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番外編
◆番外編:ノアとイリスがとあるご夫人を訪問する話 - ②
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ノアとイリスは、グリーン夫人との話を終えて、彼女の庭のベンチに座っていた。温かいストール、膝掛け、温めた石で暖をとり、熱いお茶がたっぷり入ったカップを手にしていた。全てサンドラが用意したものである。
息を吐くと、白い吐息と、湯気が混ざった。
ノアがふぅ、と息を吐いた。
「サンドラの手紙のことまでバレるんだから、参るよね。降星祭のリース作りと展示に協力するって言ってくれたのはよかったけど」
「そうね」
イリスの今日の役割は、刺繍好きの夫人としてグリーン夫人との会話を盛り上げること。そして、義母のヴァンデンブルク夫人とイリスが計画している降星祭のリースの作品展示会のために、彼女の図案のコレクションを借りることだった。
冬の大きな祭である降星祭にて、王都やウィントロープでは、花の咲かない冬の時期を彩るための刺繍のリースを飾る。ヴェルディアではあまりその文化は根付いていないようだったが、イリスはそれをこの地域でも流行らせたいと思った。
単純にリースを作るだけでは暇つぶしにしかならないので、ヴェルディアと縁の深い隣国のススリクや、近隣の領地の産業も盛り上げることを考え案を出していた。そこでノアが、グリーン夫人が世界各国から図案を集めていたことを思い出した。
刺繍糸の染色はヴェルディアの得意分野で、グリーン侯爵領は絹の輸入とその加工が盛んである。イリスはちょうどマロナの職人の知り合いが増えてきたところなので、関係者をたくさん巻き込んで、祭を華やかに彩ろうという話になった。
本格的に開催できるのは来年になるが、今年もできるだけ縁を結んでおくつもりである。
グリーン夫人は、展示の特別審査員として、エメリアに招待をする予定だった。彼女の知り合いにも刺繍好きのご夫人が多いので、またこの屋敷に人を招いて、それについて話題にして、サンドラと二人きりで過ごすこの屋敷が、賑やかなものになればいい。
それがノアがやりたいことだった。
ノアがはぁ、とため息をついた。
「リジーが本当は人を呼ぶのが好きじゃないって、知らなかった。いつも楽しそうに見えたんだよ。一人で静かにしているのが好きなのに、私がやったことってただの迷惑じゃないか」
屋敷に滞在していたときは、ノアは夫人をリジーと愛称で呼んでいたらしい。昔の呼び方に戻って、ノアは過去を思い出すように、遠くのほうを見つめている。
展示の企画や役割についてノアが説明したあと、グリーン夫人はいくつか質問をしたあとにそれを了承した。「それでわたしに人を呼べと言うわけね。これは貴女の計画でしょう、サンドラ」と自分の侍女に呆れた視線を向けたのだ。
グリーン夫人は、自分は一人でいるのが好きで、夫が亡くなってお客様を屋敷に呼んで招待する必要もなくなったので、自由な時間を楽しんでいるのだ、と言った。そして家が大好き。だから人と話したほうがいいとか、外に出なきゃだなんて、心配する必要もない。ホームパーティーで料理やお菓子を準備して、ゲストをお迎えするのはくたびれる。
そう言っていた。
今年は全力で協力するけれど、来年からはグリーン侯爵領を巻き込むべきかどうか、よく検討したほうがいい、と冷静なアドバイスをもらってしまった。よく検討した結果必要ならば、来年以降も協力する、と。
イリスは、気まずそうな顔をしたサンドラとノア、そしてその二人を見つめるグリーン夫人の穏やかな顔を思い出していた。
夫人は、「なぜみんなわたしが人といるのが好きだと思うのかしら。あの人もいつも、わたしが寂しくないように、人を呼べとうるさかったわ。寂しい思いなんて少しもしていないのに」と笑っていた。
ノアがベンチで、「あー……」と言いながら俯いた。また自己嫌悪に陥っているらしい。
「なんでいつもこういうことに気づかないんだろう。本当に馬鹿なんだけど……笑っている人が、心では笑ってないってことに気づけないんだ。……リジーは、私がいる間、ずっと気が休まらないって思ってたのかな。いつも優しかったから分からなかった。侯爵は思ってることをなんでもはっきり言ってくれる人だって思ってたけど、もしかしたら侯爵も違ったのかもしれない。父上の頼みだから断れなかっただけで」
「でも一度断られたんでしょう?」
「うん。そのあとまた手紙がきて、やっぱり受け入れるって言ってくれたらしい」
「貴方が色々と……ミスもしたあとだったんでしょう?」
「うん」
「じゃあ、侯爵は、断りたかったら断ることができたけれど、受け入れたのよ。亡くなってしまったから、もうお話は聞けないけれど」
ノアは暗い顔をして頷いた。
「あの部屋にあった、大きなタペストリーは、グリーン夫人が作ったものなのよね?」
「そうだよ」
イリスは、部屋にあった一番大きな作品を頭に思い描いた。四季折々の花と野鳥を描いた作品で、さまざまな場所の刺繍の技法が混ざった不思議な作品だった。
夫のもとを訪れたさまざまな国や地域の人々が、夫人が刺繍が好きだと知って、よく書籍を贈ってくれる。その一つ一つを参考に作り上げたものらしい。
素晴らしい作品だが、右下は未完成だった。夫人の手が思うように動かなくなって作品を完成させられなくなり、ツバメの身体は白いまま残っている。その周りにある桃色のモチーフは何を刺したか分からないくらいに下手で、一つはノア、もう一つはサンドラが刺したらしい。桃色の花なのだと言っていた。
それから、イリスは、あの部屋に飾ってあった数少ない絵画のことも頭に思い描いた。おそらく夫の肖像画と、家族の肖像画。それからスケッチではあったが、ここにいたときのノアだと思われる青年の横顔。それに彼は気づいているだろうか。
「あの部屋に貴方の絵があったことには気づいた?」
「え? 私?」
ノアは首を横に振った。
「暖炉の上にあったスケッチの横顔は、多分貴方よ。面影があったわ」
「スケッチ……? 侯爵様が描いたものかな。昔画家を目指していたらしいんだよね」
「そうなのね」
イリスは落ち込んでいる様子のノアの顔のことをじっと見つめて、彼の手を取った。
「その絵がまだこの家に飾ってあるのは、侯爵様の作品だからという理由だけではないと思うわ。それに、夫との思い出がある大作なんて、私だったら絶対に誰にも触らせない。しかも信じられないほど下手くそな人に」
「頑張ったのにひどいよ。あれでも練習してマシになったんだよ」
「何を刺したか分かったものじゃなかったわ。それでもそこに残してあるのよ。その意味を、考えてみたら?」
ノアはイリスの青紫の瞳をじっと見つめて、頷いた。
「みんな本音しか言えなくなればいいのに。やりたくないことをやりたいとか、楽しくないときに楽しいって言わないでほしい」
「貴方だって本音と建前があるじゃない」
「そうだけど、私は『やだなぁ』って思ったことは、『やだなぁ』ってそのまま顔に出てるよ。そんなに複雑じゃない」
「貴方は自分で思っているよりも分かりにくいわよ。貴方が自分で分かってる気持ちは外に出るけど、自分で気づいてないことは顔に出ないもの」
「そう?」
「ええ。自分のことは自分では分からないものよ。鏡みたいに、他人に映るものじゃない? 私は貴方がグリーン夫人のことを気にかけて、会えて嬉しいと心から言ったのと同じように、彼女も貴方を気にかけて、今日ここに来たことを喜んでくれていたと思う」
イリスはノアを励ますように微笑んだ。
「聞いてみたらいいじゃないの。素直でなんでも口に出てしまうところが、貴方のいいところでしょう」
「いいところなんだか、悪いところなんだか……それでよく呆れられるし」
ノアは長く息を吐いて、カップのお茶を飲み干した。イリスに微笑む。
「ありがとう。そうだね、聞いてみないと。来年もまた誕生日プレゼントを贈ってもいいか聞きたい」
扉の開く音が聞こえて、イリスは顔を上げた。グリーン夫人と、サンドラが、ストールをかけて屋敷から出てくるところだった。サンドラの腕には一枚ブランケットがかかっている。
グリーン夫人が杖をついて、ゆっくり歩を進める。
「手助けしてくる」
「ええ」
ノアが手にしていたカップをベンチに置いて立ち上がった。
「ねぇ、大丈夫? 私が持つよ!」
ノアの呼びかけに対してサンドラが眉を顰めた。ブランケットを渡さないように抱え込む。グリーン夫人が笑って、駆け寄ってきたノアの方を見上げて口を開いた。彼ははっとした様子で手を差し出していた。
息を吐くと、白い吐息と、湯気が混ざった。
ノアがふぅ、と息を吐いた。
「サンドラの手紙のことまでバレるんだから、参るよね。降星祭のリース作りと展示に協力するって言ってくれたのはよかったけど」
「そうね」
イリスの今日の役割は、刺繍好きの夫人としてグリーン夫人との会話を盛り上げること。そして、義母のヴァンデンブルク夫人とイリスが計画している降星祭のリースの作品展示会のために、彼女の図案のコレクションを借りることだった。
冬の大きな祭である降星祭にて、王都やウィントロープでは、花の咲かない冬の時期を彩るための刺繍のリースを飾る。ヴェルディアではあまりその文化は根付いていないようだったが、イリスはそれをこの地域でも流行らせたいと思った。
単純にリースを作るだけでは暇つぶしにしかならないので、ヴェルディアと縁の深い隣国のススリクや、近隣の領地の産業も盛り上げることを考え案を出していた。そこでノアが、グリーン夫人が世界各国から図案を集めていたことを思い出した。
刺繍糸の染色はヴェルディアの得意分野で、グリーン侯爵領は絹の輸入とその加工が盛んである。イリスはちょうどマロナの職人の知り合いが増えてきたところなので、関係者をたくさん巻き込んで、祭を華やかに彩ろうという話になった。
本格的に開催できるのは来年になるが、今年もできるだけ縁を結んでおくつもりである。
グリーン夫人は、展示の特別審査員として、エメリアに招待をする予定だった。彼女の知り合いにも刺繍好きのご夫人が多いので、またこの屋敷に人を招いて、それについて話題にして、サンドラと二人きりで過ごすこの屋敷が、賑やかなものになればいい。
それがノアがやりたいことだった。
ノアがはぁ、とため息をついた。
「リジーが本当は人を呼ぶのが好きじゃないって、知らなかった。いつも楽しそうに見えたんだよ。一人で静かにしているのが好きなのに、私がやったことってただの迷惑じゃないか」
屋敷に滞在していたときは、ノアは夫人をリジーと愛称で呼んでいたらしい。昔の呼び方に戻って、ノアは過去を思い出すように、遠くのほうを見つめている。
展示の企画や役割についてノアが説明したあと、グリーン夫人はいくつか質問をしたあとにそれを了承した。「それでわたしに人を呼べと言うわけね。これは貴女の計画でしょう、サンドラ」と自分の侍女に呆れた視線を向けたのだ。
グリーン夫人は、自分は一人でいるのが好きで、夫が亡くなってお客様を屋敷に呼んで招待する必要もなくなったので、自由な時間を楽しんでいるのだ、と言った。そして家が大好き。だから人と話したほうがいいとか、外に出なきゃだなんて、心配する必要もない。ホームパーティーで料理やお菓子を準備して、ゲストをお迎えするのはくたびれる。
そう言っていた。
今年は全力で協力するけれど、来年からはグリーン侯爵領を巻き込むべきかどうか、よく検討したほうがいい、と冷静なアドバイスをもらってしまった。よく検討した結果必要ならば、来年以降も協力する、と。
イリスは、気まずそうな顔をしたサンドラとノア、そしてその二人を見つめるグリーン夫人の穏やかな顔を思い出していた。
夫人は、「なぜみんなわたしが人といるのが好きだと思うのかしら。あの人もいつも、わたしが寂しくないように、人を呼べとうるさかったわ。寂しい思いなんて少しもしていないのに」と笑っていた。
ノアがベンチで、「あー……」と言いながら俯いた。また自己嫌悪に陥っているらしい。
「なんでいつもこういうことに気づかないんだろう。本当に馬鹿なんだけど……笑っている人が、心では笑ってないってことに気づけないんだ。……リジーは、私がいる間、ずっと気が休まらないって思ってたのかな。いつも優しかったから分からなかった。侯爵は思ってることをなんでもはっきり言ってくれる人だって思ってたけど、もしかしたら侯爵も違ったのかもしれない。父上の頼みだから断れなかっただけで」
「でも一度断られたんでしょう?」
「うん。そのあとまた手紙がきて、やっぱり受け入れるって言ってくれたらしい」
「貴方が色々と……ミスもしたあとだったんでしょう?」
「うん」
「じゃあ、侯爵は、断りたかったら断ることができたけれど、受け入れたのよ。亡くなってしまったから、もうお話は聞けないけれど」
ノアは暗い顔をして頷いた。
「あの部屋にあった、大きなタペストリーは、グリーン夫人が作ったものなのよね?」
「そうだよ」
イリスは、部屋にあった一番大きな作品を頭に思い描いた。四季折々の花と野鳥を描いた作品で、さまざまな場所の刺繍の技法が混ざった不思議な作品だった。
夫のもとを訪れたさまざまな国や地域の人々が、夫人が刺繍が好きだと知って、よく書籍を贈ってくれる。その一つ一つを参考に作り上げたものらしい。
素晴らしい作品だが、右下は未完成だった。夫人の手が思うように動かなくなって作品を完成させられなくなり、ツバメの身体は白いまま残っている。その周りにある桃色のモチーフは何を刺したか分からないくらいに下手で、一つはノア、もう一つはサンドラが刺したらしい。桃色の花なのだと言っていた。
それから、イリスは、あの部屋に飾ってあった数少ない絵画のことも頭に思い描いた。おそらく夫の肖像画と、家族の肖像画。それからスケッチではあったが、ここにいたときのノアだと思われる青年の横顔。それに彼は気づいているだろうか。
「あの部屋に貴方の絵があったことには気づいた?」
「え? 私?」
ノアは首を横に振った。
「暖炉の上にあったスケッチの横顔は、多分貴方よ。面影があったわ」
「スケッチ……? 侯爵様が描いたものかな。昔画家を目指していたらしいんだよね」
「そうなのね」
イリスは落ち込んでいる様子のノアの顔のことをじっと見つめて、彼の手を取った。
「その絵がまだこの家に飾ってあるのは、侯爵様の作品だからという理由だけではないと思うわ。それに、夫との思い出がある大作なんて、私だったら絶対に誰にも触らせない。しかも信じられないほど下手くそな人に」
「頑張ったのにひどいよ。あれでも練習してマシになったんだよ」
「何を刺したか分かったものじゃなかったわ。それでもそこに残してあるのよ。その意味を、考えてみたら?」
ノアはイリスの青紫の瞳をじっと見つめて、頷いた。
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「そう?」
「ええ。自分のことは自分では分からないものよ。鏡みたいに、他人に映るものじゃない? 私は貴方がグリーン夫人のことを気にかけて、会えて嬉しいと心から言ったのと同じように、彼女も貴方を気にかけて、今日ここに来たことを喜んでくれていたと思う」
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ノアは長く息を吐いて、カップのお茶を飲み干した。イリスに微笑む。
「ありがとう。そうだね、聞いてみないと。来年もまた誕生日プレゼントを贈ってもいいか聞きたい」
扉の開く音が聞こえて、イリスは顔を上げた。グリーン夫人と、サンドラが、ストールをかけて屋敷から出てくるところだった。サンドラの腕には一枚ブランケットがかかっている。
グリーン夫人が杖をついて、ゆっくり歩を進める。
「手助けしてくる」
「ええ」
ノアが手にしていたカップをベンチに置いて立ち上がった。
「ねぇ、大丈夫? 私が持つよ!」
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青木誠二 28才
嘉島優子 33才
小田聖也 35才
2024.4.11 ―― プロット作成日
💛イラストはAI生成自作画像
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