上 下
13 / 24

13.調べるべきこと

しおりを挟む
 私は、ロヴァイドとともに討伐した魔物のことを調べていた。
 強力な魔物が、この辺りに現れるのは非常に珍しいことである。その原因がわかるかもしれないので、調べてみたい。そうロヴァイドが言ったからである。

「派手に焼き尽くしたものだな……」
「やり過ぎちゃったかな?」
「いや、手加減して怪我をするよりはましさ。とはいえ、これでは手がかりは掴めないか」

 魔物の死体は、焼け焦げておりほとんど原形を留めていない。
 正直やり過ぎた。魔物を倒す手段はいくらでもあったというのに、焼き尽くすという選択をしたのは間違いだったといえるだろう。

「ところでロヴァイド、魔物の死体からは何がわかるの? 私はそういうことに関しては知らないから、後学のために聞かせてもらえないかな?」
「例えば、胃の中を調べれば、その魔物がどのような食生活を送っていたかがわかる」
「食生活?」
「魔物が普段と違う場所に現れる時にまず疑うべきなのは、食料の問題だ。食料がなくなれば、住処を移動する理由にもなるだろう?」
「ああ、それは確かに……王都でも、そういう話は聞いたかも」

 魔物は狂暴な生き物だ。人間にも容赦なく襲い掛かる。
 だが、彼らもわざわざ住処を移動してまで人間の元に来ようとはしない。住処を離れるには、それ相応の理由があるのだ。
 食料問題、それは最たる理由であるだろう。なんらかの理由で住処から食料が尽きてしまえば、魔物も動かざるを得ない。

「ふむ……アフィーリ、この魔物はどんな見た目をしていたんだ?」
「熊のような見た目だったよ。見たことはある気がするんだけど、どうにも名前が出てこなくて……」
「熊か……この近くに出る凶悪な熊の魔物といえば、ヴァオールだな」
「ヴァオール?」
「アムチャガ山に生息している魔物だ」
「そんな魔物がいるんだね……」

 ロヴァイドは、かなり魔物のことに詳しかった。
 それは、村で色々なことを学んだからなのだろう。
 王都に出ていた私は、この辺りにどんな魔物がいて、どこに生息しているかなんて、まったくわからない。それが少し悲しかった。
 同時に、飛び出していったことの迂闊さも理解した。何も知らないのに、いい気になっていた自分が恥ずかしい。

「基本的にあの魔物は山から下りてこない。強力な魔物だから、食料には困らないんだ」
「そうなの?」
「他の魔物もヴァオールにとっては食料だからな」
「なるほど、そんなに強いんだね……」
「強いし学習能力も高い。それ故に、こいつが下りて来た理由も予想できない訳ではないな……あまり想像したくはないことだが」

 ロヴァイドは、苦しそうな顔をしていた。この魔物が山から置いて来た理由。それは明るくない理由のようだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】妹が旦那様とキスしていたのを見たのが十日前

地鶏
恋愛
私、アリシア・ブルームは順風満帆な人生を送っていた。 あの日、私の婚約者であるライア様と私の妹が濃厚なキスを交わすあの場面をみるまでは……。 私の気持ちを裏切り、弄んだ二人を、私は許さない。 アリシア・ブルームの復讐が始まる。

待ち遠しかった卒業パーティー

しゃーりん
恋愛
侯爵令嬢アンネットは、暴力を振るう父、母亡き後に父の後妻になった継母からの虐め、嘘をついてアンネットの婚約者である第四王子シューベルを誘惑した異母姉を卒業パーティーを利用して断罪する予定だった。 しかし、その前にアンネットはシューベルから婚約破棄を言い渡された。 それによってシューベルも一緒にパーティーで断罪されるというお話です。

(完結)あなたの愛は諦めました (全5話)

青空一夏
恋愛
私はライラ・エト伯爵夫人と呼ばれるようになって3年経つ。子供は女の子が一人いる。子育てをナニーに任せっきりにする貴族も多いけれど、私は違う。はじめての子育ては夫と協力してしたかった。けれど、夫のエト伯爵は私の相談には全く乗ってくれない。彼は他人の相談に乗るので忙しいからよ。 これは自分の家庭を顧みず、他人にいい顔だけをしようとする男の末路を描いた作品です。 ショートショートの予定。 ゆるふわ設定。ご都合主義です。タグが増えるかもしれません。

〖完結〗私が死ねばいいのですね。

藍川みいな
恋愛
侯爵令嬢に生まれた、クレア・コール。 両親が亡くなり、叔父の養子になった。叔父のカーターは、クレアを使用人のように使い、気に入らないと殴りつける。 それでも懸命に生きていたが、ある日濡れ衣を着せられ連行される。 冤罪で地下牢に入れられたクレアを、この国を影で牛耳るデリード公爵が訪ねて来て愛人になれと言って来た。 クレアは愛するホルス王子をずっと待っていた。彼以外のものになる気はない。愛人にはならないと断ったが、デリード公爵は諦めるつもりはなかった。処刑される前日にまた来ると言い残し、デリード公爵は去って行く。 そのことを知ったカーターは、クレアに毒を渡し、死んでくれと頼んで来た。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全21話で完結になります。

妹に魅了された婚約者の王太子に顔を斬られ追放された公爵令嬢は辺境でスローライフを楽しむ。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。  マクリントック公爵家の長女カチュアは、婚約者だった王太子に斬られ、顔に醜い傷を受けてしまった。王妃の座を狙う妹が王太子を魅了して操っていたのだ。カチュアは顔の傷を治してももらえず、身一つで辺境に追放されてしまった。

離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。

しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。 私たち夫婦には娘が1人。 愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。 だけど娘が選んだのは夫の方だった。 失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。 事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。 再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。

どうやら婚約者が私と婚約したくなかったようなので婚約解消させて頂きます。後、うちを金蔓にしようとした事はゆるしません

しげむろ ゆうき
恋愛
 ある日、婚約者アルバン様が私の事を悪く言ってる場面に遭遇してしまい、ショックで落ち込んでしまう。  しかもアルバン様が悪口を言っている時に側にいたのは、美しき銀狼、又は冷酷な牙とあだ名が付けられ恐れられている、この国の第三王子ランドール・ウルフイット様だったのだ。  だから、問い詰めようにもきっと関わってくるであろう第三王子が怖くて、私は誰にも相談できずにいたのだがなぜか第三王子が……。 ○○sideあり 全20話

聖女の代わりがいくらでもいるなら、私がやめても構いませんよね?

木山楽斗
恋愛
聖女であるアルメアは、無能な上司である第三王子に困っていた。 彼は、自分の評判を上げるために、部下に苛烈な業務を強いていたのである。 それを抗議しても、王子は「嫌ならやめてもらっていい。お前の代わりなどいくらでもいる」と言って、取り合ってくれない。 それなら、やめてしまおう。そう思ったアルメアは、王城を後にして、故郷に帰ることにした。 故郷に帰って来たアルメアに届いたのは、聖女の業務が崩壊したという知らせだった。 どうやら、後任の聖女は王子の要求に耐え切れず、そこから様々な業務に支障をきたしているらしい。 王子は、理解していなかったのだ。その無理な業務は、アルメアがいたからこなせていたということに。

処理中です...