた。
そういった対応は流石だ。イフェールはこういったことに関して気が回る。
伯父様には少し悪いが、来てくれたのが彼で本当に良かった。これが伯父様だったら、距離感を間違えていただろう。いや、それは流石にこの国の王を侮り過ぎているかもしれない。
「うん? どうしたんだ? 俺の顔をそんなに見つめて」
「ああいえ、なんでもありません」
「そうか……まあ、別にいいが」
メルティアは、イフェールの顔を見ながら少し照れているようだった。
その反応については、よくわからない。別に照れる要素など、ないと思うのだが。
事前に説明しておいたため、妹はいとこの来訪に対して特に驚いてはいない。ただ、緊張はしているようだ。いとこ同士割と仲良くしていたのだが、距離感がある気がする。
「久し振りだな。メルティア、俺のことはわかるのか?」
「あ、ええ、わかります。アドヴェルド王国の第二王子、イフェール殿下ですよね?」
「……なんだか少し他人行儀だな」
メルティアの言葉を受けて、イフェールは私に小声で話しかけてきた。
彼からしてみれば、いとこというのが欲しかった回答だろう。私達の距離感を考えれば、王国の第二王子だというだけなのは少し味気ない。
しかしメルティアは、イフェールといとこであるということは理解していたはずだ。事前に説明した時も、それはわかっていると言っていたのだが。
「まあ、改めて自己紹介をしておくと、俺はイフェール・アドヴェルド、メルティアやミレティアのいとこにあたる」
「あ、ああ、そうでしたね」
イフェールが自己紹介すると、メルティアは少し焦ったように言葉を発していた。
単純に失念していただけにしては、反応が少しで大袈裟だ。大きな失敗をしたというような顔を、メルティアはしている。
そういった反応を、今までもされたことはあった。目覚めてからの彼女は、私達との距離感を正しく認識できていないようだ。そしてそのずれに対して、激しく反応する。
そんな彼女の心中は、私達にはわからない。記憶の混乱というものがどういったものかも正しくわからない訳だし、理解するのは恐らく無理だろう。
それがなんというか、とてももどかしかった。それがわかれば、もっとメルティアに寄り添うことができるというのに。
「ごめんなさい、少し記憶が混乱していて……」
「ああ、それは聞いている。まあ、無理して思い出す必要はないさ」
焦るメルティアに対して、イフェールは冷静な言葉を返していた。
そういった対応は流石だ。イフェールはこういったことに関して気が回る。
伯父様には少し悪いが、来てくれたのが彼で本当に良かった。これが伯父様だったら、距離感を間違えていただろう。いや、それは流石にこの国の王を侮り過ぎているかもしれない。
「うん? どうしたんだ? 俺の顔をそんなに見つめて」
「ああいえ、なんでもありません」
「そうか……まあ、別にいいが」
メルティアは、イフェールの顔を見ながら少し照れているようだった。
その反応については、よくわからない。別に照れる要素など、ないと思うのだが。
91
お気に入りに追加
332
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。
私はざまぁされた悪役令嬢。……ってなんだか違う!
杵島 灯
恋愛
王子様から「お前と婚約破棄する!」と言われちゃいました。
彼の隣には幼馴染がちゃっかりおさまっています。
さあ、私どうしよう?
とにかく処刑を避けるためにとっさの行動に出たら、なんか変なことになっちゃった……。
小説家になろう、カクヨムにも投稿中。
記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?
ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」
バシッ!!
わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。
目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの?
最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故?
ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない……
前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた……
前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。
転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)
婚約破棄を兄上に報告申し上げます~ここまでお怒りになった兄を見たのは初めてでした~
ルイス
恋愛
カスタム王国の伯爵令嬢ことアリシアは、慕っていた侯爵令息のランドールに婚約破棄を言い渡された
「理由はどういったことなのでしょうか?」
「なに、他に好きな女性ができただけだ。お前は少し固過ぎたようだ、私の隣にはふさわしくない」
悲しみに暮れたアリシアは、兄に婚約が破棄されたことを告げる
それを聞いたアリシアの腹違いの兄であり、現国王の息子トランス王子殿下は怒りを露わにした。
腹違いお兄様の復讐……アリシアはそこにイケない感情が芽生えつつあったのだ。
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる