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13.もたらされた知らせ(モブ視点)

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 急な異変に、アルヴァル王国が揺れていることは言うまでもなかった。
 その事態に、アルムーガは頭を抱えている。聖女や女神を信じていない彼にとって、この状況は訳がわからず、また厄介なものだったのだ。

 その様を見ながら、アルファルドは笑っていた。兄が項垂れる光景は、彼にとっては滑稽なものだったのだ。
 しかしながら、これはアルファルドにとっても他人事ではない。兄が失脚して国を手に入れられても、その国が揺らいでいるなら意味がないからだ。

「……兄上、そろそろ自分の判断が誤りだったことを認める時ではありませんか? 聖女の祈りに効果があるのかとか、女神が本当に実在するかどうかなんて、どうでもいいことです。今重要なのは、人々がどのように思っているかということであるはずです」
「……何が言いたい?」
「新たな聖女を擁立して、女神に対する生贄でも捧げるとしましょう。そうすることで、国民の留飲も多少は下るかもしれない」
「ふっ……」

 アルファルドは、兄であるアルムーガの笑みに驚いた。
 彼は自分の案にそれなりに自信を持っていた。いくら兄でも、この状況ならそれを聞き入れると思っていたのだ。
 しかしながら、アルムーガは笑っている。聖女憎しで判断力まで鈍ったのか、アルファルドの頭にはそのような考えが過っていた。

「お前はまだ状況を理解していないらしいな? これを見てみろ」
「新聞、ですか? 一体、何をっ……これはっ!」

 兄から新聞を見せられて、アルファルドは目を丸めていた。
 そこには、隣国であるイルリース王国であった出来事が記されている。

「聖女ルナーラがイルリース王国にいて、アルヴァリースを奉っているだと?」
「ふん、どこに行ったかと思っていたら、あちらの国に亡命していたらしい……その状況で俺達がアルヴァリースに触れた所で、国民が納得すると思うか」
「……そもそも兄上の過ちではありませんか。それを棚に上げて、何を言っているのですか」
「お前が何を言った所で、状況は変わらない……」

 アルムーガは、自嘲気味に笑みを浮かべていた。
 それに対して、アルファルドはその表情を歪める。この状況を打開するための策を、彼も考えざるを得ないからだ。
 アルムーガの行いによって、結果的にアルファルドも苦しめられることになっていた。アルヴァル王国は、窮地に立たされているのだ。

「ふっ……まさか、あの聖女が本当に女神とやり取りを交わしていたとでもいうのか。この雨はいつ止む? 俺は一体、何をしているのだ」

 アルムーガは窓から外を見ながら、ゆっくりとそう呟いた。
 それに応える者は、誰もいないのだった。
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