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22. 迷惑 ※

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寝起きは最悪で、馬車が石に乗り上げて大きく揺れたせいで起きた。ふんだりけったりで嫌になる。
もう日は沈みかけている。空は西側にほんの少し橙が残っている程度だ。もうエリーナは夕飯を済ませただろうか。

庭を抜け、正面の扉を開く。すると2階から足音がしてエリーナが走ってきた。後ろにいるマリアはのんびり歩いている。

「テオ、おかえりなさい。お迎え間に合わなくてごめんなさい」
「いいよ。ただいま」

俺の帰宅時間はまちまちだし、エリーナにも使用人にも出迎えはいらないと言ってある。ただ、エリーナは可能ならばこうして玄関口で迎えようとしてくれるから、いらないといいつつ目で探してしまう。

「顔色悪いよ。大丈夫?」
「ああ、寝不足で頭が痛いだけだ。騎士団長が無茶なこと言うから」
「そうなんだ……あ、そうだ」

エリーナは俺の額に手を当てた。微量な魔力が流れ込んでくる感じがして、温かくて心地良い。

「何してるんだ?」
「練習中の治癒魔法だよ。まだ下手だけど、どうかな。少しは頭痛良くなった?」
「……すごく効いた」
「よかった」

エリーナがふわりと笑った。今日一日寝不足と精神的な疲れで限界に達していて、もう無理だ。俺はエリーナの腕を引いて、自分の腕の中に抱き入れた。エリーナのにおいがする。安全な場所に帰ってきたことを実感してたまらない気持ちになり、ぎゅう、と力を込めた。マリアがそばにいるけどもうどうでもいい。

「わっ、え、テオ……?どうしたの?」
「眠い。疲れた。もうやだ」
「大丈夫?お疲れ様。寝室でお休みする?」
「ん」

エリーナの肩のところに顔を押し付ける。髪が当たってくすぐったい。エリーナは温かくて小さくて柔らかい。癒される。

「あんたも一緒な」
「え?ちょ、えっ……ひゃ!」

返事は聞かずにエリーナのことを横抱きにして、そのまま寝室の方へと向かう。寝台にエリーナの身体を投げるように置いた。自分は靴だけ脱いで、呆然としているエリーナに抱きついて横になった。エリーナの胸の辺りに顔が当たるが、今はその柔らかさに興奮するよりも癒される。

「疲れた」
「大変だったんだね」
「そうだよ……。あんたは勝手にコーネリアスと話してるし、マリアは訳わかんない事言うし、騎士団長は腹が立つことしか言わないしすぐ仕事増やすし、第一騎士団の奴らは無能だしユリウス王太子は圧かけてくるし……くそ……」
「お疲れ様」

エリーナの小さな声が、優しく心地よく耳に入ってくる。離れないように腕に力を込めた。

「もっと甘やかしてくれ」
「えっ?う、うん……」

エリーナはもぞもぞ身体を動かして、片側の手を俺の腕の外に出すと、ゆっくり髪を撫でた。

「いつも頑張ってるね。えらいね」
「……また子ども扱いか」
「だって、甘やかしてって言うから」
「そうだな、俺が、頼んだ……」

エリーナの体温が心地よく、優しい手の動きに集中しているといよいよ瞼を開けていられなくなってきた。身を任せて目を閉じる。ふっと沈み込むように、意識がなくなった。



次に目が覚めると頭がすっきりしていた。腕の中にエリーナがいなくて、少し裏切られた気持ちになる。すると後ろから声が聞こえた。

「おはよう」
「……どれくらい寝てた?」

エリーナは室内のすぐそばにいて、椅子に座って本を読んでいた。

「ほとんど寝てないよ。1時間くらいかな」
「そんなものなのか。すごくすっきりした」
「よかったね」

エリーナはいつもと変わらない様子で微笑んだ。結構な醜態を晒したのに気にした様子はない。

「情けないところを見せて悪かった。2年に1回くらい限界がきて爆発するんだ」
「ううん、頑張ってる証拠だと思うよ。いつもはどうしてたの?」

恥ずかしいところを見られたせいか、エリーナが急に自分よりも大人びて見え、なんとなく気まずい。

「いつもは……前線で暴れるか、騎士団長と大喧嘩して演習場を使えなくなるまでめちゃくちゃにしてた」

エリーナは目を見開いてから笑った。

「ふふふ、騎士団長って大変な仕事だね」
「騎士団長が主な原因なんだから、自業自得だよ」
「そっか……あのね、お腹空いてる?まだ私も食べてないの」
「そうなのか?俺の時間は気にしなくていいのに」
「一緒に食べた方が美味しいから待っていたいの。広間に行こう」

俺がエリーナの顔を見て一緒に夕飯を食べたくて早く帰宅することは理解してくれないのに、エリーナ自身は一緒に食べた方が美味しいという。どうしてそういう考えになるんだ。

場所を移動して席に着くと、料理はすぐに出てきた。あらかじめ用意を進めてくれていたらしい。

エリーナは昨日マリアと一緒に文房具店に出かけたことや、そこで見かけた美しい文房具について話し、それから偶然コーネリアスに出会ったことも教えてくれた。俺のことはもう恨んでいなさそうだ、という一番どうでもいいことを詳細に教えてくれた。
コーネリアスが俺をどう思うかより、エリーナをどう思って会話が終わったかのほうが気になるのにそこについては話がない。一応マリアの口からはもう大丈夫と聞いているが、エリーナは不快な思いはしなかったのだろうか。
エリーナは申し訳なさそうな顔をしている。

「コーネリアスのこと、私からすぐ話さなくてごめんね。今日伝えようと思ってたの」
「いいよ。昨日は俺も帰りが遅かったし、話すタイミングがなかっただろ。怖い思いはしなかったか?」
「してないよ。マリアがいてくれたから全然大丈夫だった」
「そうか」

エリーナは余裕のある微笑みを見せた。俺に対してはちょっとしたことでも遠慮するのに、マリアには気軽に頼み事をする。短い間に急速に信頼が積み上がっているのを感じて妬いてしまう。

「どうしたの?」
「なんでもない」

エリーナは眉を八の字にした。

「……疲れてるだけ?何かあったなら話して」

先程の甘ったれた気持ちが残っていたようで、顔が不機嫌になっていたようだ。正直に申告することにした。

「少し拗ねてる」
「?」
「あんたは俺には頼らないけどマリアにはすぐ頼るだろ」
「それは……マリアは侍女で、私を助けるためにいてくれてるから」
「俺もあんたの夫で、助けるためにいるよ。夫婦は助け合うものだろ?」

すかさず反論すると、エリーナは口をつぐんだ。言い負かせたくて話題に出したわけではないのに、疲れのせいか攻撃的になってしまう。

「ごめん。ただ、……前にも言ったけど、迷惑をかけられても迷惑だとは思わないんだ。何も言われないと寂しいって言っただろ。頼ってくれた方が嬉しい」

エリーナは、警戒するような顔をした。前に同じ話をしたときには、戸惑いつつも拒否はしなかったのに、今は俺の言葉を受け入れたくなさそうに見える。

(なんだ……?)

エリーナは声を絞り出すように返答した。

「じゃあ、私は……テオを喜ばせるために、頼りたくないのに頼らないといけないの?」
「え?」

エリーナは自分の発言にはっとした顔をして、すぐに俯いた。

「ごめんなさい。今の、言うべきじゃなかった。反省するから少し一人にして」

食事の途中だが、エリーナは立ち上がった。言うべきじゃなかったということは、それは本音だと言うことだ。俺は呆気に取られてエリーナを見送った。

(どういう意味だよ)

言葉でも態度でも拒絶されて呆然としてしまう。エリーナの考えが理解できないまま追いかけていいのか分からない。食事は続ける気にならないし、しばらくその場でぼんやりして、頭を使わなくてもできる寝支度を整えてしまった。

かといって眠る気にもなれず、寝室にある椅子に腰掛けて、エリーナが先ほど読んでいた本に目を通す。見たことのない本で、内容は子ども向けの物語のようだった。エリーナは自分のやりたいことのために一人でギルベルト様に相談して一人で準備を進めている。俺の手助けは必要としていない。
エリーナが泣くばかりの無力な王女に見えたのは初日だけで、顔色を伺う相手がいなければ、意外と一人で決めて行動できる。

思えば俺を遠ざけようとする発言は最初からエリーナの口癖みたいなものだった。
指輪を作った時もそうだし、泣いて外に飛び出して靴がなくなった時もそう。コーネリアスのことも、ニーフェ公領に行くことも、孤児院に通う件も、肌を重ねる時も、エリーナには、エリーナのことを優先しないで欲しい、迷惑をかけたくない、優しくしてほしくないとかそればかり言われている気がする。
一人にして欲しいというのも、今更なくらい何度も言われてる。

エリーナが俺に頼る時は、俺がエリーナが泣いているときにたまたま隣にいる時か、断れないように言い負かした時だ。エリーナの意思じゃない。

(そんなに俺に頼るのが嫌なのか)

俺は、昔から人に頼られる方だ。もはや面倒ごとを押し付けられる係と言った方が良いかもしれないが、近しい人間からは、頼み事をすればなんとかすると思われている。

エリーナの前でも、他の人間にするのと同じように、自分にできることがあれば提案したり手を貸したりしてきた。相談しても何もしてくれない奴だとか、解決能力がないとか、そうは思われていないはずだ。

(ずっと一緒にいられるか心配する以前の問題だ。ひと月で拒絶されてる)

マリアの発言と、エリーナの自己評価がとてつもなく低いことを思い出した。エリーナが、自分に価値がないと思い込んでいるために、人に頼ることを心苦しく負担に思ってしまうという可能性に思い至る。

それが本当だとしたら、今はエリーナを一人にするべきじゃない。エリーナが自分は大切にされるべきでないと思っているなら、隣にいてその考えを否定してやらないといけない。

こんな日に限って頭の処理速度が落ちていて嫌になる。エリーナを探しに行くために立ち上がると、寝室の扉が静かに開いた。

「エリーナ」

俺はエリーナに近寄って、頬に手を当てて目元を確認した。赤くなってない。泣いたわけではなさそうだった。エリーナは目を伏せて頭を下げた。

「テオ、さっきはごめんなさい」
「いや、俺も悪かった。あんたのやりやすいようにしてくれればいいんだ。本当に困ったら言って欲しいけどな」

エリーナはほっとした顔をして頷いた。エリーナは俺にとって大切な存在で、エリーナ自身にも自分を大切にして欲しいということを、どう伝えたら分かってもらえるのだろうか。好意も褒め言葉も、エリーナ自身に素直に受け取る素地がなければ、正しく伝わることはない。

「あの、テオ……」
「うん、どうした?」
「お願いがあって」

急に考え方が変わったのだろうか。驚いたけど嬉しいことだから、頷いた。

「何?」
「目が、その……もう菫色に戻っちゃって……しないと……」

頼って欲しいと口にした結果がこの発言に繋がるとは思わなかった。心臓を何かで刺されたような気分で、呼吸の仕方さえ忘れそうになる。ここ数年で一番傷ついたし、自分が動揺しているのが分かる。エリーナに悟られないように深呼吸して、気持ちと心音を落ち着かせた。

エリーナの瞳は先ほどの食事中にはまだ淡く緑みを帯びていたはずだが、今は完全に元の色に戻っている。いつもの間隔と比べるとかなり早い。エリーナから俺の魔力が消えるまでの期間が短くなったのは、本人が魔法を使うようになったからだろう。必要なことは行えているし、心配する必要はない。

「今日はしなくて大丈夫だ」
「でも、ちゃんとしないと国王陛下にまた呼び出されちゃうよ」

(陛下陛下って、俺は国王陛下の意思を叶えるための道具かよ)

今日自分でそんなことを王太子に言ったばかりだったことを思い出した。虚しさと苛立ちが両方湧き上がって、言わなくていいことが口から出る。

「じゃああんたが何とかしてくれ。俺はその気になれない」

エリーナは目を見開いた。最初に顔を合わせた時に同じようなことを口にしたことを思い出した。あの時と同じくできないと言うに決まっているから、その後ちゃんと説明してやるつもりだ。ただ、俺は今傷ついていて、大人しくエリーナの言葉に従いたくないし、エリーナを少し困らせたかった。

「何とかって……何を、すれば……?」
「使えるようにしてくれ。男は気が乗らなくても物理的に刺激すればなんとかなるから」
「……」

エリーナは案の定戸惑った顔をして目を伏せた。エリーナを困らせても全く胸はすかず、ただただ罪悪感が募った。最悪な心境だ。
冗談だよ、と伝え、謝ろうとしてエリーナに手を伸ばすと、指が触れる前にエリーナは顔を上げた。

「分かった」
「え?いや……」
「いつもテオに任せてばかりだから、私がなんとかする。そこに寝てくれる?」

そういえばエリーナは、他人の負担を減らすという動機があれば、自分が嫌な目に遭うのは厭わないのだった。俺がエリーナの嫌なところを一つあげるとしたらそういうところだ。

「エリーナ、ごめん。冗談だよ。何もしなくて大丈夫だ」

俺は自分の発言を後悔して素直に謝った。しかしエリーナは俺の謝罪を無視し、寝台の方へと俺の肩を押した。そんなことをされても俺はエリーナのように簡単に押し倒されたりしないのだが、なんで上手くいかないんだという顔をしている。

「こ、これくらいは協力して」

(なんだそれ、俺の真似か?)

エリーナの真剣さが少し滑稽に思える。手が震えていて、緊張しているのがよく分かる。いつまでこの気丈さを保てるものなのか気になった。疲れていると優しくしようという気になれないから、俺の本性はこっちだ。いつもならもう少し優しくしてやれるのに、今日このタイミングで瞳の色が戻ってしまったエリーナに少し同情する。

「ん」

一旦流れに身を任せることにして、俺は靴を脱いで自分で仰向けに倒れた。抵抗する気がないことを示すために両手のひらを上に向けて腕を開く。
エリーナは複雑な顔をして俺を見ている。

「やっぱり無理だろ?」
「できるよ」

エリーナはきっぱりと言い切った。

(ほんと意地っ張りだな。早くできないって言えばいいのに)

エリーナは自分の首の後ろに手をやって、リボンを引っ張った。淡いブルーのドレスがゆるむと、それを頭から脱いで椅子にかける。コルセットはこの前と違い前側に紐のほどきめがあり、それをもたもたした動作で外していく。

自分が節操なしで呆れてしまうが、エリーナが服を脱ぐ様子を見ているだけでその気になりそうだ。エリーナは内側に着ているスカートのパーツも外した。この前脱がしたものより単純な作りをしているようで、全部自分で脱げるようだ。膝上までのストッキングを止めているリボンもしゅるりと解いて、靴も脱ぎ、襟ぐりが開いた白い下着一枚になった。覚悟を決めた顔をして俺に向き合う。

今から死地にでも赴くのかという険しい顔に、笑いが込み上げそうだ。そこまでしてやることじゃないだろうに、引けなくなってしまったのだろうか。一生懸命で哀れになってきた。俺は肘をついて上半身を少しだけ起こした。

「エリーナ、もういいよ。頑張ったな」

エリーナはさっと顔を赤くした。照れているのではなくて、多分怒ってる。エリーナは無言のまま寝台の上に上がってきた。

俺の上に馬乗りになると、肩を押して俺を寝台に戻し、前屈みになって俺の顔の横に両手をついた。杏色の髪がカーテンのように影を作る。この角度からエリーナのことを見るのは初めてかもしれない。

何をするつもりなのだろうかとじっと目を見ると、エリーナも俺を見つめ返した。

(目、綺麗だ……)

俺の魔力を帯びて緑がかっている時より、許されるなら本来の色のままの方が好きだ。エリーナによく似合っている。

エリーナは俺の額にキスして、それから鼻や頬、耳元に同じことをした。よく俺がやってるからこれも真似をしているんだろう。俺の場合は、エリーナが可愛くてついやってしまうのだけど、エリーナは動きを模倣しているだけだ。

ユリウス王太子が言ったように、エリーナがいろんな男と寝た経験があるのは、きっと間違いない。それを今のエリーナがどこまで覚えているのか分からないが、俺が知っているエリーナは、まるで俺のことしか知らないような反応をする。今も、俺しか真似する元がないみたいだ。

唇が触れた。ふに、と押し付けられたり軽く噛まれたりする。エリーナは、俺がどこをどう触ろうと簡単に感じて反応するけれど、俺は、というか普通の人間はエリーナほど感じやすくない。エリーナの甘い香りにグッとくるものはあるが、それ以外は唇を押し付けられても、気持ち良いとは思わない。

(下手くそ)

このキスじゃ誰も夢中になんかできないと思う。記憶喪失になった人間に関して、記憶がなくても身体は覚えているなんてよく聞く話だが、エリーナには当てはまらないのか。それとも記憶を失う前も、エリーナは自分から積極的にキスすることはなかったのだろうか。

「んっ…ふ……」

唇の感触よりも、エリーナの漏らす声の方に意識が持っていかれる。唇の隙間から遠慮がちに舌が入ってきた。

(もどかしいな。目を瞑る気にもならない)

俺をその気にさせる、という点ではエリーナはすでに成功していると言える。下手くそなキスを受けていると俺が自分でなんとかしたくなってくる。

(下手なのが悪い)

エリーナの動きを無視して舌を奥の方まで突っ込んで、上顎の固いところを撫でると、エリーナがびくりと震えた。

「んんっ……!」

そのまま舌同士を絡めて、強く吸い、軽く歯で挟む。逃げようとするのを追いかけて全体をしごくと、エリーナが強く反応したせいで歯がぶつかった。歯が当たった唇がジンと鈍く痛むが、やめてやらない。顔を引かせないように、エリーナの頭を自分の方に押さえつけた。

「ふっ……ん、ぁ…はっ、んんんっ!」

エリーナが俺の上に乗っていると、キスだけでエリーナの全身がいちいち跳ね上がるのがよく分かる。唇が離れる時に水音がした。エリーナはすでに息を乱していて、少し涙目で俺を睨んだ。エリーナがこうして俺に強い感情を向けることは珍しく、そのことに少し達成感を覚える。

(いやいや、エリーナが嫌がることをして気を引いてもしょうもないだろ)

よくない考えが頭によぎって、慌ててその考えを消した。
エリーナはまた俺に覆い被さるようにしてキスをしてきた。舌を絡めたり歯をなぞる動きが先ほどより遠慮がなくなっていて、ちょっとだけ上手くなっている。

「はぁ……」

エリーナの味や時々漏れる切なげな声、俺の胸に当たっている柔らかい身体のおかげて興奮してきて、キスが気持ち良いと思えるようになってきた。鼻にかかった声が漏れて、鼓動も少し早くなってくる。

「ん……エリーナ……」

名前を呼ぶと、エリーナは答えるように唇を強く押し付けてきた。キスを続けながら、エリーナの手が、俺の寝衣の中に入ってくる。腹や脇を優しく撫でられるのはくすぐったい。男はそんなことされても全く感じないからただくすぐったいだけだが、これも多分俺の真似をしているんだろう。本当に何も分かってない。

さっきはつい頭に手を添えてしまったけれど、一応無抵抗を示すために俺の両手は寝台の上に投げ出されている。もう十分その気になっているが、この状態からでもいつでも簡単に形勢を逆転できるから、もう少し任せてみることにした。

エリーナは手のひらで俺の腹をゆっくり撫でる。ゆっくり唇を離して、囁くようにつぶやいた。

「はぁ……テオの身体って固いね。私と、全然違う」

(うわ)

今のは卑怯だ。下半身に血液が集まったのが分かる。

「肌がさらさらして気持ちいい」

エリーナは俺の胸に額を擦り寄せた。心臓がうるさくなる。こんな下手なキスと触り方のくせにずるい。エリーナは俺に馬乗りになっているから、俺の身体が反応しているのは分かるだろう。それに対してどうするつもりなのか、どこか期待しているところもある。

(さっきまで傷ついてたはずなのに、単純で嫌になるな)

理由はどうあれ、エリーナが俺と性行為をしようとして積極的になっているのは興奮材料になってしまう。エリーナは身体の位置を少し足側にずらして、ゆるく勃ち上がったところに触れた。

そこをじっと見つめて、優しく布の上からさする。

「……っ」

強い刺激でもないのに、エリーナが自分の意思でしていると思うとすごく反応してしまう。

「テオ……」

エリーナは俺に触れながら、前屈みになって唇を重ねた。

「ん」
「はぁ…んっ……ここ、すごく…熱く、なってる」

エリーナは手を動かしながら、全く頼んでない実況中継をしている。熱を持っているのはもう分かってるし、正直布が邪魔だ。遠慮がちな手の優しい動きだと物足りない。

「エリーナ……手、だと、足りない」

さっきよりまた上手くなったキスの合間に主張すると、エリーナはぴたりと手を止めた。そしてゆっくり顔をあげた。

「はぁ……」

ぼんやりした顔で、頬が上気している。熱っぽい瞳がじっと俺を捉えている。

(興奮してる)

行為中のエリーナは身体はすごく感じやすいが、あまり気持ち良くなりたくないような反応をする。言葉で拒否するのはもちろん、首をいやいやと振ったり、あまりしつこくすると腕を支え棒にして俺を遠ざけようとする。表情は何かに耐えるように目に涙を浮かべていることが多く、こんな風に、明らかに欲情したような顔はあまり見せない。

いつもとの違いにちょっとした戸惑いと、恥ずかしいような、嬉しいような、良くわからない気持ちになる。

エリーナは身体の位置をずらし、俺の下半身を覆っている寝衣に手をかけた。紐を解いて、腰に手を回し、服を引き下げる。

「あ」

裸になり、エリーナの目の前に性器が露出した。それを見ても怖気付いた様子はなかった。

「ま、待った、エリーナ……」

そこまでさせるつもりはなくて慌てて制止したが、エリーナは身体をかがめて一番先端にキスした。

「……!」

顔にキスした時と同じように丁寧に唇を落とし、舌を出して遠慮がちに舐めた。

「あ……エリーナ、もういいよ……あとはできる」

エリーナは口を離して俺のことをちらっと見たが、返事をしないでそのまま全体を口に含んだ。

「ぅあ……っ」

別に上手くないし、口が小さくて全部入ってない。ただエリーナが相手だというだけで十分で、ぐっと腰が重くなった。口に咥える質量が増えたせいで、エリーナが苦しそうに息を詰まらせた。

「んっ!……はぁ…ちゅ、ん…っ」

エリーナは抽送の動きをなぞらえて口を動かし、時々舌を絡ませる。密着具合が足りず、やっぱり上手くはない。それでも吐精欲を高めるには十分だ。

「っエリーナ、もういい……口に、出したら意味ないだろ……」

声をかけると、エリーナは口の動きを止めた。のろのろと身体を起こして、下半身の下着を脱いだ。そして俺の上に跨る。はぁ、と長い息を吐いた。

「覚悟決めすぎだよ。どいてくれ、もういいから」

身体を起こそうとしたら、肩を押されて阻まれた。無理矢理起きようと思えば起きれるが、呆気に取られてすぐに反応できなかった。

「テオは大人しくしてて」

エリーナが頑固なことは知っていたつもりだったが、こんなところで発揮されるとは思わなかった。エリーナは俺のものに手を添えて、自分の足の間にあてがう。場所を探すようにエリーナの身体が動くと、先端にぬるついたものが触れた。

「っ……!」

全く触ってもいないのにエリーナの秘部は濡れていて、先走りと混じって水音がする。触れるか触れないかぐらい、優しく擦れる刺激がもどかしくて、早く早くと先を急かす気持ちが湧き上がる。だめだ、もう。早く挿れたい。興奮して痛いくらいに勃起している。

「エリーナ、待てない」
「え?」

大人しくするのはここまでと決めて、エリーナの腰を抑えて、一気に奥まで挿入した。

「~~~っ!」

エリーナは声をあげずに大きく背中をしならせた。いつも挿入するだけで達してしまうから今日もそうだろう。動かなくてもただ挿れるだけで、身体を震わして感じる身体だ。

(熱い)
エリーナの中は、指で慣らさなくても奥まで簡単に俺を受け入れて、粘膜がぴたりと絡み付いてくるのが分かる。言葉や態度の反応は初心でも身体は違う。
腰を動かして下から突き上げると、エリーナが逃げようとするから、腰から臀部にかけての柔らかい肉を強く鷲掴んで押さえた。

「あっ、あんっ、あ、テオ……やっ、きょ、今日は、大人しくしてるって、言った、のに……!」
「言ってないよ。あんたが勝手に自分でするって宣言しただけで、俺は何も言ってない」
「や、そんな……あああっ!」

エリーナの自重で身体が沈み、ずんと奥まで入る。下から突き上げるたびに胸が大きく揺れて、服の下で窮屈そうにしている。

「エリーナ、腕あげろ。脱いで」
「へっ……」

鈍いエリーナの反応を待ってやる余裕がない。乱暴にエリーナの服を捲し上げ、少し上半身を起こして服を引き抜いた。たゆんと胸が揺れて、ちょうど目の前に来たから先端を口に含むとエリーナが甘い声を漏らした。

「やぁ……っ!あ、ておっ……や、…」

体勢がきついので、エリーナの頭を手で抑え、転がるように上下を逆転させてもらった。俺の下で呆然としているエリーナと目があった。

「その気になったよ。流石だな」
「……んァっ!」

奥を抉るように擦ると、エリーナは喉を逸らせて反応した。

「あ、あ……」
「ここ好きだよな。気持ち良い?」

エリーナは泣きそうな顔をして、顔を横に向けた。さっきまで積極的だったくせに、急にまた耐えるような表情をしている。

(は?なんだその顔)

イライラして、押し付けるように腰を動かしながら、胸の固くなった中心部を両方一度に指でつまむ。

「ああんっ!」
「気持ち良いか、エリーナ?人の質問にはちゃんと答えろよ」

また同じことを聞くと、ようやく首をこくこくと動かした。ギリギリまで引き抜いで、奥まで強く穿つ。それを繰り返すとエリーナは痙攣しっぱなしになって、短く声をあげるばかりになった。

「ひっ、…や、あんっ、あっ、あ……テオぉ…」

本当に何をしても反応が良い。そしてそれは俺の影響じゃない。

(エリーナの身体を知ってるやつ全員殺してやりたいな……)

物騒な考えが頭に浮かんで、首を振った。そんなことしたらエリーナが責任を感じてしまうし、自分の知り合いまで手にかけることになる。

1番奥まで挿れて、そのままぐりぐりと押し付けるように腰を動かす。

「ぅ…あ……っ、はぁっ、や…そこ、苦しっ……」
「エリーナ、今、誰と何してるか分かるか?」
「……?」
「俺のことちゃんと見て」

エリーナは目に涙をためた状態で、じっと俺を見た。素直に言うことを聞いてくれるところと、そうじゃないところと、エリーナがどう反応するのかいつも読めない。

エリーナと両手の指を絡ませてシーツに押し付け、もう一度引き抜いて、奥まで挿入する。動きを速めるとうるさいくらい水音がする。腰が止まらなくて、その揺れに合わせてエリーナの身体がびくびく反応している。

「ひっ、あ……あんっ、あ、テオ……ッ!」
「すごいな、……ぐちゃぐちゃになってんの分かるか?あんた、ほんと、何しても反応するよな……っ」

俺が何をしようが、俺を好きじゃなかろうが、エリーナにはどうでもいい。国王の意向に沿う条件を満たせていれば、多分相手が俺じゃなくてもいい。

(ほんと、最悪だよ)

今のエリーナは自分の寝室に夜な夜な違う男を連れ込むこともないし、その気がありそうな素振りさえ見せない。でもそれは、エリーナにとって俺が特別な人間になったことを示すわけじゃない。その事実がきつい。

手に力をこめると、エリーナは握り返してきた。離れ難いと思っている俺の気持ちに気づいてないだろうし、エリーナは同じ気持ちを返してくれたわけじゃないのに、じんわり胸に幸福感が満ちる。こんなことで嬉しくなるのだから、何もかも手遅れだ。

「エリーナ……っは……」
「あっ、あ、……や、っぁ……!」

エリーナはずっと達しぱなしで、身体の震えに合わせて膣が俺のものを締め付ける。射精を促すような甘い刺激に逆らう気はなくて、激しくエリーナの身体を揺さぶった。

「あ、あぁ……ッテオ…待っ、て…激しっ……あああっ!」

エリーナの身体が大きくのけぞるのと同時に、俺もエリーナの中で果てた。どくんと脈打ち体液が外に放たれて、やっと待ち望んだ開放感を得て腰が震える。全て出し終えたのを感じて引き抜くと、その刺激でさえエリーナはびくっと震えて反応した。

エリーナは胸を大きく上下させて、整いきらない荒い呼吸を繰り返していた。両手を寝台に押し付けるように握ったままだったことに気付いた。

「ごめん、重かったな」

エリーナは首を横に振った。額に軽く汗が滲んでいる。エリーナは首を横に向けると、俺の手に額を擦り付けるような仕草をした。それが自分の手で汗を拭おうとしただけなのか、甘えたのか、どちらか分からない。ただどうしようもなく切ない気持ちになった。

エリーナの肩口に顔を埋めて、首筋に甘えるように擦り寄る。

「……きだ。俺を遠ざけようとしないでくれ」
「……?」

声が掠れて、肝心なところがちゃんと音にならなかった。今日はもうこれ以上傷つく勇気がなく、もう一度伝える気にはなれない。顔をあげてエリーナと目を合わせると、エリーナはよく分かっていないという顔をしていた。まだ瞳の色は綺麗な菫色だ。

「あんたが俺を遠ざけようとすると苦しくなる。すごく傷つくんだ。……さっきの、本音を言うと、頼りたいと思ってくれないとやだ」
「……」
「大事な時に一人になりたいって言われるのも嫌だし、他のやつになら頼るのも嫌だ。あんたのやることは何もかも気に入らない。俺はあんたの意思で結婚させられたんだから、最後まで責任取れよ。あんたの方から距離を取るのはルール違反だろ」

小さい子どもみたいに嫌だを繰り返して、理屈も通ってないことを言っている。一度情けないところを見せると、洪水みたいに止まらなくなるみたいだ。でも口から出た言葉は本音だ。

「ご、ごめんなさい」

エリーナは謝罪を口にしたが、反射的なものに思えた。

「何に対してだよ。機嫌取るために口先だけ謝ってたら許さない」
「……!」

思ったより低い声が出て、エリーナは一瞬怯えた顔をした。勝手に怖がってろと言う気持ちが半分と、怖がらせるようなことを言ったことへの後悔が半分。エリーナは恐る恐るといった様子で続きを答えた。

「わ、私がすぐ、一人にしてって言って、テオに頼らなくて、他の人に助けを求めるところ」
「おうむ返しにしてるだけに聞こえる。自分の言葉にしてくれ。俺が何に怒ってるのか分かるか」

エリーナに問いかけたことで、自分が怒っていたと言うことに気付いた。エリーナは戸惑った顔をして、俺の顔色を見ている。そこには正解なんて書いてない。

「さっき、俺はなんて言った?考えてみろ」

エリーナは不安そうに俺の顔を見つめていた。瞳の色がじわじわ緑色に染まっていく傍で、そこに涙も滲んでいく。エリーナの唇は震えている。

「わ、私が……私がテオと、一緒にいたら、テオに迷惑だと思ってた、こと」

エリーナの瞳から涙が溢れて、耳の横を伝ってシーツに落ちた。

「一緒にいるのが申し訳なくて、私……私なんか、早く消えなきゃって、思って……」

俺はエリーナのことを抱きしめて、頭に手を添えた。

「馬鹿だな。迷惑とか消えろとか、一度でも俺が言ったことあるか。最初のあの日だって言ってないだろ」
「……」
「言ってないよ。思ったこともない」
「……ごめんなさい」
「いいよ、許す」

エリーナがぐすん、と泣くのが聞こえる。落ち着かせるために、頭をゆっくり撫でた。

「なんで泣いてるんだよ。怖かったか?ごめん。もう怒ってない」

エリーナが腕の中で首を左右に振るのが分かった。

「違うの。怖くない。テオのことは怖くないよ」

肘を支えにして顔を上げる。エリーナはまだ涙で潤んだままの瞳で俺を見上げた。

目の際の涙の跡が残っているところに口付けすると、唇が涙で濡れ、塩っぽい味がした。

どこまで受け入れてくれるのか確かめるように、額同士をくっつけてみる。エリーナはゆっくり目を瞑った。

(無防備だな。極端な性格だよ、ほんと)

今日の"役目を果たし終わっている"エリーナにキスするつもりはない。今は、俺にとってエリーナが迷惑な存在などではない、と本人の口から引き出せたことで十分だ。

(好きだよ)

先程ちゃんと音にできなかった言葉を心の中で呟き、身体を起こした。エリーナは目を開けた。肩透かしを食らったような顔をしている。
そのぽかんとした顔の幼さに、思わず頬が緩んだ。
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