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9.当然の躊躇い

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 私達は、騎士達に拘束されて王城内を歩いていた。
 王族達は、有無を言わさず私を追放するつもりであるらしい。
 しかし、私を連れて行っている騎士達の足取りというものは、明らかに重かった。彼らの一歩一歩からは、躊躇が伝わって来る。

 それは当然のことだ。私がいなくなったらどうなるかなんて、まともな人――増してや騎士であるならば、よくわかっていることだろう。
 だが一騎士でしかない彼らが、国王からの命令に逆らえる訳もない。故に渋々ながら、私を連れて行くしかないのだろう。

 そんな中で、私はどうするべきかを考えていた。
 このままみすみす追放されていい訳はない。ただ、王族があのような考えをしている以上、王城には居づらいし、どうすればいいだろうか。

「……少しよろしいでしょうか?」
「うん?」
「あなたは……ランペル侯爵令息」

 私が色々と考えていると、二人の騎士が足を止めた。
 私も足を止めて前を見てみると、そこにはランペル様がいる。彼は鎧に身を包んでおり、その恰好は平時のものとは異なっているようだった。
 魔物の討伐の帰りだということだろうか。そう思っていた私の目の前から、ランペル様が突如消え去った。

「うぐっ……!」
「ぎゃあっ!」

 直後に聞こえてきたのは、私を拘束していた騎士達の悲鳴であった。
 それに気を取られていると、私の手を拘束していた縄が切れた。それらを行ったのが、誰であるかは明らかだ。

「ランペル様……」
「リルーナ様、どうか何も聞かずに付いて来てください」
「……わかりました」

 ランペル様の言葉に、私は少し考えてから頷いた。
 正直、状況はよくわからない。ただ、彼が私の敵であるとは考えにくい。こちらとしてもいつかは抜け出したいと思っていたし、好都合だ。

「それでは失礼します」
「え? あ、その……」

 私が頷くと、ランペル様は私の体を素早く持ち上げた。
 所謂、お姫様抱っこの形だ。どうやら彼は私を、このまま運んでいくつもりらしい。
 少し面食らってしまったが、確かにこの方が良いといえる。私は行き先を知らない。運んで行ってもらう方が、恐らく効率は良いだろう。

「少々荒っぽくなりますので、しっかりと掴まっていてください」
「ええ、よろしくお願いします」
「それでは、行きます」

 言葉を発してから、ランペル様は動き始めた。
 屈強な騎士である彼の足は、私を抱えながらでも速い。

 そんな光景を見て、周囲の人達は困惑しているようだった。どうやらまだ私の追放は、知れ渡っていないらしい。
 それはこちらとしては、好都合だといえる。このまま逃げ切ることができそうだ。
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