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6.屋上で考えて
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結局オーディス様との話は、すぐに終わってしまった。
お互いに不機嫌になって、そのまま自然と終わることになったのだ。
それから私は、屋上に来ている。テセネアは気遣って一人にしてくれた。そこで私は、これからのことを考えている。
「両親はリメルナの肩を持つだろうし……」
リメルナとオーディス様との婚約は、ロディオン子爵家にとって良いものではあるだろう。
トレファー侯爵家と繋がりができるのだから、悪い話ではないはずだ。リメルナを嫁に出すことも、厭わないかもしれない。
「でも、考えてみれば変な話だ。オーディス様は確か次男だったはず。トレファー侯爵家の長男は、どうして家を継がないんだろう?」
状況を整理した私は、オーディス様の立場というものを思い出していた。
トレファー侯爵家の内情なんて知らないが、彼の兄はどうしているのだろうか。普通に考えれば、そちらが家を継ぐはずであるというのに。
いや、そんなことは気にする必要があることという訳でもない。重要なのは、リメルナとオーディス様との婚約だ。
本人達が幸せなら、それでも良いのだろうか。
オーディス様は、ロディオン子爵家に興味を示していない。そういうことなら、彼との婚約によって家が揺るぐということもないといえる。
それなら後は、二人の問題だ。トレファー侯爵家を二人で無事に守っていけるなら、それは最早私が口出しするべきことでもないように思えてくる。もちろん、あれと親戚として付き合うというのは苦痛ではあるが。
「リメルナのことがわからない……どうして、あんな人を選んだの? それならもっと、マシな人がいっぱいいたのにっ!」
リメルナが求婚されたという噂は、何度も聞いてきた。その中には、私が知っている人も少なくない。
その中には、立派な人もいた。少なくとも、オーディス様よりは良い人達ばかりだ。どうしてその人達ではなく、彼を選んだのだろうか。私にはそれがまったくわからない。
「どうして!」
「……早まってはいけませんよ」
「え?」
訳がわからないことに思わず叫んでいた私は、聞こえてきた声に固まった。
屋上には、私一人しかいないと思っていた。誰かがいたという事実に、急激に体が熱を帯び始める。なんだかとても恥ずかしい。
それになんというか、声の主は勘違いをしているような気がする。確かに私は屋上の端にいるが、別にそんなつもりはないのだが。
「あの、私は別に……って、あなたは」
「どうも」
振り返った私の目に入ってきたのは、見知った人物であった。
彼の名前は、ゼルート・サルガス。サルガス公爵家の次男であり、私のクラスメイトだ。
お互いに不機嫌になって、そのまま自然と終わることになったのだ。
それから私は、屋上に来ている。テセネアは気遣って一人にしてくれた。そこで私は、これからのことを考えている。
「両親はリメルナの肩を持つだろうし……」
リメルナとオーディス様との婚約は、ロディオン子爵家にとって良いものではあるだろう。
トレファー侯爵家と繋がりができるのだから、悪い話ではないはずだ。リメルナを嫁に出すことも、厭わないかもしれない。
「でも、考えてみれば変な話だ。オーディス様は確か次男だったはず。トレファー侯爵家の長男は、どうして家を継がないんだろう?」
状況を整理した私は、オーディス様の立場というものを思い出していた。
トレファー侯爵家の内情なんて知らないが、彼の兄はどうしているのだろうか。普通に考えれば、そちらが家を継ぐはずであるというのに。
いや、そんなことは気にする必要があることという訳でもない。重要なのは、リメルナとオーディス様との婚約だ。
本人達が幸せなら、それでも良いのだろうか。
オーディス様は、ロディオン子爵家に興味を示していない。そういうことなら、彼との婚約によって家が揺るぐということもないといえる。
それなら後は、二人の問題だ。トレファー侯爵家を二人で無事に守っていけるなら、それは最早私が口出しするべきことでもないように思えてくる。もちろん、あれと親戚として付き合うというのは苦痛ではあるが。
「リメルナのことがわからない……どうして、あんな人を選んだの? それならもっと、マシな人がいっぱいいたのにっ!」
リメルナが求婚されたという噂は、何度も聞いてきた。その中には、私が知っている人も少なくない。
その中には、立派な人もいた。少なくとも、オーディス様よりは良い人達ばかりだ。どうしてその人達ではなく、彼を選んだのだろうか。私にはそれがまったくわからない。
「どうして!」
「……早まってはいけませんよ」
「え?」
訳がわからないことに思わず叫んでいた私は、聞こえてきた声に固まった。
屋上には、私一人しかいないと思っていた。誰かがいたという事実に、急激に体が熱を帯び始める。なんだかとても恥ずかしい。
それになんというか、声の主は勘違いをしているような気がする。確かに私は屋上の端にいるが、別にそんなつもりはないのだが。
「あの、私は別に……って、あなたは」
「どうも」
振り返った私の目に入ってきたのは、見知った人物であった。
彼の名前は、ゼルート・サルガス。サルガス公爵家の次男であり、私のクラスメイトだ。
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