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アルキーナ様の罪は、結局全て暴かれることになった。ウェリクス様主導の調査によって、彼女の悪行は次々暴かれていった。これから、彼女はその罪に対する罰を受けることになるだろう。
二人の婚約も、やはり破棄された。彼女の行いによって、フェルリンド公爵家の評判は地に落ちることになったのだ。
「さて、今日、君に来てもらったのは他でもない。私の娘であるアルキーナの非道に対する謝罪をしたいと思ったのだ」
「はい……」
フェルリンド公爵家が揺れる中、私は現当主であるアルガーン様に呼び出されていた。彼が言っている通り、アルキーナ様の行いに対しての謝罪をしたいようだ。
アルガーン様は、アルキーナ様の行いをまったく把握していなかった。彼は忙しい人であり、アルキーナ様がひた隠しにしていたことによって伝わらなかったのである。
アルガーン様は、恐らく悪い人ではない。そんなに知っている訳ではないが。少なくともアルキーナ様のような人ではないことは確かである。
「本当にすまなかった……娘の非道、それに気づくことができなかった私。本当に、情けないものだ。フェルリンド公爵家の評判が地に落ちるのも当然のことだな……」
「アルガーン様……」
アルガーン様は、私に向かって頭を下げてきた。
公爵家の貴族が、平民に頭を下げる。そんなことは、滅多にないことだろう。
私は、少し気まずかった。正直、彼に謝られても、私の心はそれ程晴れないからだ。
罪を犯したのは、アルキーナ様である。結局、彼女は謝らなかった。そんな中で他のヒトに謝られても、複雑な気持ちになるだけなのだ。
「おっと、すまない。紅茶の一杯でも出すべきだったな。少し待ってくれ。今、準備する」
「あ、それなら、私が……」
「いや、大丈夫だ。私は、こういうことが好きでね。普段は使用人に任せているのだが、本当は自分でやりたいと思っているのだよ」
「そ、そうですか……」
そこで、アルガーン様は紅茶を入れ始めた。
なんというか、彼は少し変わった人であるらしい。こんな状況で、紅茶を振る舞おうだなんて、普通は思わないはずである。
「そう、私は君に少しだけ話したいことがあるのだ。老人の毒にも薬にもならない話だと思ってくれて構わない。ただ、君に聞いて欲しいのだ」
「話ですか? 別に、構いませんけど……」
紅茶を出しながら、アルガーン様は私の対面に座った。
どうやら、何か他に話したいことがあるようだ。一体、何の話なのだろうか。
二人の婚約も、やはり破棄された。彼女の行いによって、フェルリンド公爵家の評判は地に落ちることになったのだ。
「さて、今日、君に来てもらったのは他でもない。私の娘であるアルキーナの非道に対する謝罪をしたいと思ったのだ」
「はい……」
フェルリンド公爵家が揺れる中、私は現当主であるアルガーン様に呼び出されていた。彼が言っている通り、アルキーナ様の行いに対しての謝罪をしたいようだ。
アルガーン様は、アルキーナ様の行いをまったく把握していなかった。彼は忙しい人であり、アルキーナ様がひた隠しにしていたことによって伝わらなかったのである。
アルガーン様は、恐らく悪い人ではない。そんなに知っている訳ではないが。少なくともアルキーナ様のような人ではないことは確かである。
「本当にすまなかった……娘の非道、それに気づくことができなかった私。本当に、情けないものだ。フェルリンド公爵家の評判が地に落ちるのも当然のことだな……」
「アルガーン様……」
アルガーン様は、私に向かって頭を下げてきた。
公爵家の貴族が、平民に頭を下げる。そんなことは、滅多にないことだろう。
私は、少し気まずかった。正直、彼に謝られても、私の心はそれ程晴れないからだ。
罪を犯したのは、アルキーナ様である。結局、彼女は謝らなかった。そんな中で他のヒトに謝られても、複雑な気持ちになるだけなのだ。
「おっと、すまない。紅茶の一杯でも出すべきだったな。少し待ってくれ。今、準備する」
「あ、それなら、私が……」
「いや、大丈夫だ。私は、こういうことが好きでね。普段は使用人に任せているのだが、本当は自分でやりたいと思っているのだよ」
「そ、そうですか……」
そこで、アルガーン様は紅茶を入れ始めた。
なんというか、彼は少し変わった人であるらしい。こんな状況で、紅茶を振る舞おうだなんて、普通は思わないはずである。
「そう、私は君に少しだけ話したいことがあるのだ。老人の毒にも薬にもならない話だと思ってくれて構わない。ただ、君に聞いて欲しいのだ」
「話ですか? 別に、構いませんけど……」
紅茶を出しながら、アルガーン様は私の対面に座った。
どうやら、何か他に話したいことがあるようだ。一体、何の話なのだろうか。
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