苺のないショートケーキ

ぱこ

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1日目

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「おはよう。何か食べられるものある?」
「昨日言っただろ、食パンしかない。」
「あー昨日の晩御飯もそーだったね。」
「まあいいや」と言い食パンをトーストし食べ始めた。昨日来たばかりなのに使いこなしすぎだろ。
「じゃあ今日買い物行こう!」
少女はモゴモゴしながら言ったので何を言ったのかわからなかったがおそらくそう言ったのだろう。
「…分かった。」
仕方なく了承する。
「よっし、この辺で一番大きなショッピングモールに行きたい!」
まあ行く以外の選択肢はないだろう。

早速車を出し、目的地に向かう。

太陽の光があまりにも眩しくて前が見づらい。
「まず食べ物は買わなきゃでしょー、洋服も欲しいなー。」
僕は何も言わず、勝手に喋らせる。鼻歌を歌ったり、ずっと何かを話していた。
コイツ黙れないのか。
「はー、着いたー。洋服買いに行こうよ!」
言われるがままに着いて行く。人が多過ぎて少し酔う。
で、今なんでメンズのショップ前にいるんだ?
「なんで?って顔してる。だってあなた同じ服しかないじゃん。」
「同じ服じゃねーよ。てっきりお前の服だと思ってた。」
「わたしのこと考えてくれてたの?案外優しいんだー。」
ニヤニヤした顔は放っておき、ぼーと突っ立っていると勝手にコーディネートされ試着室に入れられた。流れに身を任せて着替えるしかない。今更出るのもお店に失礼な気がする。
僕は素直に着替えカーテンを開ける。
「おぉ、似合うー!」
正直テキトーに言っているようにしか聞こえない。まあコイツにしてはセンスがいいんじゃないかと思っていたが違った。あのマネキンと全く同じだった。
「じゃあこれ全部お願いします。」
少女は店員を呼び止め言った。店員は笑顔を作っているが驚きが隠せてない。そりゃ仕方ない気はする。なんと言っても娘がお父さんの服を選んでそのまま買おうとしているようにしか見えない。しかも、娘の金で。それにここは結構有名なブランドだ。なんといっても高い。
「こういうのハマってるらしいんです。」
と誤魔化しておいた。
「じゃあ次どこ行く?」
「お前の服は?」
「えっ?いらなくない?」
何を言うんだこいつは。
「こっちのセリフだ。僕のほうがいらない、こんな服。」
「せっかく買ってあげたのに失礼だなぁ。」
「いいから、来い。」
僕は早足で歩き、子供服売り場に来た。
「好きなの選べ。」
「お金勿体無いじゃん。」
こいつ、人には色々やらせるくせに自分になるとなんでこうなんだ。
「何度も同じことを言わせないでくれよ。
こっちのセリフだって言ってるだろ。あと一応僕にも金くらいある。」
僕は前まで大手企業に就職していたから金はある。一人だとそんな使わないし。
「じゃあ、これが良い。」
何を躊躇っているのか分からないが恥ずかしそうに言う。
「ん、分かった。」
僕はその服をすぐに買った。なんでこんなことしてるんだろ?自分でも分からない。
少女はさっきまでの喧しさを失っていたので次は食品を買うことは僕が決めた。食品コーナーに着いた途端、少女が話しだす。
「今日ハンバーグ食べたい!」
急に五月蝿いいつも通りに戻ってしまった。
「分かった。」
もう当分こんなところに行かなくても良いようハンバーグの材料と他に買い溜めしておくことにした。

車に乗り込み隣に座る少女を見るとした不意に不思議な感じがする。殺そうとした、している人とよく一緒に居られるものだ。
少女は「ハンバーグ」を連呼し楽しそうにしている。勿論僕は無視する。
家に着きハンバーグを作る用意をしていると、玉葱を微塵切りし始めた。
「手際良いんだな。」
「ああ、慣れてるから。」
そう言って早々とハンバーグを作る。
あっという間にハンバーグが完成した。久し振りに食べるハンバーグ。というか手作り。ずっとインスタントを食べていたからか懐かしい味がした。
「はー美味しかったー。やっぱわたし料理上手い。」
「うんうん」と一人でドヤ顔しながら頷いている。
「そーだな。」
テキトーに返事をする。
「あなたに褒められると変な感じがする。」少女は少し照れているようだった。褒めたつもりはないが。
話を変えるように少女は言った。
「明日はお祭りに行こう。ショッピングモールにチラシが貼ってあったんだ。」
「はいはい。」
もう恒例になった返事。
「じゃ、さっさと寝ろ。」
この面倒くさい状況から逃げるよう寝かしつける。
「明日もよろしく。おやすみ。」
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