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『とある乙女のお話2』
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どのぐらいの時間が過ぎただろう。
奴隷の・・・ヨミは薄汚い牢獄に座っていた。
(サクラは何してるんだろうな・・・)
唯一の友人を思い出す。
強く、たくましいサクラを思い出す。
(私は助からない・・・)
買ってくれる人もいない。やっぱり私は、必要じゃない。
世界からも、見捨てられた私は何ができるのだろうと。
ただただ助けを待っていた。
☆
狼竜は走っていた。ヨミを探すために。
「つっても情報が少なすぎる」
『別に探さなくてもいいんじゃあないか?』
『同意』
2つの剣。王子とシオンが意識に話しかけてくる。
「馬鹿か。サクラに頼まれたんだ、探さないと」
『ふーん』
王牙はつまんなそうに返事を返した。
人探しは得意だが、声を聞いたことないから聴覚を鋭くしても、無駄。
(でも、何しよう)
『奴隷の、販売、してるとこ、行く』
「それだ」
シオンの提案に当たってみる。
奴隷を売っている所となると、人目のつかないところだろう。
(裏路地の店か?)
手当り次第に裏路地を当たる。
かれこれ探すこと、2時間が経とうとしていた。
「奴隷販売店がなさ過ぎる・・・」
『そりゃな・・・』
王牙が何かを言った。聞きそびれた狼竜は再度聞いた。
「え?なんて?」
『だから、奴隷なんて、基本販売してないだろ?』
「じゃあどこにいるんだ?」
『多分・・・景品じゃない?』
「ッ!そうか、景品か・・・」
『さっき、大会?申し込み、あったよ』
「それか!あった場所覚えてる?」
『う、ん。場所は、教える』
「了解!」
とりあえずと思い走り込んだ。
『狼竜、反対』
「えっと、すいません・・・」
反対方向に走り出した狼竜はシオンに言われた通り走る。
『そこ、右』
右に曲がるとフェンスがあった。
「あの、シオン?」
『近道』
「う、うっす」
壁を蹴り、高く飛翔する。フェンスを軽々と飛びのけ、走る。
『そろそろつくよ』
「おーけー」
走っていると、果物を落としたおばあさんがいた。
(うっわまじか・・・。よくラノベで見るヤツじゃん)
ただ、助けないのも狼竜が嫌なので拾ってあげる。
「大丈夫ですか?」
「え、ええ。ありがとうねぇ」
すべてを拾い、渡した。
「それじゃ!」
用も済んだので立ち去る。しかし、おばあさんは呼び止める。
「ついでに運んでってはくれないかい?」
「えーと、わかりました」
『いい、の?間に合わない、かもよ?』
『本気で走れば間に合うさ』
おばあさんをおんぶし、荷物も抱え、歩く。
「おばあさん家どこ?」
「まーすぐ、だよ」
「おっけー」
スタスタと歩いていき、目的地辿りついた。
「ここでいい?」
「ありがとうねぇ。お礼にお茶でも飲んでいきなよ」
「すいません。用があるので、お茶は今度で」
「そうなのかい?分かった、気をつけてね」
「はい!じゃあ、さよなら」
おばあさんを無事、家に返して、さっきの道に戻る。
『さっきの道を、左』
「分かった」
さっきの道に出てきたので左にいく。
すると、行き止まりだった。
「シオン。ここ?」
『うん。地下室の、反応が、あるよ』
「分かった」
とはいいつつも、行き方がわからないので行けない。
(ぶっ壊してもな・・・)
壁に手を置くと偶然にカチッと音を鳴らし、地面が横にずれた。
「ここか」
中に入ると巨大なバトルフィールドと、客がたくさんいた。
「あら?お客様ですか?それとも、バトルが希望で?」
店員らしき女性が話をかけてくる。
「えっと、バトルで」
「はい。飛び入り参加で?」
「そうですね」
「では、名前は?」
「綾辻狼竜です」
「狼竜っと。はいどうぞ、名前カードです。リングに向かう時に、女の人がいるので渡してくださいね」
「あ、はい」
それを受け取り、選手控え室のような部屋に案内された。
中に入ると、強そうな人達がたくさんいた。
すると、放送が流れた。
「大変ながらくお待たせいたしましたー!ただ今から、地獄のデスゲームマッチを始めたいと思いマース!」
「おおおおおっ!」
どうやら、ギリギリだったらしい。
「今回司会を務めさせていただく、アルダとーっ。デルダでーす」
「では、選手の方々はカードの裏を見てください。番号がありますね?その番号の人と戦ってください!」
番号を見た。
(16番か・・・。ギリギリだし、最後か)
「まず最初はーっ。4番対10番ー!」
呼ばれた番号の選手が立ち上がり、リングへ向った。
選手控え室からは、モニターで確認ができた。
「では、両者構えてー、試合ーっ、開始ー!」
4番は剣、10番は槍だった。
(殺し合い、か)
「なお、今回勝ち残った選手には地下牢から奴隷を1人選べマース」
(奴隷・・・)
2人が戦っているのを見ないで、王牙とシオンに話しかける。
『なぁ、お前ら。戦うけど、いいか?』
『全然大丈夫だぜ!』
『私、も』
『そっか』
2人とも戦う気があって、よかった。
「おおっ!?」
選手達が声を上げたのでモニターを見上げた。
槍を使う選手が、剣を使う選手の心臓に槍を突き刺していた。
「決まったー!10番の槍が4番の心臓を突き刺して終わったー!」
試合会場はおおいに盛り上がっていた。
(人の死がそんなに楽しいか・・・)
狼竜は奥歯を噛み締めた。
今から自分もその殺し合いに参加するのだが、戦わず、見ているやつの笑顔が一番むかつくと狼竜は思っている。
「続いては、2番対16番ー!」
狼竜の番だった。
「行くか」
立ち上がり、リングに向かう。
「おい、2番ってあの、デイバーじゃね?」
「そうだよな!そう思ってたんだよ」
(デイバー?)
観客たちがそう話す相手だった。
司会者達も話をし始めた。
「そう!2番の選手は地下世界No.1の剣士。デイバー・グリズリーです!」
「おおおおおおおおおおお!」
観客達が声を上げた。
「あの、戦慄の血熊[ブラクティス・ブラッドベアー]かよ!」
戦慄の血熊は、数々の地下大会の優勝経験者だった。
「なんでも、剣を使ったり、あのグローブから爪が生えて、切り裂くんだとよ」
「ありゃあ16番、死んだな」
そう観客から聞こえるが、狼竜は冷静だった。
(戦慄の血熊?笑わせんなよ)
「それでは、試合ーっ、開始ー!」
戦慄の血熊は駆け出してくる。剣をぬきさり、ジャンプして、斬りかかってきた。
(やはり、な)
狼竜は2本の剣の内、王牙に手をかけ、抜刀した。
その素早い一撃は、会場の誰にも見えなかった。
カチンッと、抜刀した刀をしまう。
着地した、戦慄の血熊の首は、飛んでいた。
開始から経ったの10秒しかたっていない。
しかし、この試合は決着がついた。
「え、えーと。勝者はーっ、16番ー!」
司会がそういうが、観客達は声をあげない。
「な、何をしたんだ?」
「攻撃したのか?」
「見えなかったぞ?」
数々の観客達には何が起こったかさっぱりわからないだろうが、狼竜の斬撃がヤツの首を切り落としたのだ。
選手控え室にいっても、驚きの顔がいくつもあった。
(今まで、見たことないのかな?)
狼竜は人を殺したことがあった。
だから、こんなにも、冷静でいられた。
そして、1番、3番、5番、6番、8番、10番、16番が生き残った。
残りの1名は、11番と12番の戦いで、どちらも致命傷をおい、息絶えてしまった。
「では、1人だけ、シードとさせていただきましょう。くじ引きなので、仕組みはないですよ?」
箱に手を入れて紙を出した。
「おっ、16番の方がシードですね」
「えっ、俺?」
ついつい、声が漏れてしまう。
「おお、即撃の斬刀者[クラブ・クラッチ]がシードか」
「えー、戦いが見たかったのにー」
観客たちからの声が上がった。
「なお、即撃の斬刀者とは今さっき決めた16番の二つ名です」
(即撃の斬刀者って・・・)
「ではまずはー、1番対5番です!」
司会者が選手の番号をいった。
興奮か、緊張か、はたまた恐怖か。
この2人には、そんな感情が見えた。
「試合、開始です!」
「おらあ!」
ハンマーを持った5番は1番に走り込む。
ただ、1番は武器を持たなかった。いや、持ち込んでいなかった。
(素手?)
5番のハンマーは地面に放たれた。
「くそっ」
5番はあたりを見回すが、1番の姿がない。
「ッ!?」
ハンマーを抱えあげ、1番の蹴りを受け止めた。
(靴か・・・)
1番の靴には刃物が付いていた。
その、足技で見事、1番が勝ち上がってきた。
「試合ーっ、開始!」
今度は3番と10番。
「しっ!」
3番は女で、鞭を使っていた。
ただ、その鞭さばきは見事で、敵をあざ笑うように攻撃をしていた。
(小さな刃が付いているのか)
10番の身体には、ところどころに切り傷があった。
最後は、鞭で首を捕まれ、引っ張り、隠していたナイフで、刺されて終わった。
そして、1番、3番、6番、16番と勝ち上がってきた。
「今度は、3番と16番ー!」
(鞭かー)
「では、試合ーっ、開始!」
「いけ!即撃の斬刀者!」
観客が叫ぶ。
しかし、相手もさっきの試合を見ていたのか、なかなかせめて来ない。
もう1度、王牙を手に取り、抜刀する。
そして、加速した。
瞬時に、3番の背後に回った狼竜は彼女の首をはね飛ばそうとした。
しかし、そこに女性はいなかった。
着地し、バク転で、体勢を立て直した。
「スキルって、やつか?」
「ええ、そうね」
狼竜はその声で居場所を特定する。
「くっ」
なんとか防いだ女性だが、鞭が斬られた。
「ちょっ」
少し距離を保ったが、やはり足音で見えない女性の居場所は特定される。
(武器を持たない女性を殺すのは・・・)
斬りかかる寸前で、刀を半回転し、峰打ちをする。
「うっ」
気絶したのか、女性は倒れ込んだ。
「しょ、勝者はー!16番ー!」
「おおおおお!強ええ!」
「すげー、圧勝じゃん」
16番、1番の対決となった。
「では、決勝戦です!試合ーっ、開始!!」
ヒュッと、1番が消えた。
(今度はシオンにしようかな)
そう思い、シオンを抜くと、火がリングを埋め尽くした。
「ぐおっ」
突然の出来事に驚いた1番は倒れ込んだ。しかし、一定の距離は保っていた。
「な、なんだ?」
「魔法?」
観客達もわからないが、もっとわかんないのは狼竜だった。
『シオンって、火が出せるの!?』
『・・・いや。正確には、火、氷、風、光、闇の五属性が出せる』
『分かった』
火を出したからか、1番はあまり攻めて来なかった。
「なら、こっちのからいくぜ!」
風を出すのをイメージしながら剣を振るう。インクルシオはその通りに発動した。
風の斬撃。鎌鼬が1番に牙を剥いた。
「くっ、そ!」
足の刃では、すべて止められるはずも無く、ダメージをおった。
「終わりだ」
その隙を逃さず、背後に立っていた狼竜は身体を切り刻んだ。
(インクルシオも、切れ味がいいな)
「・・・」
観客達は何も言えなかった。
観客達はその、狼竜の圧倒的な強さに見惚れていたのだ。
「勝者はーっ、16番だー!!!」
こうして、大会は狼竜の優勝だった。
☆
「こちらが地下牢で、ございます」
優勝商品にされている、奴隷がいる、地下牢に、狼竜はいた。
(奴隷は酷すぎる。全員を助ける!)
狼竜は案内していた店員の意識を奪った。
「よし、じゃあ助けるか」
鍵を奪い取り、次々と牢を開けていった。
「大丈夫か?」
と問いつつ、助け出していた。
笑って喜ぶものもいれば、泣いているものもいた。
「君が、ヨミか」
「・・・え?王子、様?」
この時、ヨミには狼竜が王子様に見えた。
「助けに来た。俺は、サクラの、騎士だ」
「ッ!??サクラ、帰ってきたの!?」
「ああ。そうみたいだぞ」
「うぅ、そっか・・・。元気そうで、よかった」
ヨミからは、大粒の涙が零れた。
「よし!みんな外に行くぞ!」
「おー!」
急いで、外に出で、奴隷達を逃がした。
「あ、おい貴様ァ!奴隷を逃がしやがって・・・」
店員達は逃げて行く奴隷達を見ていた。狼竜の近くにいるヨミを見ると、刃物を出した。
「そいつだけでも・・・返せ!」
「別に、お前達のものでもないだろう」
そう言い残し、店員達を切り刻む。
その時、ヨミは思った。
月光に照らされる狼竜を見て。
月光の騎士・・・と。
「行くぞ」
ヨミの手を取り、走り出す。向っている場所はサクラの屋敷。
1歩1歩進んで行くたびに、ヨミの鼓動は速くなる。
(サクラに・・・会えるんだ!)
そう思うと、嬉しさで心が溢れた。
屋敷着くと、玄関の前に、サクラがいた。
「ッ!!」
ヨミは、サクラを見つけると、感激でが、前に進もうと、しなかった。
「行けよ、サクラ、待ってるぞ?」
「・・・うん!」
ヨミはサクラに向かい、走り出した。
「サクラー!」
「ッ!?よ、ヨミ!?」
ヨミは飛ぶと、サクラに抱きついた。
「会いたかった!会いたかったよ!サクラ!」
「うん!私も!会いたかった!」
2人が泣いていた。
狼竜はこのとき、2人の再会を心から、嬉しく思った。
奴隷の・・・ヨミは薄汚い牢獄に座っていた。
(サクラは何してるんだろうな・・・)
唯一の友人を思い出す。
強く、たくましいサクラを思い出す。
(私は助からない・・・)
買ってくれる人もいない。やっぱり私は、必要じゃない。
世界からも、見捨てられた私は何ができるのだろうと。
ただただ助けを待っていた。
☆
狼竜は走っていた。ヨミを探すために。
「つっても情報が少なすぎる」
『別に探さなくてもいいんじゃあないか?』
『同意』
2つの剣。王子とシオンが意識に話しかけてくる。
「馬鹿か。サクラに頼まれたんだ、探さないと」
『ふーん』
王牙はつまんなそうに返事を返した。
人探しは得意だが、声を聞いたことないから聴覚を鋭くしても、無駄。
(でも、何しよう)
『奴隷の、販売、してるとこ、行く』
「それだ」
シオンの提案に当たってみる。
奴隷を売っている所となると、人目のつかないところだろう。
(裏路地の店か?)
手当り次第に裏路地を当たる。
かれこれ探すこと、2時間が経とうとしていた。
「奴隷販売店がなさ過ぎる・・・」
『そりゃな・・・』
王牙が何かを言った。聞きそびれた狼竜は再度聞いた。
「え?なんて?」
『だから、奴隷なんて、基本販売してないだろ?』
「じゃあどこにいるんだ?」
『多分・・・景品じゃない?』
「ッ!そうか、景品か・・・」
『さっき、大会?申し込み、あったよ』
「それか!あった場所覚えてる?」
『う、ん。場所は、教える』
「了解!」
とりあえずと思い走り込んだ。
『狼竜、反対』
「えっと、すいません・・・」
反対方向に走り出した狼竜はシオンに言われた通り走る。
『そこ、右』
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「あの、シオン?」
『近道』
「う、うっす」
壁を蹴り、高く飛翔する。フェンスを軽々と飛びのけ、走る。
『そろそろつくよ』
「おーけー」
走っていると、果物を落としたおばあさんがいた。
(うっわまじか・・・。よくラノベで見るヤツじゃん)
ただ、助けないのも狼竜が嫌なので拾ってあげる。
「大丈夫ですか?」
「え、ええ。ありがとうねぇ」
すべてを拾い、渡した。
「それじゃ!」
用も済んだので立ち去る。しかし、おばあさんは呼び止める。
「ついでに運んでってはくれないかい?」
「えーと、わかりました」
『いい、の?間に合わない、かもよ?』
『本気で走れば間に合うさ』
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「おばあさん家どこ?」
「まーすぐ、だよ」
「おっけー」
スタスタと歩いていき、目的地辿りついた。
「ここでいい?」
「ありがとうねぇ。お礼にお茶でも飲んでいきなよ」
「すいません。用があるので、お茶は今度で」
「そうなのかい?分かった、気をつけてね」
「はい!じゃあ、さよなら」
おばあさんを無事、家に返して、さっきの道に戻る。
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「分かった」
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すると、行き止まりだった。
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『うん。地下室の、反応が、あるよ』
「分かった」
とはいいつつも、行き方がわからないので行けない。
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「ここか」
中に入ると巨大なバトルフィールドと、客がたくさんいた。
「あら?お客様ですか?それとも、バトルが希望で?」
店員らしき女性が話をかけてくる。
「えっと、バトルで」
「はい。飛び入り参加で?」
「そうですね」
「では、名前は?」
「綾辻狼竜です」
「狼竜っと。はいどうぞ、名前カードです。リングに向かう時に、女の人がいるので渡してくださいね」
「あ、はい」
それを受け取り、選手控え室のような部屋に案内された。
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すると、放送が流れた。
「大変ながらくお待たせいたしましたー!ただ今から、地獄のデスゲームマッチを始めたいと思いマース!」
「おおおおおっ!」
どうやら、ギリギリだったらしい。
「今回司会を務めさせていただく、アルダとーっ。デルダでーす」
「では、選手の方々はカードの裏を見てください。番号がありますね?その番号の人と戦ってください!」
番号を見た。
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呼ばれた番号の選手が立ち上がり、リングへ向った。
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「では、両者構えてー、試合ーっ、開始ー!」
4番は剣、10番は槍だった。
(殺し合い、か)
「なお、今回勝ち残った選手には地下牢から奴隷を1人選べマース」
(奴隷・・・)
2人が戦っているのを見ないで、王牙とシオンに話しかける。
『なぁ、お前ら。戦うけど、いいか?』
『全然大丈夫だぜ!』
『私、も』
『そっか』
2人とも戦う気があって、よかった。
「おおっ!?」
選手達が声を上げたのでモニターを見上げた。
槍を使う選手が、剣を使う選手の心臓に槍を突き刺していた。
「決まったー!10番の槍が4番の心臓を突き刺して終わったー!」
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(人の死がそんなに楽しいか・・・)
狼竜は奥歯を噛み締めた。
今から自分もその殺し合いに参加するのだが、戦わず、見ているやつの笑顔が一番むかつくと狼竜は思っている。
「続いては、2番対16番ー!」
狼竜の番だった。
「行くか」
立ち上がり、リングに向かう。
「おい、2番ってあの、デイバーじゃね?」
「そうだよな!そう思ってたんだよ」
(デイバー?)
観客たちがそう話す相手だった。
司会者達も話をし始めた。
「そう!2番の選手は地下世界No.1の剣士。デイバー・グリズリーです!」
「おおおおおおおおおおお!」
観客達が声を上げた。
「あの、戦慄の血熊[ブラクティス・ブラッドベアー]かよ!」
戦慄の血熊は、数々の地下大会の優勝経験者だった。
「なんでも、剣を使ったり、あのグローブから爪が生えて、切り裂くんだとよ」
「ありゃあ16番、死んだな」
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「では、1人だけ、シードとさせていただきましょう。くじ引きなので、仕組みはないですよ?」
箱に手を入れて紙を出した。
「おっ、16番の方がシードですね」
「えっ、俺?」
ついつい、声が漏れてしまう。
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観客たちからの声が上がった。
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「ではまずはー、1番対5番です!」
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「くそっ」
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「ッ!?」
ハンマーを抱えあげ、1番の蹴りを受け止めた。
(靴か・・・)
1番の靴には刃物が付いていた。
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「しっ!」
3番は女で、鞭を使っていた。
ただ、その鞭さばきは見事で、敵をあざ笑うように攻撃をしていた。
(小さな刃が付いているのか)
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最後は、鞭で首を捕まれ、引っ張り、隠していたナイフで、刺されて終わった。
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「スキルって、やつか?」
「ええ、そうね」
狼竜はその声で居場所を特定する。
「くっ」
なんとか防いだ女性だが、鞭が斬られた。
「ちょっ」
少し距離を保ったが、やはり足音で見えない女性の居場所は特定される。
(武器を持たない女性を殺すのは・・・)
斬りかかる寸前で、刀を半回転し、峰打ちをする。
「うっ」
気絶したのか、女性は倒れ込んだ。
「しょ、勝者はー!16番ー!」
「おおおおお!強ええ!」
「すげー、圧勝じゃん」
16番、1番の対決となった。
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ヒュッと、1番が消えた。
(今度はシオンにしようかな)
そう思い、シオンを抜くと、火がリングを埋め尽くした。
「ぐおっ」
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「な、なんだ?」
「魔法?」
観客達もわからないが、もっとわかんないのは狼竜だった。
『シオンって、火が出せるの!?』
『・・・いや。正確には、火、氷、風、光、闇の五属性が出せる』
『分かった』
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「なら、こっちのからいくぜ!」
風を出すのをイメージしながら剣を振るう。インクルシオはその通りに発動した。
風の斬撃。鎌鼬が1番に牙を剥いた。
「くっ、そ!」
足の刃では、すべて止められるはずも無く、ダメージをおった。
「終わりだ」
その隙を逃さず、背後に立っていた狼竜は身体を切り刻んだ。
(インクルシオも、切れ味がいいな)
「・・・」
観客達は何も言えなかった。
観客達はその、狼竜の圧倒的な強さに見惚れていたのだ。
「勝者はーっ、16番だー!!!」
こうして、大会は狼竜の優勝だった。
☆
「こちらが地下牢で、ございます」
優勝商品にされている、奴隷がいる、地下牢に、狼竜はいた。
(奴隷は酷すぎる。全員を助ける!)
狼竜は案内していた店員の意識を奪った。
「よし、じゃあ助けるか」
鍵を奪い取り、次々と牢を開けていった。
「大丈夫か?」
と問いつつ、助け出していた。
笑って喜ぶものもいれば、泣いているものもいた。
「君が、ヨミか」
「・・・え?王子、様?」
この時、ヨミには狼竜が王子様に見えた。
「助けに来た。俺は、サクラの、騎士だ」
「ッ!??サクラ、帰ってきたの!?」
「ああ。そうみたいだぞ」
「うぅ、そっか・・・。元気そうで、よかった」
ヨミからは、大粒の涙が零れた。
「よし!みんな外に行くぞ!」
「おー!」
急いで、外に出で、奴隷達を逃がした。
「あ、おい貴様ァ!奴隷を逃がしやがって・・・」
店員達は逃げて行く奴隷達を見ていた。狼竜の近くにいるヨミを見ると、刃物を出した。
「そいつだけでも・・・返せ!」
「別に、お前達のものでもないだろう」
そう言い残し、店員達を切り刻む。
その時、ヨミは思った。
月光に照らされる狼竜を見て。
月光の騎士・・・と。
「行くぞ」
ヨミの手を取り、走り出す。向っている場所はサクラの屋敷。
1歩1歩進んで行くたびに、ヨミの鼓動は速くなる。
(サクラに・・・会えるんだ!)
そう思うと、嬉しさで心が溢れた。
屋敷着くと、玄関の前に、サクラがいた。
「ッ!!」
ヨミは、サクラを見つけると、感激でが、前に進もうと、しなかった。
「行けよ、サクラ、待ってるぞ?」
「・・・うん!」
ヨミはサクラに向かい、走り出した。
「サクラー!」
「ッ!?よ、ヨミ!?」
ヨミは飛ぶと、サクラに抱きついた。
「会いたかった!会いたかったよ!サクラ!」
「うん!私も!会いたかった!」
2人が泣いていた。
狼竜はこのとき、2人の再会を心から、嬉しく思った。
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