6 / 36
6.狭い部屋の前で
しおりを挟む
「悪いが部屋はこのくらいの広さしかなくてね。窮屈かもしれないが、我慢してくれ」
「別に、特に問題があるとは思っていませんよ」
「……そうかい」
私は、ロナード様に部屋に案内されていた。
冷遇されていた公爵家の自室よりもずっと狭いこの部屋が、今日から私が暮らす部屋になるらしい。
ただ、別に部屋の広さが気になるという訳でもない。別に生活に困ることもないだろう。
「あなたは、結構なんでも受け入れるんだな」
「別に、なんでも受け入れるという訳でもありませんよ? ただ、実家ではそこまでいい生活を送っていなかったので、今はそれから解放されて少し浮かれているのかもしれません」
「何かあったのかい?」
「あ、えっと……」
私はつい、カルランド公爵家での扱いに関することを口走ってしまった。
これは、あまり人に聞かせていい話ではないと思い黙っていた。だから、話していいかどうか少し躊躇ってしまう。
「まあ、なんとなくはわかっているよ。婚約者があなたの妹からあなたに変わったからな。そこには何かしらの陰謀があると考えるべきだろう。カルランド公爵家の姉妹は腹違いであると聞いているし、その辺りが関係しているといった所か」
「え?」
「うん?」
私が迷っていると、ロナード様はそのようなことを言ってきた。
確かに、状況からそれは予測できることだったかもしれない。だが、それが彼の口から出てくるとは思っていなかった。
「いえ、ロナード様がそこまで予測していたことに少し驚いただけです」
「……おっと」
私の指摘に、ロナード様はしまったというような顔をした。
やはり、先程の言葉は失言であったらしい。無能でだらしない彼としては、多少とはいえ聡明な部分は見せたくなかったということなのだろう。
「やはり、ロナード様は評判通りの人ではないようですね?」
「いやいや、そんなことはないさ。俺は、評判通りの無能でだらしない王弟殿下だ」
「そうは思いません。というか、一緒に暮らすのですから、その辺りを誤魔化すのは中々難しいのではありませんか?」
「む……」
ロナード様は気まずそうな顔をして、頭を何回かかいた。
その後、顔を上げると彼は真っ直ぐ私の顔を見てくる。その視線は、とても力強い。
「仕方ない。あなたには事情を知ってもらっておこうか。ただまあ、別に俺が無能な怠け者ではないという訳ではないんだぜ?」
「そうなんですか?」
「まあ、そっちの話も聞かせてもらうついでに、俺の話も洗いざらいするとしようか」
「はい、話し合いましょう。私達は、これから夫婦になるのですから」
「はは、確かにそうだな。素が出せないのは、苦しいものだ」
私の言葉に、ロナード様はゆっくりと頷いてくれた。
こうして、私達はお互いのことを話すことになったのである。
「別に、特に問題があるとは思っていませんよ」
「……そうかい」
私は、ロナード様に部屋に案内されていた。
冷遇されていた公爵家の自室よりもずっと狭いこの部屋が、今日から私が暮らす部屋になるらしい。
ただ、別に部屋の広さが気になるという訳でもない。別に生活に困ることもないだろう。
「あなたは、結構なんでも受け入れるんだな」
「別に、なんでも受け入れるという訳でもありませんよ? ただ、実家ではそこまでいい生活を送っていなかったので、今はそれから解放されて少し浮かれているのかもしれません」
「何かあったのかい?」
「あ、えっと……」
私はつい、カルランド公爵家での扱いに関することを口走ってしまった。
これは、あまり人に聞かせていい話ではないと思い黙っていた。だから、話していいかどうか少し躊躇ってしまう。
「まあ、なんとなくはわかっているよ。婚約者があなたの妹からあなたに変わったからな。そこには何かしらの陰謀があると考えるべきだろう。カルランド公爵家の姉妹は腹違いであると聞いているし、その辺りが関係しているといった所か」
「え?」
「うん?」
私が迷っていると、ロナード様はそのようなことを言ってきた。
確かに、状況からそれは予測できることだったかもしれない。だが、それが彼の口から出てくるとは思っていなかった。
「いえ、ロナード様がそこまで予測していたことに少し驚いただけです」
「……おっと」
私の指摘に、ロナード様はしまったというような顔をした。
やはり、先程の言葉は失言であったらしい。無能でだらしない彼としては、多少とはいえ聡明な部分は見せたくなかったということなのだろう。
「やはり、ロナード様は評判通りの人ではないようですね?」
「いやいや、そんなことはないさ。俺は、評判通りの無能でだらしない王弟殿下だ」
「そうは思いません。というか、一緒に暮らすのですから、その辺りを誤魔化すのは中々難しいのではありませんか?」
「む……」
ロナード様は気まずそうな顔をして、頭を何回かかいた。
その後、顔を上げると彼は真っ直ぐ私の顔を見てくる。その視線は、とても力強い。
「仕方ない。あなたには事情を知ってもらっておこうか。ただまあ、別に俺が無能な怠け者ではないという訳ではないんだぜ?」
「そうなんですか?」
「まあ、そっちの話も聞かせてもらうついでに、俺の話も洗いざらいするとしようか」
「はい、話し合いましょう。私達は、これから夫婦になるのですから」
「はは、確かにそうだな。素が出せないのは、苦しいものだ」
私の言葉に、ロナード様はゆっくりと頷いてくれた。
こうして、私達はお互いのことを話すことになったのである。
1
お気に入りに追加
1,331
あなたにおすすめの小説
私がいなくなっても、あなたは探しにも来ないのでしょうね
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族家の生まれではありながらも、父の素行の悪さによって貧しい立場にあったエリス。そんな彼女は気づいた時、周囲から強引に決められる形で婚約をすることとなった。その相手は大金持ちの御曹司、リーウェル。エリスの母は貧しい暮らしと別れを告げられることに喜び、エリスが内心では快く思っていない婚約を受け入れるよう、大いに圧力をかける。さらには相手からの圧力もあり、断ることなどできなくなったエリスは嫌々リーウェルとの婚約を受け入れることとしたが、リーウェルは非常にプライドが高く自分勝手な性格で、エリスは婚約を結んでしまったことを心から後悔する…。何一つ輝きのない婚約生活を送る中、次第に鬱の海に沈んでいくエリスは、ある日その身を屋敷の最上階から投げてしまうのだった…。
婚約破棄してくださって結構です
二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。
※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています
戦いから帰ってきた騎士なら、愛人を持ってもいいとでも?
新野乃花(大舟)
恋愛
健気に、一途に、戦いに向かった騎士であるトリガーの事を待ち続けていたフローラル。彼女はトリガーの婚約者として、この上ないほどの思いを抱きながらその帰りを願っていた。そしてそんなある日の事、戦いを終えたトリガーはフローラルのもとに帰還する。その時、その隣に親密そうな関係の一人の女性を伴って…。
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
第一王子様は妹の事しか見えていないようなので、婚約破棄でも構いませんよ?
新野乃花(大舟)
恋愛
ルメル第一王子は貴族令嬢のサテラとの婚約を果たしていたが、彼は自身の妹であるシンシアの事を盲目的に溺愛していた。それゆえに、シンシアがサテラからいじめられたという話をでっちあげてはルメルに泣きつき、ルメルはサテラの事を叱責するという日々が続いていた。そんなある日、ついにルメルはサテラの事を婚約破棄の上で追放することを決意する。それが自分の王国を崩壊させる第一歩になるとも知らず…。
あの素晴らしい愛をもう一度
仏白目
恋愛
伯爵夫人セレス・クリスティアーノは
33歳、愛する夫ジャレッド・クリスティアーノ伯爵との間には、可愛い子供が2人いる。
家同士のつながりで婚約した2人だが
婚約期間にはお互いに惹かれあい
好きだ!
私も大好き〜!
僕はもっと大好きだ!
私だって〜!
と人前でいちゃつく姿は有名であった
そんな情熱をもち結婚した2人は子宝にもめぐまれ爵位も継承し順風満帆であった
はず・・・
このお話は、作者の自分勝手な世界観でのフィクションです。
あしからず!
(完結)その女は誰ですか?ーーあなたの婚約者はこの私ですが・・・・・・
青空一夏
恋愛
私はシーグ侯爵家のイルヤ。ビドは私の婚約者でとても真面目で純粋な人よ。でも、隣国に留学している彼に会いに行った私はそこで思いがけない光景に出くわす。
なんとそこには私を名乗る女がいたの。これってどういうこと?
婚約者の裏切りにざまぁします。コメディ風味。
※この小説は独自の世界観で書いておりますので一切史実には基づきません。
※ゆるふわ設定のご都合主義です。
※元サヤはありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる