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『強敵3』

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目が覚めると身動きが取れなかった。口も塞がれてる。
「やあ、起きたんだね」
この男だ。この男が屋敷を荒らし、私を誘拐した。
「右を見てみなよ」
「ッ!?」
ミラがいた。ミラも連れ去られたのだ。
(クソ!こいつ・・・)
「んんんっ!」
「え?解け?嫌だね」
(屋敷に隠れているヨミが、帰って来た狼竜に伝えてくれれば・・・)
「あ、そうだ。追っては来れないと思うよ?ここ、地下だし。探しようがないしね」
「・・・」
ミラはまだ起きない。
「あは、あははははっ」
この男の笑いが地下室に響いた。


            ☆


太陽が西に傾き始めた。屋敷から探し始めて、王都まで着いた。その王都は広く、端から端、隅から隅まで探しだすのは難しいだろう。川から、無くした場所すら忘れてしまって、指輪を探すぐらい難しい。
「まじでどこだよ」
狼竜の心に闇が潜み始めた。
『そう焦るな。落ち着け』
王牙がそう言ってくる。
「しかしなぁ、いないんだよ。これだけ探してもな」
『そうかもな。でも、少し休憩はしろよ』
「何言ってんだ。サクラは今でも必死に抵抗してんだよ!休憩なんかするか」
『でも、おまえ、一瞬だけ諦めただろ』
「・・・」
狼竜だって、諦めたりはする。躊躇だってするし、戸惑う。でも、確かに今のは八つ当たりに近かった。
「すまない。そうだな、じゃあ少しだけ、お茶でもするよ」
『あぁ、そうしてくれ』


            ☆


暗い闇に1人。ミラは閉じ込められていた。牢獄に似た、地下。
「どうだい?その麻薬は結構強い麻薬だよ」
麻薬。簡単に言えば、脳がおかしくなってしまう激薬。それを大量摂取させられた。
「あ、あがっ。んっがぁああ!」
「もう気がおかしくなったか。姫様にも打とうかなぁ~?」
「ッ!や、があっ。・・・めろっ!」
麻薬により、まともに話せない。
「じゃあ、また1時間後ぐらいにね」
男は部屋を出ていく。
いくら地下路といえど、真っ暗で周りは見えない。それに、この地下は道が様々に枝分かれをしており、特定の場所に行きづらい。故に、『魔窟の低層』と呼ばれていた。周りからも、何故か知らないが、魔法的感知が効かず、人目にもつかない。それに、たまに自然に『魔窟の低層』は扉を開ける程度。だが、この男は自由に開けれた。
「あは。早くこいよぉ。綾辻狼竜君・・・」
一方サクラは、裸にされ、目隠しに、口も塞がれたままだ。
「・・・」
もはや、抵抗が出来ない。秘部を弄られ、もう落ちかけてる。
(狼竜・・・。早く・・・助けてよ・・・)
「君はもう、助からない」
(助から・・・ない?)
「そうだ。君は、誰から見ても、助けようがないんだ」
(そっか・・・)
サクラは落ちてしまった。
「あは、あはははは!どうだい狼竜君!君の姫君は、僕の物だ!あはははは!」
またしても、男の高笑いが鳴り響く。


           ☆


「アイスレモンティーを、1つください」
「かしこまりました」
狼竜は、カフェにいた。王都でも有名な『竜の尻尾』[ドラゴンテール]というカフェにいた。このカフェの向こう手には、『猫の尻尾』という、猫カフェが最近出来た。この『竜の尻尾』は『猫の尻尾』により、少しだけ、客足を奪われたらしい。
(王都の半分までは探し出した。しかし、見つからない。他国か?いや、そんな簡単には行けないはずだ)
「お待たせいたしました。アイスレモンティーです」
「ありがとう」
アイスレモンティーを1口飲んだ。レモンの香りが口に広がり、甘くて美味しい。
「どうしたものかなぁ~」
(そう簡単には見つからないだろう。ここまで探しても見つからなかったからな・・・)
もう1度、アイスレモンティーを飲んだ。
『狼竜、狼竜』
「何?」
シオンが呼んできた。
『悩んでる狼竜に、いいこと教える』
「なんだ?分かったのか?」
『犯罪の世界では、よく言う言葉。犯人は現場に戻る』
「ッ!?」
今の今まで見つからないわけだ。
(屋敷・・・。それも相当近い。いや、真下か)
「でかしたシオン。今から屋敷に行くぞ、何かを感知したらすぐ知らせて」
アイスレモンティーを一気に煽り、コップを置く。
「良し!行くか!」
狼竜は走り出した。微かな希望を込めて。
「あっ、お客様!お会計!」
「えっ。す、すいません・・・」
『折角の場面が台無し」
「す、すいません・・・」
今度こそ、狼竜は屋敷に向かった。
(いや、待てよ?地下室は屋敷に一応あった。そこも確かに見たはずだ。何故見えなかった?同じところにいて、なおかつ感知されない奴の魔法!)
「そういうの、得意分野だわ」

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