21 / 36
21.領民達との別れ
しおりを挟む
「早く帰った方がいいですよ」
「私達のことは気にしないでください」
「まあ、これからもそれなりにやっていきますよ。ロナード様が来る前も、そうしていましたからね」
村の人達は、ロナード様に対してそのように声をかけていた。
兄が亡くなり、王位を継ぐために王都に帰らなければならない。そう伝えた時に、村の人達は皆悲しんでいた。
この僻地において、レオルード様とロナード様の表面上の関係はそれ程知られていないようだ。身内の死、村の人達はただそれを悲しんでいるように見える。
「他の村とか、離れた所にいる人達には私達の方から伝えておきます。ロナード様はどうか、王都に戻ってください」
「今まで、色々とありがとうございました」
「こんな形で別れることになってしまったのは悲しいですけれど、どうかこれからもお元気でお過ごしください」
「……ああ、そうさせてもらうさ。まあ、皆も元気でな」
村の人達の言葉に、ロナード様はゆっくりと頷いた。
本当に、彼は慕われていたのだろう。それが私にも改めて伝わってくる。
「フェルリナ様」
「え? あ、はい。なんですか?」
そこで、村の女性が私に小声で話しかけてきた。
どうやら、ロナード様には聞かれたくないようだ。そのため、私も小声で応えることにする。
「当然ですけど、ロナード様は落ち込んでいるみたいですね……」
「……ええ、そのようですね」
「言うまでもないことではあると思いますけど、どうかロナード様を支えてあげてください。おこがましいことではありますが、私達は皆彼のことが心配なのです」
「はい、妻として彼のことを支えるつもりです」
女性の言葉に、私はゆっくりと頷いた。
もしかしたら、村の多くの人達にとってロナード様は心配な息子のような存在なのかもしれない。女性の表情を見て、私はそう思った。
メリリナさんも、時々こういう顔をすることがある。慈愛に満ちたその目は、身分の差とかそういったものを越えたものだ。
「さて、フェルリナ、そろそろ行くとしよう」
「はい、ロナード様」
「それじゃあ、皆、元気でな」
「ええ」
「ロナード様も、お元気で」
村の人達に別れを告げてから、私達はゆっくりと歩いていく。
ロナード様は、少し悲しそうにしている。この村の人達の存在は、彼の中でも大きかったということなのだろう。
「本当に、皆いい人達ばかりだった……俺がいなくなった後も、悪いようにはならないようにしたい所だな」
「そうですね……」
私は、ロナード様の言葉にゆっくりと頷いた。
短い間ではあったが、この村の人々との交流は楽しいものだった。温かい人達ばかりだったとそう思う。
こうして、私達は領地の人達に別れを告げて王都へと向かうのだった。
「私達のことは気にしないでください」
「まあ、これからもそれなりにやっていきますよ。ロナード様が来る前も、そうしていましたからね」
村の人達は、ロナード様に対してそのように声をかけていた。
兄が亡くなり、王位を継ぐために王都に帰らなければならない。そう伝えた時に、村の人達は皆悲しんでいた。
この僻地において、レオルード様とロナード様の表面上の関係はそれ程知られていないようだ。身内の死、村の人達はただそれを悲しんでいるように見える。
「他の村とか、離れた所にいる人達には私達の方から伝えておきます。ロナード様はどうか、王都に戻ってください」
「今まで、色々とありがとうございました」
「こんな形で別れることになってしまったのは悲しいですけれど、どうかこれからもお元気でお過ごしください」
「……ああ、そうさせてもらうさ。まあ、皆も元気でな」
村の人達の言葉に、ロナード様はゆっくりと頷いた。
本当に、彼は慕われていたのだろう。それが私にも改めて伝わってくる。
「フェルリナ様」
「え? あ、はい。なんですか?」
そこで、村の女性が私に小声で話しかけてきた。
どうやら、ロナード様には聞かれたくないようだ。そのため、私も小声で応えることにする。
「当然ですけど、ロナード様は落ち込んでいるみたいですね……」
「……ええ、そのようですね」
「言うまでもないことではあると思いますけど、どうかロナード様を支えてあげてください。おこがましいことではありますが、私達は皆彼のことが心配なのです」
「はい、妻として彼のことを支えるつもりです」
女性の言葉に、私はゆっくりと頷いた。
もしかしたら、村の多くの人達にとってロナード様は心配な息子のような存在なのかもしれない。女性の表情を見て、私はそう思った。
メリリナさんも、時々こういう顔をすることがある。慈愛に満ちたその目は、身分の差とかそういったものを越えたものだ。
「さて、フェルリナ、そろそろ行くとしよう」
「はい、ロナード様」
「それじゃあ、皆、元気でな」
「ええ」
「ロナード様も、お元気で」
村の人達に別れを告げてから、私達はゆっくりと歩いていく。
ロナード様は、少し悲しそうにしている。この村の人達の存在は、彼の中でも大きかったということなのだろう。
「本当に、皆いい人達ばかりだった……俺がいなくなった後も、悪いようにはならないようにしたい所だな」
「そうですね……」
私は、ロナード様の言葉にゆっくりと頷いた。
短い間ではあったが、この村の人々との交流は楽しいものだった。温かい人達ばかりだったとそう思う。
こうして、私達は領地の人達に別れを告げて王都へと向かうのだった。
1
お気に入りに追加
1,329
あなたにおすすめの小説
美人だけど性悪な姉に婚約者を奪われて婚約破棄された私。でも、拾ってくれる神様はいるものですね!
ほったげな
恋愛
性悪な姉に婚約者のロマンを奪われて、婚約破棄することになった。だけど、その後友人の紹介で年上イケメン伯爵に求婚されて…。
大切にされなくても構いません。私には最愛の人の想い出と希望があるのですから。
田太 優
恋愛
金銭的に困窮していた実家のため、私は裕福な相手と結婚させられることになった。
好きな人がいても自分の気持ちを優先することは許されない。
結婚した相手からは予想通り大切にはされなかった。
そのような過去があるのだから、夫の家が没落したことを喜び、私は離婚を告げた。
お姉様、わたくしの代わりに謝っておいて下さる?と言われました
来住野つかさ
恋愛
「お姉様、悪いのだけど次の夜会でちょっと皆様に謝って下さる?」
突然妹のマリオンがおかしなことを言ってきました。わたくしはマーゴット・アドラム。男爵家の長女です。先日妹がわたくしの婚約者であったチャールズ・
サックウィル子爵令息と恋に落ちたために、婚約者の変更をしたばかり。それで社交界に悪い噂が流れているので代わりに謝ってきて欲しいというのです。意味が分かりませんが、マリオンに押し切られて参加させられた夜会で出会ったジェレミー・オルグレン伯爵令息に、「僕にも謝って欲しい」と言われました。――わたくし、皆様にそんなに悪い事しましたか? 謝るにしても理由を教えて下さいませ!
婚約者が私と婚約破棄する計画を立てたので、失踪することにしました
天宮有
恋愛
婚約者のエドガーが、私ルクルとの婚約を破棄しようと計画を立てていた。
それを事前にユアンから聞いていた私は、失踪することでエドガーの計画を潰すことに成功する。
ユアンに住んで欲しいと言われた私は、ユアンの屋敷の地下室で快適な日々を送っていた。
その間に――私が失踪したことで、様々な問題が発生しているようだ。
逆行転生した侯爵令嬢は、自分を裏切る予定の弱々婚約者を思う存分イジメます
黄札
恋愛
侯爵令嬢のルーチャが目覚めると、死ぬひと月前に戻っていた。
ひと月前、婚約者に近づこうとするぶりっ子を撃退するも……中傷だ!と断罪され、婚約破棄されてしまう。婚約者の公爵令息をぶりっ子に奪われてしまうのだ。くわえて、不貞疑惑まででっち上げられ、暗殺される運命。
目覚めたルーチャは暗殺を回避しようと自分から婚約を解消しようとする。弱々婚約者に無理難題を押しつけるのだが……
つよつよ令嬢ルーチャが冷静沈着、鋼の精神を持つ侍女マルタと運命を変えるために頑張ります。よわよわ婚約者も成長するかも?
短いお話を三話に分割してお届けします。
この小説は「小説家になろう」でも掲載しています。
【完結】あなたは知らなくていいのです
楽歩
恋愛
無知は不幸なのか、全てを知っていたら幸せなのか
セレナ・ホフマン伯爵令嬢は3人いた王太子の婚約者候補の一人だった。しかし王太子が選んだのは、ミレーナ・アヴリル伯爵令嬢。婚約者候補ではなくなったセレナは、王太子の従弟である公爵令息の婚約者になる。誰にも関心を持たないこの令息はある日階段から落ち…
え?転生者?私を非難している者たちに『ざまぁ』をする?この目がキラキラの人はいったい…
でも、婚約者様。ふふ、少し『ざまぁ』とやらが、甘いのではなくて?きっと私の方が上手ですわ。
知らないからー幸せか、不幸かーそれは、セレナ・ホフマン伯爵令嬢のみぞ知る
※誤字脱字、勉強不足、名前間違いなどなど、どうか温かい目でm(_ _"m)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる