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 私という存在は、とても脆いものである。
 自分とよく似た妹がいなければ、生きていくこともできないちっぽけな存在。それが、私なのである。
 だから、イルリナが罪を犯して、国外に追放されると聞いて、私は絶望することになった。

「そんな……どうして、そんなことになったの?」
「わからない。でも、私を恨んでいる人はたくさんいた。だから、その人達が私のことを嵌めたのだと思う」
「嵌めた……そんな、そんなひどいことが……」

 王子の婚約者になったイルリナは、無実の罪を着せられていた。
 その結果、彼女は婚約を破棄させられて、国外に追放されることになってしまった。婚約者であるゼパイル第三王子が、簡単に信用してしまい、そのような罰を受けることになってしまったのだ。

「冤罪である証拠を掴めばいいよね? そうすれば……」
「駄目、もう時間がない。それを覆せるだけのものを、私は用意できない」
「駄目……そんなのは、絶対に駄目。イルリナを、無実の罪で国外追放するなんて、そんなの絶対に駄目だよ」

 私は、イルリナが国外に追放されるという結果に、納得できていなかった。
 それは、私が彼女という存在がいなければ、どうしようもなかったからである。自分という存在を維持してくれる彼女がいなくなることに、私はどうしても納得できなかったのだ。
 同時に、そんな自分が嫌になっていた。どうして、自分は妹が悪意に晒されていることの方に怒りを感じていないのだろう。自分のことしか考えない卑しい自分が、私はとても嫌だったのである。

「そうだ……私が、私が代わりになればいいんだ」
「アルリナ?」
「イルリナがいなくなったら、私はもう生きていけない。だから、私が代わりに国外追放される。国外追放は、助かる可能性もあるけど、多くは死んでしまうんだよね? だったら、私が行くよ。どうせ、イルリナがいなかったら、この命に価値はないから」

 私が出した結論は、自分勝手な私が妹のためにできる唯一のことだった。
 妹の代わりになって、国外追放される。それが、一番いいと思ったのだ。
 私は、どうせイルリナがいなくなれば、死ぬだろう。この苦痛に溢れた世界に耐え切れず、自らの命を絶つはずである。
 それなら、国外追放されるのは私でいい。どうせなくなる命なのだから、今ここで使うべきなのだ。

「髪飾りを変えたら、私はイルリナ。あなたはアルリナ。ほら、誰にもわからないよ」
「でも……」
「お願い、イルリナ……」

 私は、必死にイルリナの手を握りながら懇願した。
 その懇願が、届くという確信があった。そのように頼まれたら、妹が断れないことを知っていたからだ。
 結局、私はどこまでも卑しい人間なのである。
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