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3.鳥かごの中で

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 月日が流れるのは、早いものである。
 私がオルバディオン公爵夫人となってから、もう三年という月日が流れた。
 王城でお兄様やカルディアスに見送られたあの時が、今はもう遥か昔のように思える。
 そう思うのは、私がこの三年間、この部屋に閉じこもり、生活をしているからなのだろうか。

「エリーム様、食事をお持ちしました」
「……どうぞ、入ってください」
「……失礼します」

 部屋の戸が開かれて、私の元に食事が運ばれてきた。
 それは見慣れた光景だ。なぜなら、私は毎日毎食、この部屋で食事をしているのだから。

「……それでは、失礼いたします」
「ええ、ご苦労様」

 食事を置いた後、使用人はすぐに部屋を出て行く。それもまた見慣れた光景だ。
 私は、この三年間をほとんどこの部屋で過ごしている。軟禁状態といっても、差し支えない程に。

「不自由があるという訳ではないけど……」

 私が過ごしているこの部屋は、立派な部屋だ。広い部屋だし、家具も一式揃っている。生活するにあたって、不自由があるという訳ではない。
 だが、それでもこの部屋から出ることをほとんど許されていない今の生活には、苦しいものがあった。
 いつからかわからないが、私はこの部屋を暗いと思うようになっていた。日の光は入ってくるというのに、私の目に映る景色は晴れていないのだ。

「私は、鳥かごの中にいる鳥といった所かな……いや、主人から愛を受けている訳ではないから、それは少し違うのかもしれないけど」

 私がこんな暮らしをしているのには、理由がある。それは、私の夫であるジグール・オルバディオン公爵だ。
 怨敵である王家の血を引く私を、彼は妻として認めていない。その憎しみによって、私は自由を奪われたのだ。
 この部屋から出ることを、私は禁じられている。端的にいえば、ジグールは私に嫌がらせをしているのだ。

「まあ、ろくなことにならないということは、わかっていたことだよね……」

 元々、王家とオルバディオン公爵家の仲は悪かった。かつて、利権を争い戦った二つの一族の関係は、最悪といっても過言ではなかっただろう。
 そんな所に嫁いできたのだから、良い扱いを受けるはずはない。当然の結果といえるだろう。

「……もっとも、それを解消するための婚約だったはずなんだけど……まあ、そんなことを言っても仕方ないか」

 私は、自分の現在の待遇に笑っていた。
 この待遇は、はっきりといって苦しい。しかし、私にできるのは耐えることだけだ。それを理解して、笑うことしかできなかったのである。
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