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第二話:犬畜生の分際で夏服って何事!?
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パン子は綿を精一杯寄せて下顎を膨らませ、安めぐみー。
ペンギンちゃん、頭頂を器用に三センチほど膨らませ、舞の海ー。
勝負はペンギンちゃんに軍配が上がったようだ。パン子は地団太踏んだ。
「アタイの勝ちね。こいつはもらっていくわよ」
「ガーー!」
週に二度、お隣の花津毬さんはパン子を連れて家に遊びに来る。今は二人でどこかお茶に行っているらしい。かまうと言うべきか、遊ぶのはいつもペンギンちゃんだ。
二人は次の勝負を始めようとしていたが、背筋に怖気を感じて振り返った。案の定、二人を不愉快にさせる光景がそこにはあった。
視線の先でにやにやしているのは双子のトイプードル、ライジャ、デズル。名付け親はママの旦那。
他人の幸せな顔はペンギンちゃんを一番不愉快にさせるものだ。しかもそれが二つ並んだ日には、比叡山に火が点く。
「なによそれー! 新しいの着せてもらってるじゃない!」
早速詰め寄った。双子は一瞬、げっ、と言わんばかりの顔をしたが、取り繕ろい、歪んだ笑い顔に戻した。
「夏服だよー」
双子は、ママに作ってもらったんだー、とそろえて言いながら顔を見合わせてにんまり……。
ママはとっても器用なのだ。旦那と喧嘩をした翌日、弁当のごはんに蛾の形に整えたとろろ昆布を乗せる。ペンギンちゃんはそんなママが大好きだ。
ちなみにママの旦那はママの旦那だ。パパではない。他人の小汚い中年男だ。
「何それ、犬畜生の分際で! 絶対あんたたちのじゃないでしょ」
「ギャー」
パン子も叫びによる威嚇で合いの手を入れた。
「そんなことないもん、僕たちにつくってくれたんだー」
二度はこういう時、ライジャ、デズルの順で返事をする。どちらがどちらか、あまりペンギンちゃんは認識していない。双子のどっちがどっちなんて友人や恋人になる場合以外、あまり頭を使うことではないのだ。
「ねえー」
いつも話の最後には双子は顔を見合わせて、ねえー、と言う。ペンギンちゃんの腹底がだんだん煮立ってきた。
「ちょっと、良く見せなさいよ。いい生地じゃないのよ」
パン子が近づくと双子は後ずさりした。
「何で下がってるのよ」
「いや、別に……」
「アタチのお願いが聞けないの!」
双子はこそこそ耳打ちをしだした。
「やだやだ、おばさんっていつも乱暴だよね」
「このひとたち、無駄に圧がすごいんだよねー。普段何たべてるのかなあ」
「ねえー」
一言一句漏れなく二匹は聞き取った。スイッチが入るには十分である。
「おらあ! いい度胸だよ、犬ども。よこせ!」
「ガーー、むしり取ってやるっ!」
あっと言う間にペンギンとパン子は二人から夏服を奪い取った。
「さむいー」
服を失った双子はあまりに貧相な裸体をさらしながら涙を流して、お互い身を寄せ合っていた。
今は六月上旬。双子にとって極寒の寒さだ。一時間でシャイニングの親父みたいになる。
「お洋服返してくだしゃい」
「キーー」
懇願する双子にむけて二匹は頭の紐をしならせ、鞭のごとく打ち付けた。
「ひいーー」
「あくまーー」
双子を追い払った後はメタモルフォーゼ。楽しみのおきがえの時間だ。素っ裸から、お洒落なボーイッシュ夏服にチェンジ……。
三分後、夏服をぎちぎちに張りながら、二人がご満悦の顔でふんぞり返っていた。
「ゲゲゲゲゲゲ!」
「ガガガガガガ!」
大変、お上品である。
「前から思ってたんだけど」
「何よ!」
「あんたの、この、スカーフへたってきてるわよね。取り替えたら?」
パン子はペンギンちゃんのエリマキを指さして言った。エリマキの色は根本が黄色で途中から鮮やかな橙に変化して尖った先端に向かう。
「キー。これはアタイの一部よ!」
「うそでしょ。あら、ほんとに引っ付いてる」
「いたいいたい、ひっぱるな! やめろっ!」
「どうりでギザギザの面白い形してるって思ったのよねえ」
「まあ、嘆かわしい。庶民どもはこれだから……。これはエンペラーの証! アタイは女帝ペンギンなのよ!」
『女帝!則変武后《そくぺんぶこう》!』
作詞:万道久瀬《まんどくせ》 道夫《みちお》
作曲:勝手野《かつての》 三冠王
進め則変武后! 腹の出た則変武后!
《キー》
誰に命令してるの 砂漠に左遷するわよ
クーデターはとっても怖い けど不思議い勝っちゃうのよ《あら弱い》
鞭打ち百回鞭打ち ちょっと張り切りすぎたわ
アタイの宦官一万 みんなとってもマッチョ
ちょっとあんたチョン切ってないじゃない アタイに任せなさい フンッ
則変武后!!
(間奏……、踊り狂うマッチョの男共、砂漠をさまよう裸の双子》
昔 尼さんだったの 玄奘気が合うじゃない
ブードゥーイズモーストカジュアル 儒教は全員穴埋め
もぎ取り手足もぎ取り ちょっと張り切りすぎたわ
旦那が死んだと思ったら息子にプロポーズされたわ
フニャチンだけどべつにいいわよ~
えっ 妾がいる ふざけんじゃないわよ
アタイはエンペラーよカエサルよ 偉いのよ
則変武后!!!
「ただいまー」
裏戸が閉まる音がしてママの声が聞こえてきた。
「あ、ママ戻った……」
二匹は顔を見合わせて、オットマンの隅っこに追い払った双子を睨みながら詰め寄った。
「早く服を着なさいよ!」
「ちょっと、脱げないわよ! 手伝いなさい!」
「ひいーーー」双子は一目散に逃げていった。
二匹とも、あたふたあたふた。
「ガ。だ、誰か、手伝ってー!」
みんな遠巻きに見ているだけで手を貸そうとしない。
「ちょ、ちょっと、アンタ! 手伝いなさいよ!」 ペンギンちゃんは目があったアルビノゴリラのぬいぐるみ、エゴンに怒鳴りつけた。
「うほぉ?」指を口に含みながらエゴンは馬鹿なふりをしていた。こんなねっとりした『ウホ』を言うゴリラなんていない。完全におちょくられている。
「ヤバい! ヤだいー!」
ママと花津毬さんはなかなか玄関からリビングに来ない。
話し声が聞こえる。どうやら買い物袋が破れて物が散乱してしまったようだ。
「ちょっと。ウホ野郎! ローション! ベベローションが風呂場にあるわ! とってきてちょうだい!」
うほす、とエゴンは気の抜けた様子で走って行った。だが、行った方向は台所。
「何してんのよおー!」
「んガアー!」パン子はついに暴れだした。服がビビビッ、という音がした。
「おい、やめろパンダ! 破れたら殺される!」
「パン子よぉ! こなくそー!」さらにビビビビッ。
「持ってきたっすよー」エゴンが計量カップにねっとりした液を入れて戻ってきた。なんだか色が怪しい。
「塗って、塗って!」
「照れるすねー」
「ガー! 早くしろー!」
ご丁寧にエゴンは調理用のハケを使って二匹の体に満遍なく塗りだした。
周りからは、ひそひそ声が。
「あれって、あれじゃない?」
「ここ汚れるよね。大丈夫? 避難する?」
必死な二匹には届かない。
散々のたうち回った挙句、少し肩口が破れて服は脱げた。
「ヤバいヤバイ。隠さないと! って、アンタすごい色になってるわよ」
「ガッ! あんたもよ」
ペンギンとパンダの白い部分は茶色く染まっていた。もはや最悪の状態だ。
「あんた、これ何塗ったのよ!」
「油すねー」エゴンは何の悪気もない様子で答える。
「何で油塗った! ローション持ってこいって言ったじゃない!」
「いや、ぼくキリスト教なんで、体に塗るのは油じゃないとだめですねー」
「何の関係があるのよ! ゲッ、くっさ!! これマジくっさ!」
「ガー! 納豆のにほい! 死む、死む!」
「ちょっと! ナニ選んだのよ!」
「えっ。これナンプラーっすねー」エゴンは鼻をほじっていた。
次の瞬間、彼は二匹に蹴とばされてオットマンから落下していた。
怖いもの知らずもほどほどにしないといけない。
肩で息をする二匹、周りはさらにドン引きしている。
「ゲー、ゲー、せっ、洗濯機に入るわよ! 今なら何とかなる」
「ガー、コヒュー、ヒュー! 何て言い訳するつもりよ」
「間違って落ちたのよ! もう何でもいい、行くわよ!」
二匹は風呂場に行こうと振り返った。
だが、目の前にはママと花津毬さんがいた……。
***
ベランダ、二匹は雑巾のようにこっぴどく絞られていた。体の水だが……。
結局数度の手洗いと洗濯機で油はどうにかなったが、何度も水と洗剤の中で二匹は悶えたのでぐったりだった。
「もう夕方ですね。パンちゃんの帰りは明日でもいいですか?」
「はい。また明日朝一、迎えにきます」
ママは花津毬の返事に頷くと、二匹を乾燥機に入れた。
「ママ、堪忍やでー! 乾燥機だけは堪忍やでー!」
「ガ! やめてー、これ口がカピカぴするのよ!」
嫌がる様子や叫ぶ言葉もニュアンスでしかママはとらえていない。ぬいぐるみと言葉を交わせる人間はそこまで多くないのだ。
乾燥機のフタが閉まり、スイッチオン。
二匹の悲鳴が乾燥機の中で木霊した。
……。
その様子を遠目で見ていた、ゴリラが一匹。
エゴンは、台所で散々にもみ洗いをされている二匹を思い出していた。
「おお、主よ、私をお許しください。祝福を、私に祝福を」背徳に浸りながら自分にオイルを塗りだした。彼も良く分からない嗜好があるが今回はどうでもいい。
そしてその日の夜、風呂場でベベローション漬けとなった双子が発見された……。
オットマンにさらに一匹、良く分からない嗜好の持ち主がいるのか、自分たちの生存本能がベベローションに手を出させたのか、全く定かではないしどうでもいい話だ。
‐了‐
ペンギンちゃん、頭頂を器用に三センチほど膨らませ、舞の海ー。
勝負はペンギンちゃんに軍配が上がったようだ。パン子は地団太踏んだ。
「アタイの勝ちね。こいつはもらっていくわよ」
「ガーー!」
週に二度、お隣の花津毬さんはパン子を連れて家に遊びに来る。今は二人でどこかお茶に行っているらしい。かまうと言うべきか、遊ぶのはいつもペンギンちゃんだ。
二人は次の勝負を始めようとしていたが、背筋に怖気を感じて振り返った。案の定、二人を不愉快にさせる光景がそこにはあった。
視線の先でにやにやしているのは双子のトイプードル、ライジャ、デズル。名付け親はママの旦那。
他人の幸せな顔はペンギンちゃんを一番不愉快にさせるものだ。しかもそれが二つ並んだ日には、比叡山に火が点く。
「なによそれー! 新しいの着せてもらってるじゃない!」
早速詰め寄った。双子は一瞬、げっ、と言わんばかりの顔をしたが、取り繕ろい、歪んだ笑い顔に戻した。
「夏服だよー」
双子は、ママに作ってもらったんだー、とそろえて言いながら顔を見合わせてにんまり……。
ママはとっても器用なのだ。旦那と喧嘩をした翌日、弁当のごはんに蛾の形に整えたとろろ昆布を乗せる。ペンギンちゃんはそんなママが大好きだ。
ちなみにママの旦那はママの旦那だ。パパではない。他人の小汚い中年男だ。
「何それ、犬畜生の分際で! 絶対あんたたちのじゃないでしょ」
「ギャー」
パン子も叫びによる威嚇で合いの手を入れた。
「そんなことないもん、僕たちにつくってくれたんだー」
二度はこういう時、ライジャ、デズルの順で返事をする。どちらがどちらか、あまりペンギンちゃんは認識していない。双子のどっちがどっちなんて友人や恋人になる場合以外、あまり頭を使うことではないのだ。
「ねえー」
いつも話の最後には双子は顔を見合わせて、ねえー、と言う。ペンギンちゃんの腹底がだんだん煮立ってきた。
「ちょっと、良く見せなさいよ。いい生地じゃないのよ」
パン子が近づくと双子は後ずさりした。
「何で下がってるのよ」
「いや、別に……」
「アタチのお願いが聞けないの!」
双子はこそこそ耳打ちをしだした。
「やだやだ、おばさんっていつも乱暴だよね」
「このひとたち、無駄に圧がすごいんだよねー。普段何たべてるのかなあ」
「ねえー」
一言一句漏れなく二匹は聞き取った。スイッチが入るには十分である。
「おらあ! いい度胸だよ、犬ども。よこせ!」
「ガーー、むしり取ってやるっ!」
あっと言う間にペンギンとパン子は二人から夏服を奪い取った。
「さむいー」
服を失った双子はあまりに貧相な裸体をさらしながら涙を流して、お互い身を寄せ合っていた。
今は六月上旬。双子にとって極寒の寒さだ。一時間でシャイニングの親父みたいになる。
「お洋服返してくだしゃい」
「キーー」
懇願する双子にむけて二匹は頭の紐をしならせ、鞭のごとく打ち付けた。
「ひいーー」
「あくまーー」
双子を追い払った後はメタモルフォーゼ。楽しみのおきがえの時間だ。素っ裸から、お洒落なボーイッシュ夏服にチェンジ……。
三分後、夏服をぎちぎちに張りながら、二人がご満悦の顔でふんぞり返っていた。
「ゲゲゲゲゲゲ!」
「ガガガガガガ!」
大変、お上品である。
「前から思ってたんだけど」
「何よ!」
「あんたの、この、スカーフへたってきてるわよね。取り替えたら?」
パン子はペンギンちゃんのエリマキを指さして言った。エリマキの色は根本が黄色で途中から鮮やかな橙に変化して尖った先端に向かう。
「キー。これはアタイの一部よ!」
「うそでしょ。あら、ほんとに引っ付いてる」
「いたいいたい、ひっぱるな! やめろっ!」
「どうりでギザギザの面白い形してるって思ったのよねえ」
「まあ、嘆かわしい。庶民どもはこれだから……。これはエンペラーの証! アタイは女帝ペンギンなのよ!」
『女帝!則変武后《そくぺんぶこう》!』
作詞:万道久瀬《まんどくせ》 道夫《みちお》
作曲:勝手野《かつての》 三冠王
進め則変武后! 腹の出た則変武后!
《キー》
誰に命令してるの 砂漠に左遷するわよ
クーデターはとっても怖い けど不思議い勝っちゃうのよ《あら弱い》
鞭打ち百回鞭打ち ちょっと張り切りすぎたわ
アタイの宦官一万 みんなとってもマッチョ
ちょっとあんたチョン切ってないじゃない アタイに任せなさい フンッ
則変武后!!
(間奏……、踊り狂うマッチョの男共、砂漠をさまよう裸の双子》
昔 尼さんだったの 玄奘気が合うじゃない
ブードゥーイズモーストカジュアル 儒教は全員穴埋め
もぎ取り手足もぎ取り ちょっと張り切りすぎたわ
旦那が死んだと思ったら息子にプロポーズされたわ
フニャチンだけどべつにいいわよ~
えっ 妾がいる ふざけんじゃないわよ
アタイはエンペラーよカエサルよ 偉いのよ
則変武后!!!
「ただいまー」
裏戸が閉まる音がしてママの声が聞こえてきた。
「あ、ママ戻った……」
二匹は顔を見合わせて、オットマンの隅っこに追い払った双子を睨みながら詰め寄った。
「早く服を着なさいよ!」
「ちょっと、脱げないわよ! 手伝いなさい!」
「ひいーーー」双子は一目散に逃げていった。
二匹とも、あたふたあたふた。
「ガ。だ、誰か、手伝ってー!」
みんな遠巻きに見ているだけで手を貸そうとしない。
「ちょ、ちょっと、アンタ! 手伝いなさいよ!」 ペンギンちゃんは目があったアルビノゴリラのぬいぐるみ、エゴンに怒鳴りつけた。
「うほぉ?」指を口に含みながらエゴンは馬鹿なふりをしていた。こんなねっとりした『ウホ』を言うゴリラなんていない。完全におちょくられている。
「ヤバい! ヤだいー!」
ママと花津毬さんはなかなか玄関からリビングに来ない。
話し声が聞こえる。どうやら買い物袋が破れて物が散乱してしまったようだ。
「ちょっと。ウホ野郎! ローション! ベベローションが風呂場にあるわ! とってきてちょうだい!」
うほす、とエゴンは気の抜けた様子で走って行った。だが、行った方向は台所。
「何してんのよおー!」
「んガアー!」パン子はついに暴れだした。服がビビビッ、という音がした。
「おい、やめろパンダ! 破れたら殺される!」
「パン子よぉ! こなくそー!」さらにビビビビッ。
「持ってきたっすよー」エゴンが計量カップにねっとりした液を入れて戻ってきた。なんだか色が怪しい。
「塗って、塗って!」
「照れるすねー」
「ガー! 早くしろー!」
ご丁寧にエゴンは調理用のハケを使って二匹の体に満遍なく塗りだした。
周りからは、ひそひそ声が。
「あれって、あれじゃない?」
「ここ汚れるよね。大丈夫? 避難する?」
必死な二匹には届かない。
散々のたうち回った挙句、少し肩口が破れて服は脱げた。
「ヤバいヤバイ。隠さないと! って、アンタすごい色になってるわよ」
「ガッ! あんたもよ」
ペンギンとパンダの白い部分は茶色く染まっていた。もはや最悪の状態だ。
「あんた、これ何塗ったのよ!」
「油すねー」エゴンは何の悪気もない様子で答える。
「何で油塗った! ローション持ってこいって言ったじゃない!」
「いや、ぼくキリスト教なんで、体に塗るのは油じゃないとだめですねー」
「何の関係があるのよ! ゲッ、くっさ!! これマジくっさ!」
「ガー! 納豆のにほい! 死む、死む!」
「ちょっと! ナニ選んだのよ!」
「えっ。これナンプラーっすねー」エゴンは鼻をほじっていた。
次の瞬間、彼は二匹に蹴とばされてオットマンから落下していた。
怖いもの知らずもほどほどにしないといけない。
肩で息をする二匹、周りはさらにドン引きしている。
「ゲー、ゲー、せっ、洗濯機に入るわよ! 今なら何とかなる」
「ガー、コヒュー、ヒュー! 何て言い訳するつもりよ」
「間違って落ちたのよ! もう何でもいい、行くわよ!」
二匹は風呂場に行こうと振り返った。
だが、目の前にはママと花津毬さんがいた……。
***
ベランダ、二匹は雑巾のようにこっぴどく絞られていた。体の水だが……。
結局数度の手洗いと洗濯機で油はどうにかなったが、何度も水と洗剤の中で二匹は悶えたのでぐったりだった。
「もう夕方ですね。パンちゃんの帰りは明日でもいいですか?」
「はい。また明日朝一、迎えにきます」
ママは花津毬の返事に頷くと、二匹を乾燥機に入れた。
「ママ、堪忍やでー! 乾燥機だけは堪忍やでー!」
「ガ! やめてー、これ口がカピカぴするのよ!」
嫌がる様子や叫ぶ言葉もニュアンスでしかママはとらえていない。ぬいぐるみと言葉を交わせる人間はそこまで多くないのだ。
乾燥機のフタが閉まり、スイッチオン。
二匹の悲鳴が乾燥機の中で木霊した。
……。
その様子を遠目で見ていた、ゴリラが一匹。
エゴンは、台所で散々にもみ洗いをされている二匹を思い出していた。
「おお、主よ、私をお許しください。祝福を、私に祝福を」背徳に浸りながら自分にオイルを塗りだした。彼も良く分からない嗜好があるが今回はどうでもいい。
そしてその日の夜、風呂場でベベローション漬けとなった双子が発見された……。
オットマンにさらに一匹、良く分からない嗜好の持ち主がいるのか、自分たちの生存本能がベベローションに手を出させたのか、全く定かではないしどうでもいい話だ。
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