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第10話 緊張する対面

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 私は、王城を後にして、家に戻って来ていた。
 ファムルド様から聞かされたことは、普通は信じられないことだった。
 ただのおとぎ話。それで、片付けるのは簡単だ。だが、それが本当である可能性を、私は考えずにはいられなかった。
 お姉様が婚約者に選ばなかったのは、厄災を封じ込めるための生贄になるから。そう考えると、色々なことの辻褄が合ってしまうのだ。

 その真実を確かめるために、私はとある部屋の前まで来ていた。
 ここは、お姉様の部屋である。この部屋を自発的に訪ねるなど、いつ以来だろうか。
 私は、一度深呼吸をする。私にとって、お姉様と話すのはとても緊張することだ。増してや、今からするのは突拍子もない話。これで緊張しない訳がない。

「失礼します」
「え? あ、はい。今、開けます」

 私が、部屋の戸を叩くと、部屋の中からは驚きの声が返ってきた。
 恐らく、声で私だとわかったため、お姉様が驚いているのだろう。

「え、えっと……ミリティア?」
「お姉様、少しお話がしたいのですが、よろしいでしょうか?」
「え? ええ、別に構わないけど……あ、とりあえず、入って」

 驚くお姉様に対して、私はいつもと変わらない態度で接した。
 冷たく一歩を置くような態度。これが、私がお姉様に対してできる最適な態度である。

 お姉様のことを、私は嫌いな訳ではない。彼女のせいで私の人生は苦痛に溢れたものになった。だが、その責任は彼女にはない。それはわかっている。
 しかし、それがわかっていても、どうしても彼女にぶつけたくなってしまう。どうして、あなたのような人がいるのか。そのように思ってしまうのだ。

 だから、距離を取っておきたいのである。冷めた心で、接して、感情を動かさない。その方が、絶対にいいのだ。
 この間は、少しそれが崩れていた気がする。今日は、感情を動かさないように気をつけなければならないだろう。

「それで、話とは一体何かしら?」
「えっと……」

 部屋の中で、向かい合って座りながら、私はあることを思っていた。
 お姉様の部屋には、あまりにも物が少ないのだ。必要最低限のものしか置いていない。その部屋の様子は、少し歪なように思えてしまった。
 もちろん、お姉様がそういう人になった可能性もある。私は、昔のお姉様のことは知っているが、今のお姉様のことはよく知らない。数年経って、考えが変わっていても、おかしくはないだろう。

 しかし、あの話を聞いた後であるため、そうは思えなくなっていた。
 なんというか、旅立つ者が、身辺の整理をしているようにしか見えないのだ。
 それを確かめるために、お姉様に事情を聞かなければならないだろう。
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