3 / 53
第三話 変質 (改編済み)
しおりを挟む
「あそこで薬を買ったんだ。それでその薬が原因であたしと真也が生まれたんだ」
木村は少し納得しつつ言う。この言葉に川島は動きを止める。
「真也?」
彼は聞き覚えのない名前に不思議そうに聞き返した。
「あれ? 真也まだ挨拶してなかったの? ちゃんと挨拶しなきゃだめだよ」
「挨拶?」
川島はまだ状況が把握出来ずにいたが、脳裏に嫌な予感がよぎる。
「深沢 真也です。よろしく」
彼の嫌な予感はまともに的中した。自分の脳内に木村とは違う得体の知れないものがもう一人いたのだ。彼の頭はもうパンク寸前だった。
冷静になるため家にすぐ帰ることにした。その帰り道でも、木村の声は絶えず聞こえてきた。ブティックやアクセサリー店の横を通り過ぎる度に、可愛いだの欲しいだのと言っている。川島はそんな彼女の発言を聞き流しながら、ようやく家に到着した。
「へぇー、ここが健太の家なんだ」
木村が言ったこの言葉に川島は違和感を覚えた。
「健太?」
「いいじゃない。これからはこの体で一緒に過ごすんだから。ねっ! 真也」
深沢に同意を求めると、彼も「あぁ」と同調した。なんとも不思議な状態だった。一人の人間の体に三人の違った人格が存在するのだから。
川島はベッドで横になりながら、今日一日で起こった事を思い返していた。
大学の帰り道で急に現れた木村、秘妙堂に解毒剤がなかったこと、秘妙堂から家への帰り道で深沢が突然現れたこと。
「一体これから俺の体はどうなるんだ」
彼はそんなことを心配しながら、眠りについた。
翌日、この日は土曜日で大学が休みだった。目が覚めたのは昼過ぎで、顔を洗うために洗面所へと向かった。そして、鏡を見た木村は大声を上げた。
「うわ! なにこれ?」
自分の体を触る。胸がある。声も高い。顔も女性の顔。それもきれいに整った顔だち。髪の毛は肩より少し長いロング。服は川島が着ていた服だったため、少しだぼっとしていた。
「何これ? もしかしてあたしの体!?」
木村の声は喜びに満ちていた。そこに川島の声がする。
「おいおい。どうなっちまったんだよ。俺の体は」
今の川島に体はない。昨日、木村や深沢がなっていた状態になっているのだ。彼はもうわけが分からなくなっていた。
「とりあえず今日はあたしが自由にこの体使っていいってことよね?」
そう言って木村は出かけるための準備をし始める。とは言っても、川島の家に化粧品などがあるわけがなく、顔を洗って少しサイズの大きい川島の服を着てジーンズをはき、街にくり出した。昨日の帰り道で気に入っていたブティックに行き、アクセサリー店を転々として女性用の服やアクセサリーを買いあさった。その後はデパートへ行き化粧品など日常生活にかかせない物を買った。そんな彼女の行動を見ながら、川島は財布の心配をしていた。
家に帰ると、木村は試してみた化粧を落としゆっくりくつろごうとした。
その時、急に体に異変が起こる。見る見るうちに体は男性のものへと変わり、川島の体へと戻っていったのだ。一体何が起こったのか分からなかったが、川島の体へと戻ったことは事実だった。
彼は自分の体に戻るなり、財布の中を確認した。案の定、財布の中身は空っぽにちかかった。
「真衣! お前どれだけ無駄遣いするんだよ! もう金が無いじゃないか!」
彼は嘆くが、彼女は悪気なさそうに言葉を返す。
「だって女性ものは一つも無かったんだもん。仕方ないじゃん。それよりどうなってるの? いきなり戻るなんて」
「そんなこと俺に言ったってわからないさ」
そして、これからどのタイミングでこの異変が起こるのか分からないのに女性ものの品物を買い込んだ彼女に少し憤りを感じていた。
一つ分かったのは、この異変がどうやって起こるのかについて様子見の期間はまだ終わりそうにないことは確かだということだった。
そうして、ありったけの洋服やアクセサリー、化粧品を見ながら川島は服を着替えて眠りについた。
木村は少し納得しつつ言う。この言葉に川島は動きを止める。
「真也?」
彼は聞き覚えのない名前に不思議そうに聞き返した。
「あれ? 真也まだ挨拶してなかったの? ちゃんと挨拶しなきゃだめだよ」
「挨拶?」
川島はまだ状況が把握出来ずにいたが、脳裏に嫌な予感がよぎる。
「深沢 真也です。よろしく」
彼の嫌な予感はまともに的中した。自分の脳内に木村とは違う得体の知れないものがもう一人いたのだ。彼の頭はもうパンク寸前だった。
冷静になるため家にすぐ帰ることにした。その帰り道でも、木村の声は絶えず聞こえてきた。ブティックやアクセサリー店の横を通り過ぎる度に、可愛いだの欲しいだのと言っている。川島はそんな彼女の発言を聞き流しながら、ようやく家に到着した。
「へぇー、ここが健太の家なんだ」
木村が言ったこの言葉に川島は違和感を覚えた。
「健太?」
「いいじゃない。これからはこの体で一緒に過ごすんだから。ねっ! 真也」
深沢に同意を求めると、彼も「あぁ」と同調した。なんとも不思議な状態だった。一人の人間の体に三人の違った人格が存在するのだから。
川島はベッドで横になりながら、今日一日で起こった事を思い返していた。
大学の帰り道で急に現れた木村、秘妙堂に解毒剤がなかったこと、秘妙堂から家への帰り道で深沢が突然現れたこと。
「一体これから俺の体はどうなるんだ」
彼はそんなことを心配しながら、眠りについた。
翌日、この日は土曜日で大学が休みだった。目が覚めたのは昼過ぎで、顔を洗うために洗面所へと向かった。そして、鏡を見た木村は大声を上げた。
「うわ! なにこれ?」
自分の体を触る。胸がある。声も高い。顔も女性の顔。それもきれいに整った顔だち。髪の毛は肩より少し長いロング。服は川島が着ていた服だったため、少しだぼっとしていた。
「何これ? もしかしてあたしの体!?」
木村の声は喜びに満ちていた。そこに川島の声がする。
「おいおい。どうなっちまったんだよ。俺の体は」
今の川島に体はない。昨日、木村や深沢がなっていた状態になっているのだ。彼はもうわけが分からなくなっていた。
「とりあえず今日はあたしが自由にこの体使っていいってことよね?」
そう言って木村は出かけるための準備をし始める。とは言っても、川島の家に化粧品などがあるわけがなく、顔を洗って少しサイズの大きい川島の服を着てジーンズをはき、街にくり出した。昨日の帰り道で気に入っていたブティックに行き、アクセサリー店を転々として女性用の服やアクセサリーを買いあさった。その後はデパートへ行き化粧品など日常生活にかかせない物を買った。そんな彼女の行動を見ながら、川島は財布の心配をしていた。
家に帰ると、木村は試してみた化粧を落としゆっくりくつろごうとした。
その時、急に体に異変が起こる。見る見るうちに体は男性のものへと変わり、川島の体へと戻っていったのだ。一体何が起こったのか分からなかったが、川島の体へと戻ったことは事実だった。
彼は自分の体に戻るなり、財布の中を確認した。案の定、財布の中身は空っぽにちかかった。
「真衣! お前どれだけ無駄遣いするんだよ! もう金が無いじゃないか!」
彼は嘆くが、彼女は悪気なさそうに言葉を返す。
「だって女性ものは一つも無かったんだもん。仕方ないじゃん。それよりどうなってるの? いきなり戻るなんて」
「そんなこと俺に言ったってわからないさ」
そして、これからどのタイミングでこの異変が起こるのか分からないのに女性ものの品物を買い込んだ彼女に少し憤りを感じていた。
一つ分かったのは、この異変がどうやって起こるのかについて様子見の期間はまだ終わりそうにないことは確かだということだった。
そうして、ありったけの洋服やアクセサリー、化粧品を見ながら川島は服を着替えて眠りについた。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる