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4.関わりのない夫婦
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同じ屋敷に住んではいるが、私はジグールとあまり関わりがほとんどない。
それはもちろん、私が軟禁状態にあることも関係している。部屋に閉じ込められている私は、彼に会う機会が少ないのだ。
だが、公爵である彼と公爵夫人である私は、どうしても行動をともにしなければならないことがある。
例えば、晩餐会に呼ばれた時などだ。
「……」
「……」
そんな時、私達の間に会話はない。重苦しい沈黙が続くだけだ。
別に、それが嫌だと思ったことはない。私も、彼なんかと会話したいとは思っていないからだ。
そんな私達の様子を見て、周りの人がどう思うのか。それは想像するまでもない。
その時点で、この婚約に意味などなくなっている。二つの一族が手を取り合うことはない。恐らく、誰もがそう思っているだろう。
「失礼する」
「え?」
そんなことを考えていると、私に話しかけてくる人がいた。
その人物に、私は少し驚いてしまう。見知った人物が、話しかけてきたからだ。
「カ、カルディアス……様」
「……」
私に話しかけてきたのは、カルディアスだった。
参加者に関してはあまり把握していなかったが、彼もこの晩餐会に参加していたようである。
「オルバディオン公爵……彼女を少し借りても構いませんか?」
「……構わない。だが、理由を聞かせてもらいたいものだな?」
「彼女の兄が話したいそうです。ああ、彼自身が来なかったのは、そちらとおかしな諍いを起こさないようにという配慮ですから、どうかご了承ください」
「……なるほど、その気遣いには感謝しておこう」
カルディアスとジグールは、そのようにやり取りを交わした。
基本的に、ジグールは私達王家と仲が悪い。それを考慮した結果、少しでもましなカルディアスが私を呼びに来たようだ。
もっとも、この二人の仲が良いとも言い難い。カルディアスがこちら側であると、ジグールも理解しているからだ。
それでもその呼びかけに答えるのは、彼なりの矜持なのかもしれない。王族だけは例外、彼はそのように考えているのではないだろうか。
「行きましょうか? エリーム王女」
「え、ええ……」
カルディアスの言葉に、私はゆっくりと頷いた。
一応、公の場であるためか、彼は丁寧な対応をしてくれている。
それは私にとって、少しおかしいものだ。しかし、その意図ははっきりとわかるため、こちらもきちんと対応しなければならない。
「……ジグール様、それでは失礼します」
「……」
念のため、ジグールにも挨拶をしたが彼は答えなかった。
それに関しては、いつものことである。彼は、まるで私を存在しないかのように扱ってくるのだ。
それはもちろん、私が軟禁状態にあることも関係している。部屋に閉じ込められている私は、彼に会う機会が少ないのだ。
だが、公爵である彼と公爵夫人である私は、どうしても行動をともにしなければならないことがある。
例えば、晩餐会に呼ばれた時などだ。
「……」
「……」
そんな時、私達の間に会話はない。重苦しい沈黙が続くだけだ。
別に、それが嫌だと思ったことはない。私も、彼なんかと会話したいとは思っていないからだ。
そんな私達の様子を見て、周りの人がどう思うのか。それは想像するまでもない。
その時点で、この婚約に意味などなくなっている。二つの一族が手を取り合うことはない。恐らく、誰もがそう思っているだろう。
「失礼する」
「え?」
そんなことを考えていると、私に話しかけてくる人がいた。
その人物に、私は少し驚いてしまう。見知った人物が、話しかけてきたからだ。
「カ、カルディアス……様」
「……」
私に話しかけてきたのは、カルディアスだった。
参加者に関してはあまり把握していなかったが、彼もこの晩餐会に参加していたようである。
「オルバディオン公爵……彼女を少し借りても構いませんか?」
「……構わない。だが、理由を聞かせてもらいたいものだな?」
「彼女の兄が話したいそうです。ああ、彼自身が来なかったのは、そちらとおかしな諍いを起こさないようにという配慮ですから、どうかご了承ください」
「……なるほど、その気遣いには感謝しておこう」
カルディアスとジグールは、そのようにやり取りを交わした。
基本的に、ジグールは私達王家と仲が悪い。それを考慮した結果、少しでもましなカルディアスが私を呼びに来たようだ。
もっとも、この二人の仲が良いとも言い難い。カルディアスがこちら側であると、ジグールも理解しているからだ。
それでもその呼びかけに答えるのは、彼なりの矜持なのかもしれない。王族だけは例外、彼はそのように考えているのではないだろうか。
「行きましょうか? エリーム王女」
「え、ええ……」
カルディアスの言葉に、私はゆっくりと頷いた。
一応、公の場であるためか、彼は丁寧な対応をしてくれている。
それは私にとって、少しおかしいものだ。しかし、その意図ははっきりとわかるため、こちらもきちんと対応しなければならない。
「……ジグール様、それでは失礼します」
「……」
念のため、ジグールにも挨拶をしたが彼は答えなかった。
それに関しては、いつものことである。彼は、まるで私を存在しないかのように扱ってくるのだ。
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