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17(イルリナ視点)
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私は、行動を開始していた。
これから、全てを終わらせる。両親との因縁も、私の冤罪も、全て終わらせて、アルリナの元に行くのだ。
「……アルリナ」
「お母様、どうかされましたか?」
「どうして、罪を犯して追放されるのがあなたではなかったのかしら? イルリナがいなくなって、あなたみたいな落ちこぼれが残っていたって、何も意味はないじゃない」
私が屋敷内を歩いていると、お母様が罵倒してきた。
彼女は、私のことをアルリナと思い込んでいる。母親でありながら、私達を見分けることすらできないのだ。
その浅はかな思考回路もそうだが、この人は私達に対して、一度でも母親らしいことをしたことがあっただろうか。
「お言葉ですが……お母様、この家の一番の膿はあなたとお父様だと思いますけど」
「なっ……」
今の私に、自分の気持ちを誤魔化す必要はなかった。
だから、私は長年積もってきた思いを打ち明ける。それで、彼女から何を言われようとも、構わない。もう後戻りする気はないのだから。
「ずっと思っていましたが……あなたは、私達に何をしてくれたのでしょうか? 痛みを与えるだけの存在を、私達が肯定するとでも思っていたのですか?」
「あなた、自分が何を言っているか……」
「暴力に頼るのですか? その浅はかな思考回路が私には……」
「黙りなさい!」
お母様は、私の頬に手を振るってきた。
激しい痛みが走ってくる。それは、アルリナが受けてきた痛みだ。
私は、やっと彼女の痛みを真の意味で理解することができたのである。これ程の痛みに耐えてきた彼女は、どれだけ我慢強かったのだろう。
「……気は済みましたか?」
「なっ……」
「そうやって……いつも、自分が辛くなると誰かに当たって。あなたは、最低の人間です。どれだけ取り繕っても、それは変わりません」
「出来損ないの分際で、私にまだ文句を垂れるというの!?」
お母様は、もう一度その手を振りかざしてきた。
そんなお母様を、私は睨みつける。忌々しい存在である彼女に、精一杯の怒りを込めて。
「うぐっ……」
私の視線に、お母様は少し怯んでいた。
この程度で怯む程、彼女の意思は緩いのだ。本当に、どうしようもない人である。
「まだ……気づかないのですね」
「な、何を……」
「私を見抜けない程、あなたの目は腐っているということです」
「……なっ、まさか……そんな」
そして、この母親の一番の愚かさは、私を私と見抜けないことだった。
母親でありながら、私を見抜けなかった彼女に、私は怒りすら通り越して、憐れみを覚えるのだった。
これから、全てを終わらせる。両親との因縁も、私の冤罪も、全て終わらせて、アルリナの元に行くのだ。
「……アルリナ」
「お母様、どうかされましたか?」
「どうして、罪を犯して追放されるのがあなたではなかったのかしら? イルリナがいなくなって、あなたみたいな落ちこぼれが残っていたって、何も意味はないじゃない」
私が屋敷内を歩いていると、お母様が罵倒してきた。
彼女は、私のことをアルリナと思い込んでいる。母親でありながら、私達を見分けることすらできないのだ。
その浅はかな思考回路もそうだが、この人は私達に対して、一度でも母親らしいことをしたことがあっただろうか。
「お言葉ですが……お母様、この家の一番の膿はあなたとお父様だと思いますけど」
「なっ……」
今の私に、自分の気持ちを誤魔化す必要はなかった。
だから、私は長年積もってきた思いを打ち明ける。それで、彼女から何を言われようとも、構わない。もう後戻りする気はないのだから。
「ずっと思っていましたが……あなたは、私達に何をしてくれたのでしょうか? 痛みを与えるだけの存在を、私達が肯定するとでも思っていたのですか?」
「あなた、自分が何を言っているか……」
「暴力に頼るのですか? その浅はかな思考回路が私には……」
「黙りなさい!」
お母様は、私の頬に手を振るってきた。
激しい痛みが走ってくる。それは、アルリナが受けてきた痛みだ。
私は、やっと彼女の痛みを真の意味で理解することができたのである。これ程の痛みに耐えてきた彼女は、どれだけ我慢強かったのだろう。
「……気は済みましたか?」
「なっ……」
「そうやって……いつも、自分が辛くなると誰かに当たって。あなたは、最低の人間です。どれだけ取り繕っても、それは変わりません」
「出来損ないの分際で、私にまだ文句を垂れるというの!?」
お母様は、もう一度その手を振りかざしてきた。
そんなお母様を、私は睨みつける。忌々しい存在である彼女に、精一杯の怒りを込めて。
「うぐっ……」
私の視線に、お母様は少し怯んでいた。
この程度で怯む程、彼女の意思は緩いのだ。本当に、どうしようもない人である。
「まだ……気づかないのですね」
「な、何を……」
「私を見抜けない程、あなたの目は腐っているということです」
「……なっ、まさか……そんな」
そして、この母親の一番の愚かさは、私を私と見抜けないことだった。
母親でありながら、私を見抜けなかった彼女に、私は怒りすら通り越して、憐れみを覚えるのだった。
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