11 / 36
11.立派な王族
しおりを挟む
寝間着に着替えてから、私はメリリナさんを部屋に招いていた。
今日一日、色々とあったので、彼女と話したかったのである。
メリリナさんも気持ちは同じだったらしく、話は弾んだ。やはり、この家での生活は私達にとって驚きの連続だったのである。
「それにしても、私にも部屋が与えられて、それがお嬢様の部屋と同じ広さというのも驚きでした」
「まあ、小さな家ですからね……」
メリリナさんの部屋は、私の隣だ。こちらの部屋と同じ造りの部屋が、彼女にも割り当てられたのである。
それは、彼女にとって驚きの経験であったらしい。珍しくかなり慌てている。
「というか、申し訳ありません。色々と不便な生活を送らせることになってしまって……」
「あ、いえ、それに関してはまったく問題ありません。仕事ですし、そもそもそれ程不便であるとは思いません」
「そうなんですか?」
「ええ、私は平民の出身ですから、このくらいの環境はなんということもありません」
「なるほど……」
貴族である私にとって、この家での暮らしは新しいものだ。ただ、メリリナさんにとってその部分に関してはそうではないようである。
確かに、平民の生活として考えるならここでの生活はそれ程おかしくないのかもしれない。つまり、彼女が驚いているのは仕えられる者と仕える者との関係の部分であるということだろうか。
「まあ、ロナード殿下の態度には驚きましたが……」
「そうですね……確かに彼は、王族という感じはしませんよね」
「失礼かもしれませんが、そう思ってしまいます」
「色々と事情はあるみたいですけれど、多分あれは元来の彼の気質なのでしょうね……」
「ですが、立ち振る舞いの端々からは王族としての気品が感じられます」
「……言われてみれば、確かにそうかもしれませんね。やはりそこには育ちが現れているということでしょうか」
ロナード様は、色々と不思議な人である。
だが、別にそれが不快という訳ではない。少なくとも、嫌われ者と揶揄されるような人物ではないように思える。
彼の評価がそのようなものであるというのは、悲しい事実だ。例え本人がそれを望んでいたとしても、あまり納得できるものではない。
「それにそもそも、彼がこの立場を受け入れているのも国のためといえる訳ですから、王族として彼はしっかりとしているといえるのかもしれませんね」
「そうですね……」
ロナード様は、立派な王族であるといえると思う。自らを犠牲にして、レオルード様の地盤を固める。それは、中々できることではないだろう。
この国の多くの人々は、それを知らない。だからせめて、私は胸に刻んでおこう。彼という陰で国を守った人間のことを。
今日一日、色々とあったので、彼女と話したかったのである。
メリリナさんも気持ちは同じだったらしく、話は弾んだ。やはり、この家での生活は私達にとって驚きの連続だったのである。
「それにしても、私にも部屋が与えられて、それがお嬢様の部屋と同じ広さというのも驚きでした」
「まあ、小さな家ですからね……」
メリリナさんの部屋は、私の隣だ。こちらの部屋と同じ造りの部屋が、彼女にも割り当てられたのである。
それは、彼女にとって驚きの経験であったらしい。珍しくかなり慌てている。
「というか、申し訳ありません。色々と不便な生活を送らせることになってしまって……」
「あ、いえ、それに関してはまったく問題ありません。仕事ですし、そもそもそれ程不便であるとは思いません」
「そうなんですか?」
「ええ、私は平民の出身ですから、このくらいの環境はなんということもありません」
「なるほど……」
貴族である私にとって、この家での暮らしは新しいものだ。ただ、メリリナさんにとってその部分に関してはそうではないようである。
確かに、平民の生活として考えるならここでの生活はそれ程おかしくないのかもしれない。つまり、彼女が驚いているのは仕えられる者と仕える者との関係の部分であるということだろうか。
「まあ、ロナード殿下の態度には驚きましたが……」
「そうですね……確かに彼は、王族という感じはしませんよね」
「失礼かもしれませんが、そう思ってしまいます」
「色々と事情はあるみたいですけれど、多分あれは元来の彼の気質なのでしょうね……」
「ですが、立ち振る舞いの端々からは王族としての気品が感じられます」
「……言われてみれば、確かにそうかもしれませんね。やはりそこには育ちが現れているということでしょうか」
ロナード様は、色々と不思議な人である。
だが、別にそれが不快という訳ではない。少なくとも、嫌われ者と揶揄されるような人物ではないように思える。
彼の評価がそのようなものであるというのは、悲しい事実だ。例え本人がそれを望んでいたとしても、あまり納得できるものではない。
「それにそもそも、彼がこの立場を受け入れているのも国のためといえる訳ですから、王族として彼はしっかりとしているといえるのかもしれませんね」
「そうですね……」
ロナード様は、立派な王族であるといえると思う。自らを犠牲にして、レオルード様の地盤を固める。それは、中々できることではないだろう。
この国の多くの人々は、それを知らない。だからせめて、私は胸に刻んでおこう。彼という陰で国を守った人間のことを。
6
お気に入りに追加
1,328
あなたにおすすめの小説
お姉様のお下がりはもう結構です。
ぽんぽこ@書籍発売中!!
恋愛
侯爵令嬢であるシャーロットには、双子の姉がいた。
慎ましやかなシャーロットとは違い、姉のアンジェリカは気に入ったモノは手に入れないと気が済まない強欲な性格の持ち主。気に入った男は家に囲い込み、毎日のように遊び呆けていた。
「王子と婚約したし、飼っていた男たちはもう要らないわ。だからシャーロットに譲ってあげる」
ある日シャーロットは、姉が屋敷で囲っていた四人の男たちを預かることになってしまう。
幼い頃から姉のお下がりをばかり受け取っていたシャーロットも、今回ばかりは怒りをあらわにする。
「お姉様、これはあんまりです!」
「これからわたくしは殿下の妻になるのよ? お古相手に構ってなんかいられないわよ」
ただでさえ今の侯爵家は経営難で家計は火の車。当主である父は姉を溺愛していて話を聞かず、シャーロットの味方になってくれる人間はいない。
しかも譲られた男たちの中にはシャーロットが一目惚れした人物もいて……。
「お前には従うが、心まで許すつもりはない」
しかしその人物であるリオンは家族を人質に取られ、侯爵家の一員であるシャーロットに激しい嫌悪感を示す。
だが姉とは正反対に真面目な彼女の生き方を見て、リオンの態度は次第に軟化していき……?
表紙:ノーコピーライトガール様より

婚約破棄は綿密に行うもの
若目
恋愛
「マルグリット・エレオス、お前との婚約は破棄させてもらう!」
公爵令嬢マルグリットは、女遊びの激しい婚約者の王子様から婚約破棄を告げられる
しかし、それはマルグリット自身が仕組んだものだった……

「貴様のような地味で何の取り柄もない女、偉大なる俺には相応しくない!」ですか? この肉体を見てもそう言えるのでしょうか。
四季
恋愛
「貴様のような地味で何の取り柄もない女、偉大なる俺には相応しくない!」ですか?
月が隠れるとき
いちい千冬
恋愛
ヒュイス王国のお城で、夜会が始まります。
その最中にどうやら王子様が婚約破棄を宣言するようです。悪役に仕立て上げられると分かっているので帰りますね。
という感じで始まる、婚約破棄話とその顛末。全8話。⇒9話になりました。
小説家になろう様で上げていた「月が隠れるとき」シリーズの短編を加筆修正し、連載っぽく仕立て直したものです。
言いたいことは、それだけかしら?
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【彼のもう一つの顔を知るのは、婚約者であるこの私だけ……】
ある日突然、幼馴染でもあり婚約者の彼が訪ねて来た。そして「すまない、婚約解消してもらえないか?」と告げてきた。理由を聞いて納得したものの、どうにも気持ちが収まらない。そこで、私はある行動に出ることにした。私だけが知っている、彼の本性を暴くため――
* 短編です。あっさり終わります
* 他サイトでも投稿中
王太子様に婚約破棄されたけど、私はあなたの婚約者ではないのですが
ぬぬぬ木
恋愛
貧乏男爵令嬢であるキャノンは、王太子様の婚約者であるセレナーデ令嬢の使用人をしている。美しい彼女だが、性格は恐ろしい程酷くって……
いつも命じれらるのは無茶な"お仕事"。そして勤務最終日の今日、命じられたのは卒業パーティに代わりに参加しろというもの!
そこで王太子様から告げられる婚約破棄。……でもなんで私に言ってくるの!? 私あなたの婚約者じゃないんですけど!?
貴方だけが私に優しくしてくれた
バンブー竹田
恋愛
人質として隣国の皇帝に嫁がされた王女フィリアは宮殿の端っこの部屋をあてがわれ、お飾りの側妃として空虚な日々をやり過ごすことになった。
そんなフィリアを気遣い、優しくしてくれたのは年下の少年騎士アベルだけだった。
いつの間にかアベルに想いを寄せるようになっていくフィリア。
しかし、ある時、皇帝とアベルの会話を漏れ聞いたフィリアはアベルの優しさの裏の真実を知ってしまってーーー
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる