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2.妹の噂

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 双子の姉妹であるが、学園内でリメルナと話すということはあまりない。
 クラスも寮の部屋も違うため、そもそも顔を合わせる機会というのも少ないといえる。
 家族間で共有するべきことでもなければ、わざわざ会おうとも思わない。私達姉妹の関係というものは、この学園においては希薄なものだ。

「リメルナがさ、噂になってたよ」
「え?」

 ただ、リメルナという人間は学園でも目立つ存在である。
 そういう存在の噂というものは、勝手に入ってくるものだ。例えテセネアから聞かなかったとしても、クラスで誰かが話していれば耳に入って来る。
 そんな時の私の心情というものは、それ程穏やかなものでもない。家族の話を冷静に聞ける程に、私はまだ大人になれていないのである。

「今度は何の噂?」
「恋愛絡みかな?」
「恋愛……」

 テセネアの口から出てきた言葉に、特に驚きというものがある訳でもない。
 リメルナは、優秀で有名な生徒である。そんな彼女に憧れる者は少なくない。浮いた噂というものは、もう何度も聞いてきた。

「また求婚されたとか?」
「まあ、そんな感じかな」
「そう……それは別に、気にすることでもないかな。いつも通りだったんでしょう?」

 私達は、貴族という身分である。その婚約というものは、家同士が決めることも、かつては多かったという。
 しかしながら、魔法学園という特殊な場所ができたことによって、近年はそのバランスというものが崩れているらしい。この学園で、結婚相手が決まる人もいるそうだ。

 私からしてみれば、そんなことは絵空事であるのだが、リメルナの場合はそうでもないといえるだろう。もしかしたらここで彼女は、良い人を見つけるかもしれない。
 なんて初めは思っていた私だが、今は少し異なる考えを抱いている。リメルナは、今まで一度たりとも告白や求婚を受け入れていない。その辺りに関する彼女の壁は、厚そうなのだ。
 故に私は、気楽に考えていた。どうせどこかの誰かがまた撃沈したのだろう。それはよくあることなので、一々気にしていても仕方ないことだ。

「それが今回は、いつもと違ったらしいよ」
「え?」
「リメルナが求婚を受け入れたみたい……」
「んなっ……!」

 テセネアの言葉に、私は思わず変な声を出してしまった。
 正直それは、信じられるようなことではない。あのリメルナの眼鏡にかなう人がいるなんて、思ってもいなかった。
 これには流石の私も興味を抱かざるを得ない。私にもまったく持って関係がないことでもないし、その噂については考える必要があるといえるだろう。
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