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9.風を浴びながら
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私は、カルディアスとともにベランダに出てきていた。アルベルドお兄様は、この後色々と用事があるらしいので、二人で話すことにしたのだ。
「風が気持ちいいね……」
「ああ、そうだな……」
私は、ベランダで風を受けながら、ゆっくりとそう呟いていた。
思えば、こんな風に自然を感じるのは随分と久し振りである。部屋の窓を開けて風を浴びることはあったが、こうやって全身で感じる機会というものは、ジグールとの結婚生活の中ではなかったのだ。
あの結婚生活の中で、私はいつしか太陽の温もりというものを忘れていた。彼から解放されて、私はやっと当たり前のことを当たり前に感じられるようになったのかもしれない。
「カルディアス……ありがとう、ね」
「え? どうしたんだ? 急に?」
「お礼を言っておかなければならないと思ったんだ。今回の離婚、カルディアスも色々としてくれていたんでしょう?」
「それは……」
そこで私は、カルディアスにお礼を言うことにした。
彼は何も言っていないが、私のために動いてくれていたことは察している。そういう人であるということは、長い付き合いでわかっているのだ。
だから、お礼が言いたかった。私にこの当たり前を取り戻させてくれたことに、心から感謝したかったのである。
「俺は昔から、アルベルドの忠臣のつもりだ。あいつへの協力は惜しまない……増してや、君は俺にとっても大切な存在だ。俺はただ、当たり前のことをしたまでだよ」
「それでも、私は嬉しいからお礼を言わせて欲しいんだ……お兄様やカルディアスがいなかったら、私はきっとずっと腐っていたから」
「エリーム……」
私が今思っているのは、あのままオルバディオン公爵夫人と過ごしていたら、どうなっていたかということだ。
きっと、私はあのまま腐っていただろう。あの部屋で心も体も壊して、そのまま暗い人生を過ごしていたはずだ。
そんな場所から解放されたことは、本当に嬉しかった。手を差し伸べてくれた二人には、この感謝を伝えたいのである。
「……別に、俺はそんなに大きなことをした訳じゃない。今回のことは、アルベルドが努力したからだ」
「カルディアスは、いつもそういうよね? 自分は何もしていない。それはもう聞き飽きたよ」
「実際問題、そうなんだよ。俺は、ほんの少し助力しただけで……」
「その助力が、何よりもありがたいものだったんだよ。きっと、お兄様だってそういうと思う」
「む……」
カルディアスは、謙虚な性格だ。こんな風に、自分の功績を中々認めない所は、昔から変わっていない。
それがなんだか、無性に嬉しかった。それはきっと、帰って来たとそう思えるからなのだろう。
「風が気持ちいいね……」
「ああ、そうだな……」
私は、ベランダで風を受けながら、ゆっくりとそう呟いていた。
思えば、こんな風に自然を感じるのは随分と久し振りである。部屋の窓を開けて風を浴びることはあったが、こうやって全身で感じる機会というものは、ジグールとの結婚生活の中ではなかったのだ。
あの結婚生活の中で、私はいつしか太陽の温もりというものを忘れていた。彼から解放されて、私はやっと当たり前のことを当たり前に感じられるようになったのかもしれない。
「カルディアス……ありがとう、ね」
「え? どうしたんだ? 急に?」
「お礼を言っておかなければならないと思ったんだ。今回の離婚、カルディアスも色々としてくれていたんでしょう?」
「それは……」
そこで私は、カルディアスにお礼を言うことにした。
彼は何も言っていないが、私のために動いてくれていたことは察している。そういう人であるということは、長い付き合いでわかっているのだ。
だから、お礼が言いたかった。私にこの当たり前を取り戻させてくれたことに、心から感謝したかったのである。
「俺は昔から、アルベルドの忠臣のつもりだ。あいつへの協力は惜しまない……増してや、君は俺にとっても大切な存在だ。俺はただ、当たり前のことをしたまでだよ」
「それでも、私は嬉しいからお礼を言わせて欲しいんだ……お兄様やカルディアスがいなかったら、私はきっとずっと腐っていたから」
「エリーム……」
私が今思っているのは、あのままオルバディオン公爵夫人と過ごしていたら、どうなっていたかということだ。
きっと、私はあのまま腐っていただろう。あの部屋で心も体も壊して、そのまま暗い人生を過ごしていたはずだ。
そんな場所から解放されたことは、本当に嬉しかった。手を差し伸べてくれた二人には、この感謝を伝えたいのである。
「……別に、俺はそんなに大きなことをした訳じゃない。今回のことは、アルベルドが努力したからだ」
「カルディアスは、いつもそういうよね? 自分は何もしていない。それはもう聞き飽きたよ」
「実際問題、そうなんだよ。俺は、ほんの少し助力しただけで……」
「その助力が、何よりもありがたいものだったんだよ。きっと、お兄様だってそういうと思う」
「む……」
カルディアスは、謙虚な性格だ。こんな風に、自分の功績を中々認めない所は、昔から変わっていない。
それがなんだか、無性に嬉しかった。それはきっと、帰って来たとそう思えるからなのだろう。
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