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第五話 言語解析エンジンっ

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 ドローンが止まって私を立たせる。どのくらい潜ってきたのかはわからないけど、とても深い場所に来たのは間違いない。もう、降りてきた穴がどこにあったのかさえわからないのだ。
  明かりがないから、いまは神気を使って周囲を常に感知している状態になっている。真っ暗闇で、視界はまったくない。光が皆無なのだろう。

 『これより、識別ナンバーを与える』

  周囲5メートルほどの位置に壁があり、正方形の形をしている場所に放り込まれた。ドローンの姿形はなく、ドアも綺麗に閉まった。
  ……識別ナンバー?
  管理外固体と言っていたことの話だろうか。私を管理するための番号を振る、と。

 「……?」

  何かが近付いて来ている。
  何か――箱のような、なんだろう……よくわからない。形はわかるけど、装飾やら何やらがまったくわからないのは少し問題かもしれない。
  そのあたりもわかるように、訓練というか、いまのうちに慣れておくべきだ。
  これから、そう、まだ始まったばかりなのだ……。最初からこの調子だと、先が思いやられる。
  頭の上に移動したそれから、小さな、本当に小さな駆動音が聞こえた。

 『スキャニング開始』

  神気によって、何かを飛ばしたことを認識する。
  お母さんの言い付けだと、確か、よくわからない放射物とかはなるべく当たらないほうがいい、だったかな。
  咄嗟にそれを思い出して、私は地面を蹴って避けた。

 『エラー。再試行開始』

  私の頭の上に、またしてもやってくる機械。駆動音がなるということは機械にほかならない。神気のみで動いたりするものは魔導具と呼ぶのだけど、それらからは神気が微弱に漏れ出しているだけで、特に音を発したりはしない。
  もう一度放射され、私は2歩ほど横にずれた。

 『エラー。再試行開始』

  三度目も同じようにして当たらないでいると、そのよくわからないスキャン機械は滞空したまま動かなくなる。
  ややあって、言葉を発した。

 『次シークエンス開始。出力上昇を確認。広範囲スキャニング開始』

  広範囲? と思っているうちに放出され、その何かがこれまでの4倍の面積に対応していることを感知する。
  その分、私は横移動を増やすだけなのだけど。

 『エラー。トラブルシューティングシークエンス、作動』

  機械がそう言った直後、縦横無尽に動き回り始める。私はその動きに合わせて当たらないように余裕を持って躱した。
  そしてその機械は、正方形の部屋の中心に滞空して留まり続ける。

 『空気の流れを感知――全方位放射開始』

  あ! 私が動かなかったら空気は動かないのか!
  無情にも、本当に全方位に向けて謎の放射が始まる。神気によって感じながらも、逃げ場がないためどうしようもなかった。

  放射が体に衝突する――直前、私が念のためにと神気を体全体に巡らせておいたことが功を奏したのか、放射された何かが消滅する。

 『エラー。問題発生。――問、あなたは何者か』

  あなた……って、私以外にいないよね。

 「私は……」

  ……ん? この場合なんと言えばいいのかな。私は人間です? それとも、名前を言えばいい?
  とりあえず、両方とも言っておこうかな。

 「私は人間。名前は坂上優花」

 『言語解析エンジン始動。解析開始』

  言語解析……?

 「……忘れてた」

  そうだった。私は神気を通して話を聞いているから翻訳されて聞こえているだけで、相手が神気を通していなければ関係なく、未知の言語となってしまう。
  地球でも、突然英語で話しかけられたりしても大丈夫なように、私はこの力だけは常に使っていた。
  とても便利で、使い勝手もいい。
  ただ一つ問題があるとすればそれは――さっき言った通り、相手には言葉が通じないという点だ。
  相手に伝わるようにするためには、相手の鼓膜を神気で覆わないといけない。
  ……って、この機械に鼓膜なんてないよね?
  言語解析エンジンとやらがどれだけ頑張ってくれるのかはわからないけど、意思疎通が出来る程度には頑張ってほしいところだ。
  というか、それだとサンプルは多いほうがいいと思う。
  私はそれから、独り言を延々と機械に言い始めた。機械のほうも、意図を察してくれたと思ったのか。

 『協力、感謝する』

  と言ってきた。
  少しずつロボットのような喋り方ではなくなってきて、人間に近くなっていっている。
  相手が私に合わせようとしているから、私の神気も気を使ってそんな風にしているのかなぁ……。
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