23 / 28
第23話 静かなる王城
しおりを挟む
私とファムルド様は、王城内を歩いていた。
今日は、いよいよ生贄の日である。
この日のために、私達は作戦を練ってきた。それを実行する時が来たのだ。
朝にお姉様と会ったが、彼女の様子はいつも通りだった。
これから、生贄になるはずの彼女は、まったく動じていなかったのである。
お姉様は、命を捨てる決意を、しているのかもしれない。彼女は、他者のために命を投げ出せる人だ。だから、恐怖など抱いていないのかもしれない。
私は、そんなお姉様の精神を素晴らしいものだと思う。誰かのために、命を懸けられるのは立派なことだ。
だが、そんな立派な志を持つお姉様の気持ちを、私は否定したい。確かに、お姉様の命がなくなれば、たくさんの人は救われるだろう。しかし、それでは、私の気持ちはまったく晴れないのだ。
他者のために命を投げ出せるのだから、家族のために命を投げ出さない選択をしてもらいたい。それが、今の私の気持ちである。
これを、私という人間が思うのは間違っているだろう。お姉様に対して、私は嫌な態度を取っていた。だから、お姉様は家族のことなどどうでもいいと思っているかもしれない。
もしそうだったとしたら、私は猶更お姉様を助けなければならないだろう。
今までの負債を取り消すために、お姉様を助けるのだ。
「静かですね……」
「ええ、王城がここまで静かとは珍しいことです。巡回の兵士が見当たらないのは、好都合ですが、少し不気味ですね」
王城の中は、何故かとても静かだった。
恐らく、それはこれから王国でも秘匿しておきたいことが行われるからだろう。
今回の生贄のことを知っている人は、一部だけである。情報が漏れないように、兵士の数も抑えているのだろう。
もちろん、それは私達にとっては好都合だ。兵士が少ないのだから、とても動きやすい。それは、とてもありがたいことだ。
だが、兵士がいないという訳でもないだろう。最小限の強力な兵士が、中枢部分を守っているはずだ。つまり、決して楽という訳ではないはずである。
「あの部屋が、生贄が執り行われる部屋ですね……」
「見張りがいますね……」
「ええ、流石に、この辺りまで来ると、警備がされているようですね……」
生贄が取り仕切られる部屋の前には、兵士達が二人いた。
恐らく、中にはあの何十倍もの兵士がいるだろう。ここは、生贄が行われるとても大切場所である。一番、強固な守りがあるだろう。
「さて、とりあえず、ここで待ちましょうか。マーティア嬢が来るまでは待機しておいた方がいいでしょう」
「ええ、そうですね……」
私達の作戦は、お姉様が生贄になる直前で助ける作戦だった。
だから、お姉様が部屋に入るまでは、ここで待機するのだ。
こうして、私達はしばらく待機するのだった。
今日は、いよいよ生贄の日である。
この日のために、私達は作戦を練ってきた。それを実行する時が来たのだ。
朝にお姉様と会ったが、彼女の様子はいつも通りだった。
これから、生贄になるはずの彼女は、まったく動じていなかったのである。
お姉様は、命を捨てる決意を、しているのかもしれない。彼女は、他者のために命を投げ出せる人だ。だから、恐怖など抱いていないのかもしれない。
私は、そんなお姉様の精神を素晴らしいものだと思う。誰かのために、命を懸けられるのは立派なことだ。
だが、そんな立派な志を持つお姉様の気持ちを、私は否定したい。確かに、お姉様の命がなくなれば、たくさんの人は救われるだろう。しかし、それでは、私の気持ちはまったく晴れないのだ。
他者のために命を投げ出せるのだから、家族のために命を投げ出さない選択をしてもらいたい。それが、今の私の気持ちである。
これを、私という人間が思うのは間違っているだろう。お姉様に対して、私は嫌な態度を取っていた。だから、お姉様は家族のことなどどうでもいいと思っているかもしれない。
もしそうだったとしたら、私は猶更お姉様を助けなければならないだろう。
今までの負債を取り消すために、お姉様を助けるのだ。
「静かですね……」
「ええ、王城がここまで静かとは珍しいことです。巡回の兵士が見当たらないのは、好都合ですが、少し不気味ですね」
王城の中は、何故かとても静かだった。
恐らく、それはこれから王国でも秘匿しておきたいことが行われるからだろう。
今回の生贄のことを知っている人は、一部だけである。情報が漏れないように、兵士の数も抑えているのだろう。
もちろん、それは私達にとっては好都合だ。兵士が少ないのだから、とても動きやすい。それは、とてもありがたいことだ。
だが、兵士がいないという訳でもないだろう。最小限の強力な兵士が、中枢部分を守っているはずだ。つまり、決して楽という訳ではないはずである。
「あの部屋が、生贄が執り行われる部屋ですね……」
「見張りがいますね……」
「ええ、流石に、この辺りまで来ると、警備がされているようですね……」
生贄が取り仕切られる部屋の前には、兵士達が二人いた。
恐らく、中にはあの何十倍もの兵士がいるだろう。ここは、生贄が行われるとても大切場所である。一番、強固な守りがあるだろう。
「さて、とりあえず、ここで待ちましょうか。マーティア嬢が来るまでは待機しておいた方がいいでしょう」
「ええ、そうですね……」
私達の作戦は、お姉様が生贄になる直前で助ける作戦だった。
だから、お姉様が部屋に入るまでは、ここで待機するのだ。
こうして、私達はしばらく待機するのだった。
11
お気に入りに追加
575
あなたにおすすめの小説
好きな人と友人が付き合い始め、しかも嫌われたのですが
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
ナターシャは以前から恋の相談をしていた友人が、自分の想い人ディーンと秘かに付き合うようになっていてショックを受ける。しかし諦めて二人の恋を応援しようと決める。だがディーンから「二度と僕達に話しかけないでくれ」とまで言われ、嫌われていたことにまたまたショック。どうしてこんなに嫌われてしまったのか?卒業パーティーのパートナーも決まっていないし、どうしたらいいの?
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
イケメンと婚約したい幼なじみは、私の悩みを欠片もわかっていなかったようですが、彼女の強引さのおかげで私は幸せになれました
珠宮さくら
恋愛
マルジョリー・アルヴィエには、イケメン好きの幼なじみがいるのだが、彼女は格好いい子息と婚約することに心血を注いでいるような令嬢だった。
そんな幼なじみがいたことで、マルジョリーは婚約破棄したばかりで留学する彼女に巻き込まれるかのように留学することになって、人生が良い方向に進むことになるとは思いもしなかった。
辺境伯令嬢の私に、君のためなら死ねると言った魔法騎士様は婚約破棄をしたいそうです
茜カナコ
恋愛
辺境伯令嬢の私に、君のためなら死ねると言った魔法騎士様は婚約破棄をしたいそうです
シェリーは新しい恋をみつけたが……
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
記憶喪失の令嬢は無自覚のうちに周囲をタラシ込む。
ゆらゆらぎ
恋愛
王国の筆頭公爵家であるヴェルガム家の長女であるティアルーナは食事に混ぜられていた遅延性の毒に苦しめられ、生死を彷徨い…そして目覚めた時には何もかもをキレイさっぱり忘れていた。
毒によって記憶を失った令嬢が使用人や両親、婚約者や兄を無自覚のうちにタラシ込むお話です。
王子殿下の慕う人
夕香里
恋愛
エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。
しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──?
「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」
好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。
※小説家になろうでも投稿してます
【完結】結婚式当日、婚約者と姉に裏切られて惨めに捨てられた花嫁ですが
Rohdea
恋愛
結婚式の当日、花婿となる人は式には来ませんでした───
伯爵家の次女のセアラは、結婚式を控えて幸せな気持ちで過ごしていた。
しかし結婚式当日、夫になるはずの婚約者マイルズは式には現れず、
さらに同時にセアラの二歳年上の姉、シビルも行方知れずに。
どうやら、二人は駆け落ちをしたらしい。
そんな婚約者と姉の二人に裏切られ惨めに捨てられたセアラの前に現れたのは、
シビルの婚約者で、冷酷だの薄情だのと聞かされていた侯爵令息ジョエル。
身勝手に消えた姉の代わりとして、
セアラはジョエルと新たに婚約を結ぶことになってしまう。
そして一方、駆け落ちしたというマイルズとシビル。
二人の思惑は───……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる