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17.手厚い歓迎
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「……」
目の前の光景に、私は絶句していた。
どうしてこんなことになったのだろうか。そんな疑問が頭の中に湧いてくる。
私は、ロナード様と一緒に村を訪ねた。領民の人達に挨拶をして、私のことを覚えてもらうつもりだった。
だが、このようなことになるとは思っていなかった。そのため、色々と困惑してばかりである。
「まあ、第一印象としては良かっただろうな。きちんと挨拶ができていた」
「それなら良かったんですけど……」
「目の前のこれは、その証拠といえるだろう」
私の目の前には、野菜や肉や魚が並んでいる。それらは全て、領民達がくれたものだ。
「あ、これも持っていてください」
「昨日、魚がいっぱい捕れたんですよ。せっかくだから、こっちもどうぞ」
「お、ありがたい」
「あ、ありがとうございます」
領民達は、まだ色々と持ってきてくれている。こんなに渡して大丈夫なのだろうか。彼らの生活が少し心配になってくる。
ただ、歓迎されているというのは間違いない。ことの発端は、ロナード様の妻を歓迎するだったので、それは確実である。
「それにしても、ロナード様は別嬪さんを嫁に迎えられましたな」
「別嬪さん? あ、えっと……ありがとうございます」
「まあ、一応まだ嫁ではないんだよな。とはいえ、程なくして嫁になるんだが……」
「細かいことを気にしますね?」
「確かに些細なことではあるか」
領民達は、ロナード様と親しそうに話している。今までそれを見てきたため、彼が慕われていることはよく理解できた。同時に、身分の差というものがそこまで意識されていないということもわかった。
「まあ、ロナード様が身を固められて、私達も安心しましたよ」
「安心? なんでだよ?」
「ロナード様は立派な領主だと思っていますけど、正直心配な面も多かったですから……」
「心配な面か……心当たりはあり過ぎる」
「奥さんができれば、地盤が固まるというかいい方向に行くと思うんです」
「そういうものかね……」
ロナード様は、王族である。本来であれば、もっと敬われるべき存在だ。
だが、この場所において彼は気のいい領主くらいにしか思われていないのかもしれない。
しかし、ここではそれでいいのだろう。ロナード様本人の気質的にも、その方がいいと思っていそうではあるし。
「ああ、そういえば、実はもう一人住人が増えたんだ」
「え? そうなんですか?」
「ああ、フェルリナにメイドさんがついているんだ。まあ、メイドさんというよりも母親みたいな人だよな?」
「あ、はい。そうですね」
「ああ、そうなんですか……」
「その人も今度は連れて来るよ」
ロナード様は、メリリナさんのことも説明してくれた。
メイドさんという言葉を聞いた瞬間、一瞬村の人が強張ったような気がした。だが、母親のような人という言葉でその態度は和らいだように思える。
貴族であることが意識されるような事柄は、この辺りでは避けた方がいいかもしれないその反応に、私はそんなことを思うのだった。
目の前の光景に、私は絶句していた。
どうしてこんなことになったのだろうか。そんな疑問が頭の中に湧いてくる。
私は、ロナード様と一緒に村を訪ねた。領民の人達に挨拶をして、私のことを覚えてもらうつもりだった。
だが、このようなことになるとは思っていなかった。そのため、色々と困惑してばかりである。
「まあ、第一印象としては良かっただろうな。きちんと挨拶ができていた」
「それなら良かったんですけど……」
「目の前のこれは、その証拠といえるだろう」
私の目の前には、野菜や肉や魚が並んでいる。それらは全て、領民達がくれたものだ。
「あ、これも持っていてください」
「昨日、魚がいっぱい捕れたんですよ。せっかくだから、こっちもどうぞ」
「お、ありがたい」
「あ、ありがとうございます」
領民達は、まだ色々と持ってきてくれている。こんなに渡して大丈夫なのだろうか。彼らの生活が少し心配になってくる。
ただ、歓迎されているというのは間違いない。ことの発端は、ロナード様の妻を歓迎するだったので、それは確実である。
「それにしても、ロナード様は別嬪さんを嫁に迎えられましたな」
「別嬪さん? あ、えっと……ありがとうございます」
「まあ、一応まだ嫁ではないんだよな。とはいえ、程なくして嫁になるんだが……」
「細かいことを気にしますね?」
「確かに些細なことではあるか」
領民達は、ロナード様と親しそうに話している。今までそれを見てきたため、彼が慕われていることはよく理解できた。同時に、身分の差というものがそこまで意識されていないということもわかった。
「まあ、ロナード様が身を固められて、私達も安心しましたよ」
「安心? なんでだよ?」
「ロナード様は立派な領主だと思っていますけど、正直心配な面も多かったですから……」
「心配な面か……心当たりはあり過ぎる」
「奥さんができれば、地盤が固まるというかいい方向に行くと思うんです」
「そういうものかね……」
ロナード様は、王族である。本来であれば、もっと敬われるべき存在だ。
だが、この場所において彼は気のいい領主くらいにしか思われていないのかもしれない。
しかし、ここではそれでいいのだろう。ロナード様本人の気質的にも、その方がいいと思っていそうではあるし。
「ああ、そういえば、実はもう一人住人が増えたんだ」
「え? そうなんですか?」
「ああ、フェルリナにメイドさんがついているんだ。まあ、メイドさんというよりも母親みたいな人だよな?」
「あ、はい。そうですね」
「ああ、そうなんですか……」
「その人も今度は連れて来るよ」
ロナード様は、メリリナさんのことも説明してくれた。
メイドさんという言葉を聞いた瞬間、一瞬村の人が強張ったような気がした。だが、母親のような人という言葉でその態度は和らいだように思える。
貴族であることが意識されるような事柄は、この辺りでは避けた方がいいかもしれないその反応に、私はそんなことを思うのだった。
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