無実の罪で国外追放された侯爵令嬢は、隣国の王子に助けられました。

第8話 実行犯は

「今回の計画は、ケットラ個人の行動です。それなら、国王などの関係者からの協力も得にくいでしょう。彼が権力を振りかざせない人達に、知られる可能性がありますかから」
「それは、そうですね……」
「そのため、ケットラは自身で暗殺者を探さなければならないでしょう。ですが、それは中々難しいことです。信頼できる相手を探さなければなりませんから……」

　アドナス様は、最初にそのようなことを言った。
　確かに、今回の事件で国王などの関係者の協力を得ることは難しいだろう。他の関係者が、計画に参加するとも限らないため、かなり危険である。
　それなら、ケットラが自ら探さなければならない。だが、それはかなり難しいことだろう。
　暗殺者を探すにしても、今回はかなり信頼できる者でなければ任せられない。しかし、そんな暗殺者は、そう見つかるものではないだろう。

「そもそも、暗殺者は権力を振りかざせるとはいえ、かなり危険です。そのような人物に、この計画を頼むのは少々難しいでしょう」
「確かに、そうかもしれませんね……」

　アドナス様の理論は、納得できるものだった。
　やはり、ケットラは暗殺者の類を雇っていないようだ。

「でも、それなら誰が実行犯になったのでしょう……？」
「それは、僕も考えていることです。ただ、色々な情報を見ていくと、一つそうではないかと思う人物がわかりました」
「そうなのですか？」
「ええ、私の推測に過ぎませんが」

　私の質問に、アドナス様はそう答えてくれた。
　推測に過ぎないが、何か思い当たる人物がいるらしい。

「順を追って説明しておきましょうか。まず、今回の事件の殺害方法を覚えていますか？」
「ええ、毒殺ですね」
「はい、その通りです」

　アドナス様は、私に対して殺害方法を聞いてきた。
　今回の事件は、毒殺によって起こったものとされている。
　この辺りは、現場の状況であったため、ケットラでも細工はしにくいはずだ。そのため、間違いはないはずである。

「この毒殺という手段は、例え力がなくても殺害できる方法です」
「そうですね……だから、私でも殺害できたのだと言われました」
「ええ、これはそう見せる必要があったということかもしれません。ですが、実行犯が非力な者だったという考え方もできます」

　毒殺という方法は、非力な人物でも殺害できる方法だ。
　そのため、私でも殺害できるとみなされたのである。
　そう見せるため、実行犯が毒殺を選んだ。そう考えることもできるが、アドナス様は犯人が非力だったからだと思っているらしい。