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19.この地でなら

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 私は、ロナード様とともに日課の散歩に出かけていた。
 私が彼を誘ってから、二人で毎日散歩に出かけている。手が空いていれば、メルルナさんも一緒なのだが、生憎今日はいない。

「はあ、なんというかこれが日課になってしまったか……」
「嫌でしたか?」
「それはもちろん、俺は外に出るのが好きではないからな」
「そんなはっきりと言わなくてもいいじゃないですか」

 ロナード様は、いつも通り憎まれ口を叩いていた。
 それは、いつものことである。だが、なんだかんだ言いつつも、彼は毎日散歩に付き合ってくれているのだ。

「そもそも、最近は散歩の効果も出ているんじゃないですか?」
「散歩の効果?」
「ええ、体が軽くなっていませんか?」
「それは……」

 ロナード様は、自分の体の調子を確かめるように腕を回した。
 その後彼は、気まずそうな顔をする。

「確かに体は実感軽くなっている気がするな」
「やっぱりそうですか」
「どうしてわかったんだ?」
「いえ、それは私も同じだったからです」
「同じ?」

 私の言葉に、ロナード様は驚いたような表情をした。
 それはそうだろう。この話は、まだ彼に話していない。

「私も、公爵家では散歩なんてできませんでした。疎まれる存在でしたから、できるだけ出歩かないようにしていたんです」
「……そうか」
「だから、こうやって歩けるというのが幸せなんです。体にもいいと実感することもできましたからね」

 私は、このように自由気ままな生活に少し憧れていた。
 公爵家での生活は、いつも息苦しかった。少なくとも、このように何も考えずに散歩することなんてできなかったのである。
 だから、私は今がとても幸せだ。この生活が、できればずっと続いて欲しいと思う。

「まあ、そういうことなら存分に歩くといいさ。俺もできる限りは付き合うしな」
「付き合ってくれるんですか?」
「無理のない範囲ならいいさ。というか、今の体に慣れてしまうと、前の疲れ切った体には戻りたくなくなった」
「そうですか……」

 ロナード様は、私に笑顔を見せてくれた。
 それに釣られて、私も笑顔になる。
 彼の体は、相当疲れていたのだろう。歩いたことによって、その疲れが少し取れて楽になったのかもしれない。

「まあ、二人で気楽にやっていこうじゃないか。無能な王弟殿下と冷遇されていた公爵令嬢でも、ここでなら気ままにやっていける」
「はい、そうですね……なんというか、幸せに思います」
「それなら良かった。こんな辺鄙な場所だからな、気に入ってもらえるのはこちらとしても嬉しいし安心するよ」

 そんなことを話しながら、私達はしばらく歩くのだった。
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