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21.領民達との別れ

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「早く帰った方がいいですよ」
「私達のことは気にしないでください」
「まあ、これからもそれなりにやっていきますよ。ロナード様が来る前も、そうしていましたからね」

 村の人達は、ロナード様に対してそのように声をかけていた。
 兄が亡くなり、王位を継ぐために王都に帰らなければならない。そう伝えた時に、村の人達は皆悲しんでいた。
 この僻地において、レオルード様とロナード様の表面上の関係はそれ程知られていないようだ。身内の死、村の人達はただそれを悲しんでいるように見える。

「他の村とか、離れた所にいる人達には私達の方から伝えておきます。ロナード様はどうか、王都に戻ってください」
「今まで、色々とありがとうございました」
「こんな形で別れることになってしまったのは悲しいですけれど、どうかこれからもお元気でお過ごしください」
「……ああ、そうさせてもらうさ。まあ、皆も元気でな」

 村の人達の言葉に、ロナード様はゆっくりと頷いた。
 本当に、彼は慕われていたのだろう。それが私にも改めて伝わってくる。

「フェルリナ様」
「え? あ、はい。なんですか?」

 そこで、村の女性が私に小声で話しかけてきた。
 どうやら、ロナード様には聞かれたくないようだ。そのため、私も小声で応えることにする。

「当然ですけど、ロナード様は落ち込んでいるみたいですね……」
「……ええ、そのようですね」
「言うまでもないことではあると思いますけど、どうかロナード様を支えてあげてください。おこがましいことではありますが、私達は皆彼のことが心配なのです」
「はい、妻として彼のことを支えるつもりです」

 女性の言葉に、私はゆっくりと頷いた。
 もしかしたら、村の多くの人達にとってロナード様は心配な息子のような存在なのかもしれない。女性の表情を見て、私はそう思った。
 メリリナさんも、時々こういう顔をすることがある。慈愛に満ちたその目は、身分の差とかそういったものを越えたものだ。

「さて、フェルリナ、そろそろ行くとしよう」
「はい、ロナード様」
「それじゃあ、皆、元気でな」
「ええ」
「ロナード様も、お元気で」

 村の人達に別れを告げてから、私達はゆっくりと歩いていく。
 ロナード様は、少し悲しそうにしている。この村の人達の存在は、彼の中でも大きかったということなのだろう。

「本当に、皆いい人達ばかりだった……俺がいなくなった後も、悪いようにはならないようにしたい所だな」
「そうですね……」

 私は、ロナード様の言葉にゆっくりと頷いた。
 短い間ではあったが、この村の人々との交流は楽しいものだった。温かい人達ばかりだったとそう思う。
 こうして、私達は領地の人達に別れを告げて王都へと向かうのだった。
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