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6.寂しくなって

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「今まで忘れていたんですけど、エルリナって可愛いんですよね」
「……そうですか」

 シルファルド様がアヴォイル伯爵家を訪ねて来た数日後、私はオルガー伯爵家の屋敷を訪ねて来ていた。
 今回の訪問には、特に理由があるという訳ではない。単純に、私がシルファルド様とどうしても話したいから訪ねて来たのである。
 いつもなら、そんな気分にはならないのだが、どうしても会いに来たくなってしまった。彼の訪問からそれ程経っていないので、少し不審がられているかもしれない。

「しかし、ウルティナさん。この状態では少し話しにくくありませんか?」
「え? そうですか?」
「ええ、こういう時にはいつも正面に座って、対面して話すものですよね? どうして隣に?」

 そこでシルファルド様は、私達の位置関係について指摘してきた。
 確かに、私は今日彼の隣に座っている。いつもとは違うので、シルファルド様は疑問に思ったということだろう。
 そうした理由は明確だ。話すのは少し恥ずかしいのだが、シルファルド様にはエルリナのことをきちんと聞いてもらいたいし、ここは理由を打ち明けておく方がいいだろう。

「先日別れてから、なんだかとても寂しかったんです」
「寂しい、ですか?」
「ええ、シルファルド様の隣にいたくなったというか……別に婚約者なのですから、構いませんよね?」
「え? ええ、構わないのでしょうか……?」

 最近は妙に人恋しくなる。それは今までの私からすると、信じられないことだ。
 別に、何か別離などがあったという訳ではない。親しい人は皆元気だというのに、どうしてか無性に寂しくなってくる。
 シルファルド様の顔が見たいし、その体温を感じたい。今までだってそう思うことはあったのだが、ここ最近はその気持ちが抑えきれない程に膨れ上がっている。

「早く一緒に暮らせたらいいんですけどね……」
「それについては、まあ、何れはそうなる訳ですが……」

 シルファルド様は、何れ婿入りする。そうなれば、一緒の家で暮らす訳で、このような寂しさを覚える必要はない。
 ただ、そうなるのはまだしばらく先だ。その期間が少しもどかしい。

「一週間くらい、シルファルド様を貸してもらえないか、オルガー伯爵に頼んでみましょうか?」
「え?」
「駄目元でも、試してみる価値はありますよね……あ、でもシルファルド様が嫌でしょうか?」
「ぼ、僕は別に構いませんが……」
「それなら、少しお話してきますね」
「え? あ、あの……」

 シルファルド様からの許可が得られたため、私は彼の父親であるオルガー伯爵に直談判してみることにした。
 結果として、私はオルガー伯爵から了承を得た。何れ結婚するということもあって、しばらくシルファルド様を貸してもらえることになったのである。
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