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41.王都へ
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軽く触れただけだった唇が離れると、テオドールと目が合った。瞳が揺れて、泣き出しそうになるのを我慢しているように見える。
テオドールに泣きたい時には泣いていいと言われて、私はすごく救われた。同じ言葉を返してあげたいと思ったのに、テオドールは口を開いて予想外のことを言った。
「エリーナ、……あんた、王都に残りたいか?」
「え?」
「ニーフェ公領に行ったら、礼拝堂にも気軽に行けなくなる。王都には、前王妃様や陛下やギルベルト様、今後はユリウス王太子もいるし、孤児院もあるだろ。あんたが仲の良い使用人のほとんども……セアラとかジョンとかも、家族がいるから王都に残るはずだ。最初に話が出た時と状況が違うよな。本当は聞くつもりもなかったけど、あんたが望むなら陛下の説得はなんとかする。俺が言った言葉も忘れていいよ。責任とか義務とか何も考えなくていい。絶対叶えてやるから、あんたが心から望むことを教えて欲しい。どうしたい?」
私を突き放すような提案に呆然としてしまった。心から、と言われたら私が望むことなんて一つしかない。
「私は……」
(離れたいって意味じゃないよね?本当に望んでることを言ってもいい……?)
テオドールの真意を探るようにグレーグリーンの瞳を見つめる。そこにはなんの答えも書いてない。
「私……」
不安が心に滲んで、声が震えてしまう。
「テオ!」
私が言葉を続ける前に、マリアの声が聞こえた。
「テオ、ごめん。ちょっと来てくれ。村に遠征中の第三騎士団を名乗ってる部隊が来てるけど様子がおかしい。第十二部隊のトーマス・メイソンは実在するか?」
「トーマス?ああ……今遠征に出てる。一応方向もこっち方面だ」
「じゃあ本人かな……いや、でも……本人だとしてもどっちみち来てくれ。村人に暴行しそうだった」
「は?!」
マリアの後に続いて、走って村まで戻る。第三騎士団の隊服を着た30名ほどの男性が、木製のゲートの周りに集まっていた。
中心にいる人物は騎乗しており、先程テオと話した男性の肩を、剣の鞘で乱暴に押した。
「おい!何して……」
テオは赤毛の男性を見て、足を止めた。私もトーマス・メイソンと話したことがあるけれど、別人だ。トーマスを名乗る男性は、テオドールのことを頭から爪先までじろじろ見つめる。
テオドールが、村人とその男性の間に入った。
「あんた、誰だ。ここで何してる」
「貴様こそ誰だ。私は第三騎士団第十二部隊所属のトーマス・メイソン隊長。この村には支給を依頼していているだけで、外部の人間に口出しされる筋合いはない。後ろのご婦人方を連れて今すぐ消えれば見逃してやる」
「ははっ……よくそれを俺の前で言えるな。面白いと思ってんのか?」
「は?」
テオドールは、並んだ男たちを一番端から端まで眺めた。すると、土が突然盛り上がり、偽のトーマスの背後にいた隊服の男性が、土砂に飲み込まれた。悲鳴が上がるが、すぐに静かになる。
「なっ……魔法師か?!」
男が剣を抜こうとすると、その前に足が土に捕まった。蛇のように足に巻き付いて、そのまま男を宙吊りにする。馬がいなないて逃げようとするのを、テオドールが手綱を引いて宥めた。
「大丈夫だ。何もしないよ。怖くない」
「……離せ!」
テオドールは吊り下げられた男に視線を向けた。
「魔法師相手にいきなり接近戦をしかけるなんて、よくそれで第三騎士団を名乗れたな。名前と目的を言え。官名詐称は目的によっちゃそれなりの罪になるぞ?」
「トーマス・メイソンだ!紫毒水蛇の討伐で派遣されてきた!私の部下に手を出したな。公務執行妨害だ!貴様こそ名乗れ!」
「……テオドール・グレイソンだ。マリア、名前と目的を聞いてくれ」
テオドールがマリアに話しかける。
「私はテオの部下じゃないんだけどな。あの男ほとんど魔力がないから耐えられないと思うよ」
「名前と目的が聞ければいい。非協力的だから仕方ない」
「……はぁ、そこまで聞けるかな」
テオドールがこちらへ歩いてくると、マリアはテオドールと場所を交代するように男に近付いた。テオドールは安心させるように私に微笑みかける。
「すぐ終わるから大丈夫だ。後ろ向いてろ」
私の肩に手を添えて、くるりと身体の方向を変えた。
「さて、名前と目的を教えてくれるかい?」
背中の方からマリアの声が聞こえる。
「だから、トーマス・メイソ……」
「そっちじゃなくて、本名の方だよ」
「……俺はトーマスだ……トーマス・メイソン……」
「ありゃ、これはダメだ。対策されてるな」
「俺は……俺、王都に、王都……に行く。俺は、東門から……、……第一等級民に、なる、には……」
「……!」
王都、東門、という単語が不穏に響いた。第一等級民という言葉は馴染みがない。
「うーん、テオ、だめだ。この人たちは魔法師じゃないけど、裏にちゃんとした魔法師がいるよ。これ以上読めない」
マリアが戻ってきた。
「十分だ。ありがとう」
塊になっていた土砂が崩れて、先程の男の人が地面に落ちた。30人ほどいた男の人たちも、うめきながら土に囚われている。
地面にうつ伏せに倒れた偽のトーマスの口からは血が流れていて、目が少し虚にーーー
テオドールが私の目を覆うように手を添えた。それからマリアとテオドールと向き合うようにまた身体の向きを変えさせられた。
「エリーナ、俺はこの馬を借りて王都に戻るから、マリアと残ってくれ。一番近い大きな街は南に下ったフェルナだ。迎えがくるまでそこにいて欲しい」
「えっ?!な、なんで」
「王都の名前が出たから東門を確認に行く。さっきの第一等級民っていうのは、帝国の身分なんだ。無視できない。マリア、一応フェルナで情報収集してくれ。エリーナが第一優先だから深追いしなくていい」
「はいはい。殿下の安全は保証するよ」
二人の間でどんどん話が進んでいく。私は置いてきぼりだ。
「え、や、やだ……!」
テオドールとマリアが一斉にこちらを見た。
「なにか危ないことが起こってるの?……私も戻る」
テオドールは首を振った。
「何も起きてない。確認しに行くだけだ。あんたは心配しなくていい」
「王都にこういう人たちがいるかもしれないんでしょ?もし王都の皆が危ない目に遭ってるなら、私も助けに行く。怪我してるなら治せるよ。私……私、王室の人間だよ?偉い人は使うためにいるんでしょ。私のことも使って」
「……だめだ。何かあった時に足手まといだから連れて行けない。俺はあんたと一緒にいたら、あんたのことを優先したくなる」
「……!」
テオドールは申し訳なさそうに、子どもに言い聞かせるように笑った。
「ごめんな。迎えに行くから待っててくれ」
黒い馬の手綱を引いて、その横顔を撫でる。
「いきなり主人が変わってびっくりしたよな。少し助けて欲しいんだ。頼むよ」
優しく声をかけ、身軽な動作で騎乗した。
「待っ……!」
「テオ」
マリアがテオドールに呼びかけると、テオドールが振り向いた。
「私はこの後殿下に説得されて追いかける予定なんだけど」
「は?!何言ってんだ、ふざけんなよ」
「うん。でも殿下は頑固だし、私は殿下のお願いに弱いから仕方ないだろ?腕に自信もあるから、一緒にいるならいいかってなるよ。だから、本当にあぶなかったら、赤い閃光を空に打ち上げて欲しい」
「ふざけるな。絶対に止めろ」
「……怪我人がたくさんいるなら、殿下のお力は本当に頼りになるよ。元の魔力が多いんだ。数さえこなせば一級治癒師に匹敵するようになる。殿下は王族だよ。力のある人間は、そうじゃない民のために力を使うべきじゃないか」
「……」
テオドールが私に目を向けた。
「エリーナ、俺は、フェルナに残ってて欲しい。……でも多分、あんたはその通りにはしてくれないよな」
「うん。私、言うこと聞かないよ。わがままな王女なの」
テオドールは目を丸くして、悲しそうに笑った。その顔を見ると、危ないことなんかしないと言いたくなるけれど、私は多分追いかけてしまう。テオドールが自分の知らないところで、一人で危ない目にあって、何もできないままでいるなんて嫌だ。
「最悪だな。……赤い閃光が上がったら、王都に近づかないでくれ。それだけは頼む」
テオドールはまだ何か言いたげに口を開き、何も言わずに閉じた。手綱を引いて、馬に声をかけるとあっという間に遠くに消えてしまった。
「……マリア、ありがとう」
「いいえ。侍女っていうのは主人の願いを叶えるためにいるので、使い倒してください」
「テオに迷惑かけちゃうけど……どうしても行きたいの。怒ってるかな」
「まぁ、心配はしてるでしょうね。旦那様は本当に止めたかったら、さっきみたいに土砂でもなんでも使って力づくで止められるんですよ。だから許可が出たも同然です。何もなかったら、3人で東門のところにあるジェラートでも食べません?美味しい店があります」
マリアはいつも通りににっこり笑った。非日常的な緊張感のあった空気が、今だけいつも通りに戻ったようで安心する。
「うん」
「さてと、こちらも馬車でのんびり進んでたら全部終わっちゃってると思うので、まずは馬を調達しましょうか。身体は後で自分で治してくださいね」
テオドールに泣きたい時には泣いていいと言われて、私はすごく救われた。同じ言葉を返してあげたいと思ったのに、テオドールは口を開いて予想外のことを言った。
「エリーナ、……あんた、王都に残りたいか?」
「え?」
「ニーフェ公領に行ったら、礼拝堂にも気軽に行けなくなる。王都には、前王妃様や陛下やギルベルト様、今後はユリウス王太子もいるし、孤児院もあるだろ。あんたが仲の良い使用人のほとんども……セアラとかジョンとかも、家族がいるから王都に残るはずだ。最初に話が出た時と状況が違うよな。本当は聞くつもりもなかったけど、あんたが望むなら陛下の説得はなんとかする。俺が言った言葉も忘れていいよ。責任とか義務とか何も考えなくていい。絶対叶えてやるから、あんたが心から望むことを教えて欲しい。どうしたい?」
私を突き放すような提案に呆然としてしまった。心から、と言われたら私が望むことなんて一つしかない。
「私は……」
(離れたいって意味じゃないよね?本当に望んでることを言ってもいい……?)
テオドールの真意を探るようにグレーグリーンの瞳を見つめる。そこにはなんの答えも書いてない。
「私……」
不安が心に滲んで、声が震えてしまう。
「テオ!」
私が言葉を続ける前に、マリアの声が聞こえた。
「テオ、ごめん。ちょっと来てくれ。村に遠征中の第三騎士団を名乗ってる部隊が来てるけど様子がおかしい。第十二部隊のトーマス・メイソンは実在するか?」
「トーマス?ああ……今遠征に出てる。一応方向もこっち方面だ」
「じゃあ本人かな……いや、でも……本人だとしてもどっちみち来てくれ。村人に暴行しそうだった」
「は?!」
マリアの後に続いて、走って村まで戻る。第三騎士団の隊服を着た30名ほどの男性が、木製のゲートの周りに集まっていた。
中心にいる人物は騎乗しており、先程テオと話した男性の肩を、剣の鞘で乱暴に押した。
「おい!何して……」
テオは赤毛の男性を見て、足を止めた。私もトーマス・メイソンと話したことがあるけれど、別人だ。トーマスを名乗る男性は、テオドールのことを頭から爪先までじろじろ見つめる。
テオドールが、村人とその男性の間に入った。
「あんた、誰だ。ここで何してる」
「貴様こそ誰だ。私は第三騎士団第十二部隊所属のトーマス・メイソン隊長。この村には支給を依頼していているだけで、外部の人間に口出しされる筋合いはない。後ろのご婦人方を連れて今すぐ消えれば見逃してやる」
「ははっ……よくそれを俺の前で言えるな。面白いと思ってんのか?」
「は?」
テオドールは、並んだ男たちを一番端から端まで眺めた。すると、土が突然盛り上がり、偽のトーマスの背後にいた隊服の男性が、土砂に飲み込まれた。悲鳴が上がるが、すぐに静かになる。
「なっ……魔法師か?!」
男が剣を抜こうとすると、その前に足が土に捕まった。蛇のように足に巻き付いて、そのまま男を宙吊りにする。馬がいなないて逃げようとするのを、テオドールが手綱を引いて宥めた。
「大丈夫だ。何もしないよ。怖くない」
「……離せ!」
テオドールは吊り下げられた男に視線を向けた。
「魔法師相手にいきなり接近戦をしかけるなんて、よくそれで第三騎士団を名乗れたな。名前と目的を言え。官名詐称は目的によっちゃそれなりの罪になるぞ?」
「トーマス・メイソンだ!紫毒水蛇の討伐で派遣されてきた!私の部下に手を出したな。公務執行妨害だ!貴様こそ名乗れ!」
「……テオドール・グレイソンだ。マリア、名前と目的を聞いてくれ」
テオドールがマリアに話しかける。
「私はテオの部下じゃないんだけどな。あの男ほとんど魔力がないから耐えられないと思うよ」
「名前と目的が聞ければいい。非協力的だから仕方ない」
「……はぁ、そこまで聞けるかな」
テオドールがこちらへ歩いてくると、マリアはテオドールと場所を交代するように男に近付いた。テオドールは安心させるように私に微笑みかける。
「すぐ終わるから大丈夫だ。後ろ向いてろ」
私の肩に手を添えて、くるりと身体の方向を変えた。
「さて、名前と目的を教えてくれるかい?」
背中の方からマリアの声が聞こえる。
「だから、トーマス・メイソ……」
「そっちじゃなくて、本名の方だよ」
「……俺はトーマスだ……トーマス・メイソン……」
「ありゃ、これはダメだ。対策されてるな」
「俺は……俺、王都に、王都……に行く。俺は、東門から……、……第一等級民に、なる、には……」
「……!」
王都、東門、という単語が不穏に響いた。第一等級民という言葉は馴染みがない。
「うーん、テオ、だめだ。この人たちは魔法師じゃないけど、裏にちゃんとした魔法師がいるよ。これ以上読めない」
マリアが戻ってきた。
「十分だ。ありがとう」
塊になっていた土砂が崩れて、先程の男の人が地面に落ちた。30人ほどいた男の人たちも、うめきながら土に囚われている。
地面にうつ伏せに倒れた偽のトーマスの口からは血が流れていて、目が少し虚にーーー
テオドールが私の目を覆うように手を添えた。それからマリアとテオドールと向き合うようにまた身体の向きを変えさせられた。
「エリーナ、俺はこの馬を借りて王都に戻るから、マリアと残ってくれ。一番近い大きな街は南に下ったフェルナだ。迎えがくるまでそこにいて欲しい」
「えっ?!な、なんで」
「王都の名前が出たから東門を確認に行く。さっきの第一等級民っていうのは、帝国の身分なんだ。無視できない。マリア、一応フェルナで情報収集してくれ。エリーナが第一優先だから深追いしなくていい」
「はいはい。殿下の安全は保証するよ」
二人の間でどんどん話が進んでいく。私は置いてきぼりだ。
「え、や、やだ……!」
テオドールとマリアが一斉にこちらを見た。
「なにか危ないことが起こってるの?……私も戻る」
テオドールは首を振った。
「何も起きてない。確認しに行くだけだ。あんたは心配しなくていい」
「王都にこういう人たちがいるかもしれないんでしょ?もし王都の皆が危ない目に遭ってるなら、私も助けに行く。怪我してるなら治せるよ。私……私、王室の人間だよ?偉い人は使うためにいるんでしょ。私のことも使って」
「……だめだ。何かあった時に足手まといだから連れて行けない。俺はあんたと一緒にいたら、あんたのことを優先したくなる」
「……!」
テオドールは申し訳なさそうに、子どもに言い聞かせるように笑った。
「ごめんな。迎えに行くから待っててくれ」
黒い馬の手綱を引いて、その横顔を撫でる。
「いきなり主人が変わってびっくりしたよな。少し助けて欲しいんだ。頼むよ」
優しく声をかけ、身軽な動作で騎乗した。
「待っ……!」
「テオ」
マリアがテオドールに呼びかけると、テオドールが振り向いた。
「私はこの後殿下に説得されて追いかける予定なんだけど」
「は?!何言ってんだ、ふざけんなよ」
「うん。でも殿下は頑固だし、私は殿下のお願いに弱いから仕方ないだろ?腕に自信もあるから、一緒にいるならいいかってなるよ。だから、本当にあぶなかったら、赤い閃光を空に打ち上げて欲しい」
「ふざけるな。絶対に止めろ」
「……怪我人がたくさんいるなら、殿下のお力は本当に頼りになるよ。元の魔力が多いんだ。数さえこなせば一級治癒師に匹敵するようになる。殿下は王族だよ。力のある人間は、そうじゃない民のために力を使うべきじゃないか」
「……」
テオドールが私に目を向けた。
「エリーナ、俺は、フェルナに残ってて欲しい。……でも多分、あんたはその通りにはしてくれないよな」
「うん。私、言うこと聞かないよ。わがままな王女なの」
テオドールは目を丸くして、悲しそうに笑った。その顔を見ると、危ないことなんかしないと言いたくなるけれど、私は多分追いかけてしまう。テオドールが自分の知らないところで、一人で危ない目にあって、何もできないままでいるなんて嫌だ。
「最悪だな。……赤い閃光が上がったら、王都に近づかないでくれ。それだけは頼む」
テオドールはまだ何か言いたげに口を開き、何も言わずに閉じた。手綱を引いて、馬に声をかけるとあっという間に遠くに消えてしまった。
「……マリア、ありがとう」
「いいえ。侍女っていうのは主人の願いを叶えるためにいるので、使い倒してください」
「テオに迷惑かけちゃうけど……どうしても行きたいの。怒ってるかな」
「まぁ、心配はしてるでしょうね。旦那様は本当に止めたかったら、さっきみたいに土砂でもなんでも使って力づくで止められるんですよ。だから許可が出たも同然です。何もなかったら、3人で東門のところにあるジェラートでも食べません?美味しい店があります」
マリアはいつも通りににっこり笑った。非日常的な緊張感のあった空気が、今だけいつも通りに戻ったようで安心する。
「うん」
「さてと、こちらも馬車でのんびり進んでたら全部終わっちゃってると思うので、まずは馬を調達しましょうか。身体は後で自分で治してくださいね」
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