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37.非があるのは

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「……お前は、相変わらずエリームには甘いんだな」
「なんだ? アルベルド、何か私に文句でもあるのか?」
「いや、文句という訳ではないが……」

 イルファリスお姉様に抱きしめられる私を見て、アルベルドお兄様はゆっくりと呟いた。
 お姉様は、確かに私には甘い。先程の二人への態度を考えると、少し愚痴を言いたくなるのも無理はないだろう。

「もちろん、私に何も知らせなかったことは怒っている。だが、エリームはそれ以上に傷ついている。故に、こうして抱きしめることにしたのだ」
「それは、わからない訳ではないが……」
「一方、お前はエリームを三年も放っておいた。そんな怠慢を許す程、私は甘くはない」
「怠慢……か」

 お姉様の言葉に、お兄様は自嘲的な笑みを浮かべていた。
 それはもしかして、お姉様の言葉に納得してしまったからだろうか。

「怠慢などということはありません。お兄様は、私のために頑張ってくれました」
「いや……イルファリナの言う通りだ。俺は確かに怠慢だった。もっと努力すれば、もっと早くにエリームを救うことができたはずだ」
「その通りだ。そもそも、オルバディオン公爵家に嫁がせるということ自体を止めるべきだったのだろう。まあ、それは私の方にもいえることだ。すまなかったな、エリーム」
「い、いえ、お兄様のせいでも、お姉様のせいでも、ありません」

 お兄様もお姉様も、反省を始めてしまった。
 だが、別に二人に非があるという訳ではない。

「そもそも、オルバディオン公爵家との婚約も、上手くいっていれば因縁を解消できるものだった訳ですし……」
「確かに、ジグールがもっと良き男であれば、王家とオルバディオン公爵家が手を取り合っていた未来もあったか」
「実際は、とんでもない男だった訳だがな……」
「ふん、小さき男だ。過去からの因縁を解消するための婚約だというのに、その過去に尚もこだわるとは……」

 あの婚約の失敗の原因は、まず間違いなくジグールだ。
 彼は、私を冷遇した。もしも彼が私を普通に扱ってくれれば、このような結果にはならなかっただろう。
 結局、王家とオルバディオン公爵家の溝は深まった。恐らく、その因縁を解消するのは難しいだろう。

「……そうだった。イルファリス、そのジグールのことで、少し話したいことがあるのだ」
「ほう? 何か問題でもあったのか?」
「ああ、少々ややこしいことになっているのだ。いい機会であるため、お前にも少し意見を出してもらいたい」
「もちろん、それは構わない。嫁いだとはいえ、私はこのコルステル王国の王族だ。協力は惜しまない」

 お兄様は、ジグールの疑惑について、お姉様に話すつもりのようだ。
 イルファリスお姉様は聡い人である。そんな彼女に意見を出してもらうのは、いいことだろう。
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